FRANCE

Dessance (デサンス)

フランス校 食べ歩き日記

2014.07.01

ここ数年前から、フランス校製菓生の研修先として、レストランでアシェットデセールを担当してみたいという学生が
増えています。アシェットデセールとは皿盛りのデザートのことです。そのアシェットデセールは本来、レストランへ出向き、
食後の楽しみとして最後に提供されるものですが、今回紹介するお店はデザートのみがどの時間帯でも提供してもらえて、
コースメニューまであるというのです。日本ではすでにいくつかの専門店がありますが、フランスでは昨年の12月に初めて
オープンしました。お店はパリのマレ地区アンシーヴ通りにあります。

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お店の外観からはそこがレストランだと一見わかりづらいですが、お店の前で立ち止まる人も多く、まだまだ話題のお店
といったところです。店内は奥行が深く、さらに2階へと続く階段付近の突き当りに鏡があるので、どこまでも続いている
ように見えます。1階は2人掛けのテーブル席が10個に、カウンター席が5席、2階にもテーブル席が5個あります。


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テーブルは最近お皿にも使用されるような石を使い、テーブル席のベンチシートには木が使われていて
とても自然を感じるモダンな造りをしています。カウンターの前はオープンキッチンになっていて、テキパキ
作業している姿を見ることができ、こちらの席に決めました。


メニューを見ると冒頭に「フランス初のアシェットデセールガストロノミーにようこそ。」とあって「季節のフルーツや植物、
野菜本来の自然の甘味を使って、新鮮さ、軽さと驚きの新しい料理を提供します。」と書かれてあります。シェフは星付きの
レストラン「グラン・ヴェフール」「ルドワイヤン」などで経験を積んだパティシエ、クリストフ・ブシェ氏でオーナーはパリの
食のトレンド仕掛け人と言われるフィリップ・バラヌ氏。


メニューは1皿19?のデザートの他に、4種類のデザートがお任せで提供されるカルト・ブランシュ36?、2人でシェアして
食べると44?、始めの一皿のみ塩気のあるお皿に3種類のデザートがついて42?、それぞれのデザートに合わせて
提供してくれるドリンクやアルコールなどもあり、まさにレストランのメニュー構成です。


今回オーダーしたのはカルト・ブランシュ。
すべてにアミューズ(突き出しのようなもの)とミニャルディーズ(小菓子)がついてきます。


アミューズはこちら 
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ブッラータと辛子の葉のシャーベット、オレンジのコンフィ(砂糖漬け)


ブッラータというモッツァレラチーズに似たフレッシュチーズが辛子の葉のシャーベットを覆っていて、オレンジのコンフィと
粉末にした辛子が散りばめられています。辛子の葉のシャーベットと聞いて、始めは強い刺激があるのかと思いましたが、
全然それはなくさらにブッラータのバターのような甘みとトロっとした舌触りが心地よく、オレンジの爽やかさと粉末にした
辛子のピリッとした後味で最後まで美味しく頂きました。


1品の季節のデザート
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グリンピースの滑らかなスープとそのゼリー、人参のシャーベット


メニュー名そのままのデザートですが、グリンピースの青臭さが見事に消されていて、ゼリーと共にするするのどを
通っていきます。人参のシャーベットにはオレンジジュースが使われているのか後味スッキリで、これからのデザートが
とても楽しみになってきました。


2品目の季節のデザート
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苺と赤カブのピクルス、パセリのジブレ(刻んだパセリの入ったかき氷のようなもの)、
泡状に乳化させたフロマージュ・ブラン


フランボワーズビネガーで味付けされた苺が主体となっています。パセリのジブレが色のわりに全然青臭くなく、
赤カブのピクルスが箸休めのようになっていて、泡状のフロマージュ・ブランが軽さを出しています。その他板状の
メレンゲで食感を与え、苺のペクチンゼリーは最後に苺のデザートであったことを再認識させてくれています。


3品目の季節のデザート
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バナナのマリネ、セロリ、生姜のアイスクリーム、スペキュロス(香辛料が入ったクッキーをそぼろ状にしたもの)


バナナのマリネはねっとりと甘く後を引きますが、セロリのシャキシャキした食感がスッキリさせてくれます。生姜の
アイスクリームとスペキュロスの香辛料(シナモンなど)がとてもバナナとよく合っていて、いろんな味や香り、
食感が次々に入れ替わりとてもおもしろいデザートでした。少量ずつですが、バナナに乗っていたレモンのコンフィや
フレッシュのパッションフルーツ、カカオニブを砕いたものなどもそれぞれがこのデザートの大事な要素になっていました。


4品目グルメのデザート
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ノルウェー風オムレツ、ウイスキーのフランベ(アルコールを燃やし香りのみを移す調理法)


こちらはチョコレートの生地にバニラアイスクリーム、真ん中には塩バターキャラメルのソースが出てくるようになっていて、
周り全体をメレンゲで覆って絞ってあります。提供直前にウイスキーでフランベして蓋をし、燻製のような香りを
付けています。


ミニャルディーズ(小菓子)
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お花の香りが付いたクレーム・グラッセ
トマトのギモーブにフランボワーズのジュレ
ゴマのチュイルにゴマクリーム、金柑のコンフィ


アラカルトでも注文できるグルメのデザート
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クリスティアン(ビスケットのようにカリカリしたもの)、チョコレートとバニラ、苦い雲のようなキャラメル


表面にきれいなグラサージュがかけられていて、チョコレートとバニラのクレーム・グラッセ(アイスクリームのようなもの)に
カリカリしたチョコレート生地に少し塩が効いています。この上に軽いチョコレートムースと少し苦めのキャラメルのギモーブ
(マシュマロ)が乗っていています。コースの中で一番甘く濃厚でしたが、冷たさと塩気、軽さと苦さがあってとても計算
されたいいデザートだと思いました。


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どのデザートもオーダーが通ってからパティシエが目の前で仕上げてくれます。コースの提供時間も食べ終わった後に
たくさん待ったという感覚もなくいいペースでした。


調理台の下にある冷蔵および冷凍庫にはたくさんのタッパーにそれぞれパーツごとに整理され、すぐに取り出して
盛り付けできるようになっています。地下には仕込みをするスペースがあるようで、そこから新たに仕込まれたものや、
固さの調整がされた氷菓などを時々持ってきていました。


今回訪れたのは土曜日の12時でオープンしてすぐの時間。すでに2人のマダムが1組、私たちの後にも3~4組、
1時間以内に次々と訪れていてその人気ぶりがよくわかります。また同じカウンターに座った旅行者風の英語を話す
お客さんには、サービス担当の方が英語でしっかりとデザートの説明をしていました。


その他、アラカルトには塩気のものもあって、ロックホールチーズの入ったマドレーヌやフォワグラ、スモークサーモンなど
甘いものばっかりだと苦手という方にもおすすめです。食後の飲み物にはコーヒーはもちろん、ジャスミンティーや
そば茶などもあります。また夜は23:00~24:00まで営業しているので、他のレストランで食べた後にデザートや
お酒を飲むために訪れる方も多いと思います。


これまでも野菜をデザートに使うことはよくありますが、個人的にはちょっと苦手というか、なにもわざわざ使わなくても
って気持ちがありました。もちろん個人の好き嫌いが大きくでると思います。でもここのデザートは野菜やフルーツの甘さを
上手に使いこなし、飾りにもセロリの花やえんどう豆の若いつるの部分を使ったりして、自然からの恩恵を大事にしている
と思えて、体に優しいものを美味しくいただいたという感じです。


季節のフルーツや野菜を使って様々にデザートが替わって登場しているようですし、パリを訪れる際には必ず行きたいと
思えるお店です。


Dessance
74, rue des Archives 75003 Paris
メトロ:Rambuteau 11番線/ Filles de calvaire 8番線
Tel:01?42?77?23?62
営業時間:15:00~23:00(水~金)/ 12:00~24:00(土・日)
定休日:月・火曜
HP: http://www.dessance.fr