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Chez Michel (シェ・ミッシェル)

フランス校 食べ歩き日記

2018.04.23

今回ご紹介するのは、パリの中心地シャトレ駅からメトロ11番線で15分。
パリ10区にある北駅から歩いて10分ほど、サンヴァンサンポール教会の裏手にあるビストロ、
Chez Michel (シェ・ミッシェル)。


1939年にオープンし、80年近くの歴史がある地元に根付いたビストロです。
初代、2代目、3代目と続けてブルターニュ人が経営し、特に3代目のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏がこのお店を有名にされました。
ブルターニュ料理を少しガストロノミックに表現した料理がパリジャン達に称賛され、この通りに他にビストロ、ワインバーを各1店舗構えるまでになりました。

そして現在、4代目のオーナーは日本人の河合昌寛氏、25歳で渡欧し、イヴ・カンデボルド氏のレガラードやクリスチャン・コンスタン氏のトロケなど、ネオビストロやビストロノミーの寵児と言われるシェフの元で働き、更にスペインやポルトガルで経験を積まれ、2016年から同店のシェフに就任、翌年に自身が店を買い取りオーナーシェフに。

教会の裏という場所柄、辺りはひっそりとした様子ですが店からは賑やかな雰囲気が漂っており、
店内に入ると木を基調としたカジュアルなスタイル、様々なブルターニュグッズがアクセントとして飾られてありました。地下にも客席があり、ワインカーヴを併設しています。

コースはプリフィックスタイプで、
昼は前菜・メイン 又は、メイン・デザートで29ユーロ。前菜・メイン・デザートで35ユーロ。
夜は前菜・メイン・デザートで38ユーロという設定。黒板に書かれてあるメニューの中から選択します。

ワインはグラスで5ユーロ~、ボトルで30ユーロ~とパリでは良心的な価格設定となっています。
何といってもまず驚くべきはメニューの数。
こちらのお店は前菜だけで11皿、メインが10皿、デザートが6皿と、この規模のお店としては驚愕のメニュー数を誇り、当たり前ですがその全てを1から店で仕込んでいます。

流石に全ては食べられませんので、僕たちが食べた数品をご紹介します。
まずは前菜から

Emiette de tourteau des côtes Bretonnes,avocet
ほぐしたブルターニュ産のカニ、アボカド

蟹の身とアボカドのサラダ仕立て。
定番の組み合わせですが、だからこそ手の抜けない料理。
青リンゴとルッコラのサラダで爽やかさをプラスしています。

Asperges verte, mœlle au vin rouge,sauce romesco
アスパラガス、牛骨髄の赤ワイン風味、ソースロメスコ

ソテーしたアスパラに骨髄を入れた赤ワインソースがかけてあり、
アクセントにスペイン、カタルーニャ地方で作られるアーモンドやパプリカを効かせた「ソースロメスコ」が添えてあります。
春のほろ苦いアスパラに濃厚なソースが絡み、赤ワインに合う一品。

Terinne de lapin au lard fume,salade de lentilles
うさぎのテリーヌ、レンズ豆のサラダ

淡白なウサギのテリーヌに、ハーブマスタードを効かせ、ベーコンで包み火を通してある。
伝統的なウサギとマスタードの組み合わせに、同じくマスタードのドレッシングで和えたレンズ豆のサラダと共に頂きます。

メイン
Ris de veau(200g),asperges verte,morilles
リ・ド・ヴォ(子牛の胸腺肉)、アスパラガスとモリーユ茸

バターで表面を香ばしくポワレしたリ・ド・ヴォ、中はむっちりとミルキーな味。
ソースはマディラ酒と仔牛の出し汁。春の定番、アスパラとモリーユ茸が添えてある。

Curry d'agneau,riz pilaf
子羊のカレー風味、バターライス添え

カレーは日本のルーを使ったものではなく、トマトと香辛料を効かせたカレー風味の煮込みに
すこしココナッツを効かせたエスニックな仕上がり。
フランス料理のイメージではないかもしれませんが、フランスはアフリカ大陸の国家を植民地にしていた為、こういったスパイスを効かせた料理が伝統的に存在しています。

Compotée de tête de veau,cervelle meunière
テット・ド・ヴォ(子牛頭肉)の煮込み、脳みそのムニエル

リヨンの郷土料理、テット・ド・ヴォの煮込みに脳みそのムニエル。
コラーゲンたっぷりの頭肉、バターでかりっと焼いた脳みそ。
とろとろの頭肉と脳みその食感の対比が面白い一皿でした。

Coq au vin, coquillettes
雄鶏の赤ワイン煮、コキエット添え

こちらはブルゴーニュの郷土料理、雄鶏のモモ肉はそのままでは固いため、赤ワインに漬け込み、その漬け汁で煮込んだもの。
ブルゴーニュの伝統的な付け合わせであるマッシュルームにベーコン、子玉ねぎのグラッセ。
小さな貝を意味するコキエットというパスタを添えてあります。


デザート

Paris Brest
パリブレスト

1891年より続く自転車ロードレース、パリブレストパリの開催を記念して作られたシュー菓子。
ブルターニュ料理の店らしい一皿。

Riz au lait façon grand mère,compote de fruits
おばあちゃん風リ・オ・レ、フルーツのコンポート添え

フランス風オートミール、リ・オ・レ。オレンジを効かせ食べやすい仕上がり。
リンゴやレーズンのコンポートが添えてあり、各自で掛けて頂きます。

Mont-blanc
モンブラン

たっぷりのマロンクリームが嬉しい。
最近流行りの軽いものではなく、しっかりと栗の味が感じられるものになっています。

食事が終わり河合シェフと少しお話しさせて頂きました。

かつて80年代にレストランで流行っていたガストロノミーがカンデボルド氏やコンスタン氏によって街場に降り、ビストロノミーが生まれた。それを踏襲し、伝統料理を繋いでいきたいとの事。
ブルターニュ料理がメニューに多く含まれているのもその一端で、かつてのオーナー達の思いや、以前の料理を期待して再訪してくださったお客様への期待に応えるためだという。

自分自身が本当に美味しいと思うものを提供していきたいと考えている河合シェフ。
今日食べた料理にもその根幹たる思いが反映された、最近では余り目に出来ない、
奇をてらわない魂の料理に目の覚める思いでした。
今回訪れたのは既にジビエが終わった時期でしたが、シーズンにはずらりとジビエメニューが並び、毎年このお店のジビエが食べたいと訪れる常連客が後を絶たないそうです。

雑誌やガイドブックには載っていない、流行に囚われない骨太なフランス料理。
是非味わってみてはいかがでしょうか。

Chez Michel
10 rue de Belzunce 75010 Paris
+33 (0)1 44 53 06 20
http://www.restaurantchezmichel.fr/