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Substrat Restaurant (シュプストラ)

フランス校 食べ歩き日記

2015.11.04

古くからリヨンの産業を支えてきた絹織物。かつてカニュCanutと呼ばれる絹織物職人たちが多く住んでいたのが、リヨン7区のクロワ・ルスCroix -Rousseの丘エリアです。いまはもう職人たちの姿はありませんが、下町情緒あふれるこの一角はどの通りも常に活気に満ちていて、おもしろいお店がたくさんあることで知られています。高台にあるので、いたるところからリヨンの美しい街並みを見下ろすことができます。

 

今回はそんなクロワ・ルス地区にある「シュプストラSubstrat」というお店を訪ねました。 「基盤」や「地質」という意味を持つこのお店のコンセプトは「このお店の土壌に育つ友情とみんなの味」。 たしかに、天井の梁が印象的な、半ば職人のアトリエのような、田舎の一軒家のようなつくりの店内は、初めての人も不思議と気兼ねなくリラックスできる雰囲気です。あるガイドブックには「一風変わったお店」と紹介されていました。

 

オーナーシェフのヴェルゴワンVergoin氏は、数々の有名レストランでソムリエとして活躍してきましたが、このお店をオープンさせるにあたり、ソムリエからシェフに転向したという珍しい経歴の持ち主。 摘みたての野菜、ハーブ、キノコ類にこだわり、また、ジュとブイヨンにこだわりつつ、メニューは市場の仕入れや、季節が与えるインスピレーションで毎週変わるそうです。 地元の人が集まるリヨンのビストロの大衆料理という路線はしっかりと保ちつつ、食べやすさや軽さを意識し、料理を現代化させていきたいのだとか。テーブルセットもカジュアルです。

お昼はEntree + Plat またはPlat +Dessertで17ユーロ、3品で19ユーロと非常にリーズナブル。 それにワインとカフェをつけて24ユーロですので、非常にカリテ・プリ Quarité-Prix(コストパフォーマンス)の高いお店だと言えます。

夜はEntree (前菜)+ Plat(メイン) またはPlat+Dessert(デザート)が29ユーロ、3品で33ユーロ、 季節の料理で構成されるシェフお任せのコースが4品で41ユーロ、 それぞれの料理にワインを合わせてくれるドリンクつきのコースで61ユーロです。 私たちはディナーの予約で、スタンダードな3品33ユーロのコースを注文しました。

ステンレス製、木製、いろんなスタイルのテーブルに、これまた様々なタイプの椅子が組み合された最大30席ほどのホールを取り仕切るのは、気のいい元気な女性。たった1人ですが、どのテーブルもしっかりと接客してくれてとても気持ちがいいサーヴィスでした。1人なのでもちろんスピーディにというわけには行きませんが、待ち時間にアミューズ(突出し)が出てきて、思わずにっこり。

この日のアミューズはウズラのもも肉のコンフィ。 手でつまんでかじると肉がすんなり外れるくらい火を通してあるので、食べやすく、まぶしてあるコーヒー豆が香ばしいアクセントになっていました。

そして、お待ちかねの前菜。

Saint Jacques de la Baie de St-Brieuc, chanterelles au jus de viandes, chips
サン・ブリウ湾のホタテ、肉のjusで風味をつけたアンズタケ、チップス

サン・ブリウ産と産地を明記するところから食材へのこだわりが感じらせます。焼き加減はばっちり。最近は海のものに肉の風味を加える料理が増えてきましたが、こちらもしっかりとした味わいでした。

Effiloché de sanglier confit, graines de moutarde, pétales de cèpes crus
イノシシのコンフィのエフィロテ、粒マスタードと生セップ茸

冬はジビエの季節。イノシシのコンフィ肉をほぐしたものに粒マスタードをはじめとする香辛料でアクセントをつけてありました。生のセップ茸のフレッシュ感との対比がおもしろい一品。

続いて、メイン料理

Omble chevalier, crème de chou fleur grillé, chou de Bruxelles, poutargue, huile d'olive fumée
オンブル・シュヴァリエ(アルプスイワナ)、グリエしたカリフラワーのクリーム、燻製オリーブオイル

火通しが難しいと言われるオンブル・シュヴァリエ,ですが、適切に火通しされており、ほのかに香る燻製の香りがまずます食欲をそそります。カリフラワーのクリームも主材料を邪魔しないやさしい仕上がりでした。


1/2 pigeon fermier de l'Ain, châtaigne, carotte, jus au sarrasin
アン県の農家産のハト(半身)、シャテーニュ(栗)とそば粉のジュ

エスコフィエ校のあるアン県の農家から仕入れたハト。ソースには内臓をつかっていましたが、臭みはなく、ジビエが苦手な人でも楽しめると思います。季節の栗との相性も抜群。


Foie de veau de lait Guillaume Verdin, tombée d'epinards, jus au vinaigre de figue, sel d'anchois
ギヨーム・ヴェルダン氏の乳飲み仔牛のフォワ(レバー)、ホウレンソウの葉、イチジク・ビネガーのジュとアンチョビ塩

フォワといえばエスカロップ状のものが定番ですが、この形のフォワに出会ったのは初めてでした。ギヨーム・ヴェルダン氏について調べたところ、ブルゴーニュの生産者ということで、生産者から直接仕入れた食材は、この肉厚にして非常にやわらかく、臭みもなく、ジャストな塩加減で絶品でした。

最後はチーズもしくはデザートが選べます。


Tome crayeuse, chutney coing colombo, herbe et pousses
トム・クレイユーズ、チャツネとカリンのコロンボ、ハーブを添えて

この日のチーズはサヴォワ地方のチーズでした。盛り付けも美しく、シェフの心遣いが伝わってきます。


Glace aux cèpes, courge muscade confite dans un jus de pomme aux épices douces, croquant châtaigne
セップ茸のアイスクリーム、クルジュ・ムスカド(かぼちゃ)のコンフィ 甘い香辛料のリンゴジュース、シャテーニュ(栗)のクロカンを添えて

キノコをデザートに取り入れるグランド・メゾンは知っていますが、このお店のようにカジュアルなところで出会ったのは初めてでした。比較的おとなしい風味でしたが、リンゴといい、栗といい、旬のものを積極的に取り入れようとする姿勢は、料理人として非常に好感が持てます。

ゆっくりじっくりと贅沢な時間を過ごしましたが、今回はどの料理も、食材へのこだわりがうかがえるものばかりでした。 また、今回はワインは紹介していませんが、ワインリストには手頃な価格で、有名な生産者のワインが1本27ユーロから。グラスワインはなんと3ユーロから。 また、メニューは安いのに最後に頼むコーヒーが意外と高くてビックリ!ということがよくありますが、このお店はコーヒーはなんと2ユーロ。本当に良心的です。 ところでこのお店、食事のサーヴィスが終わっても、入り口正面にあるカウンターには人がたくさんいて一行に帰る気配がありません。食事を終えた人だけでなく、常連の立ち飲み客さんも加わって、グラス片手に今後はバーのような雰囲気で盛り上がりはじめました。さすが元ソムリエのお店というところでしょうか。 いずれにせよ、地元の人がこうして集う下町のお店って素敵ですよね。また来てしまう予感がします。


Substrat restaurant
7 Rue Pailleron 69004 Lyon
TEL : 04 78 29 14 93
http://www.substrat-restaurant.com/