FRANCE

Tomy & Co

フランス校 食べ歩き日記

2017.12.27

2016フランスを代表する美食ガイド「ゴー・エ・ミヨ Gault&Millau」の「若き才能」に選ばれた
トミー・グセTomy Gousset氏が2016年9月にオープンしたお店「トミー&コーTomy & Co」に行ってきました。

同じ通りの向かいには1ツ星の人気店「ダヴィッド・トゥタンDavid Toutain」が、またすぐ近くの徒歩圏には、クリスチャン・コンスタン氏Christian Constantの展開する人気店であふれるサン・ドミニク通りRue Saint-Dominiqueがあり、人気店激戦区のパリ7区ですが、ここも開店してあっという間に予約の取りにくいお店となりました。

ベトナム人の両親のもとパリの郊外で生まれたトミー氏は、もともとは大学で経済学を学んでいましたが、22歳のときにテレビで見たフランスの調理師学校「エコール・フェランディ Ecole Ferrandi」のドキュメンタリー番組に魅了され、料理の道へ進んだという経歴の持ち主。
パリのレ・アールLes Halles地区にある人気ビストロ
ピルエットPirouette」のシェフを務めていたことで知られています。

「あらゆる層のお客様に手が届く洗練されたビストロノミー料理を提供したい」というコンセプトだけあって、内装はニューヨークスタイルともいえるモノトーンが基調。壁にポップなイラストが描かれていたり、テーブルもクロスなしのシンプルなスタイルで、まさにカジュアルな雰囲気です。そして、「気軽にワイワイ楽しみながら食べてほしい」というシェフの思いから、クオリティに対してのお値段の設定も良心的。

コースは前菜・メイン・デザートの3品で45ユーロ。
夜のみ65ユーロのデギュスタシオン・コースもあります(ワインセットはプラス40ユーロ)。
アラカルトの場合は、前菜14ユーロ、メイン29ユーロ、デザート10ユーロという設定です。

ワインは、共同経営者でもある若きソムリエのミカエル・モレ氏Micaël Moraisが本日のグラスワインをいろいろと勧めてくれます。
なんとグラスワインはマグナムのボトルから注いでくれます。まず、一口味見をさせてくれますので、安心して自分の好みのワインを選ぶことができます。


二人で3品ずつア・ラ・カルトで注文しました。

<前菜>
Œuf mollet, maïs & chorizo, comté & brick croustillante, jus de volaille
半熟たまご、トウモロコシとチョリソ、コンテチーズとパリパリのブリック、鶏のジュ

鶏のだしの効いた甘みのあるソースとパリパリに揚げたパータ・ブリックが、卵の中から現れるトロトロの黄身と混ざったときの食感と、味のハーモニーがとても心地よい一品です。
どこにでもある半熟卵の料理ですが、いくつも手間を加え、見た目も新しい感覚の料理となっていました。

Vitello Tonnato de tête de veau, fleur de câpres & croûtons, ossau & oignons grelots
テット・ド・ヴォーのヴィテッロ・トンナート、ケイパーの花とクルトン、オッソーチーズと小タマネギ

料理イタリア北部、ピエモンテ州の定番郷土料理「ヴィテッロ・トンナート」のスタイルで仕上げられたフランスの伝統料理「テット・ド・ヴォーTête de veau(子牛の頭肉)」。ヴィテッロ・トンナートは一般的には茹でた仔牛のもも肉の薄切りにツナやアンチョビ、ケイパー、マヨネーズなどをすりつぶしたソースをかける料理ですが、薄切りにしたテット・ド・ヴォーの上にはシャキシャキとした色とりどりの食材が盛り付けられ、ゼラチン質の主材料との対比が面白い一品です。

<メイン料理>
Mignon de Porc francilin, gnocchis au basilic & tomates, olives kalamata & citron confit
フランシラン豚のヒレ肉、バジリコとトマトのニョッキ、カラマタオリーヴとレモンのコンフィ

パリの住民向けに飼育されているワンランク上の上質な豚肉をポール・フランシランPorc francilinと呼ぶそうです。
付け合わせのニョッキはトミー氏の得意な料理のひとつで、自ら練って伸ばして成型している自家製。
シンプルな構成ですが、ニョッキ自体の風味もしっかり感じられ、味のバランスがとてもよい一品。

Ris de Veau sauce barbecue, piperade & fregola soufflee (+6euros)
リ・ド・ヴォー、バーベキューのソース、ピペラードとフレゴラのスフレ

モチモチしたリ・ド・ヴォー(子牛の胸腺肉)にはバーベキュー風味のソースがかけられ、下には玉ネギ・ピーマン、青トウガラシ、トマトなどをゆっくり煮てつくるバスク地方の伝統料理「ピペラードpiperade」が敷いてありました。
また、イタリア・サルデーニャ特産の小さな粒上のパスタ「フレグラ Fregula」 をあられのようにスフレにして乗せてあり、こちらも食感の違いがおもしろい一品。

<デザート>
Tapioca facon "Riz au lait", fraises & sa glace, oxalys rouge & sucre de palme
タピオカのリ・オ・レ風、イチゴとそのアイスクリーム、赤オキサリスとパームシュガーを添えて

フランス版オートミール「リ・オ・レ」を、お米ではなくタピオカをつかって再現した一品。
甘さ控えめで、フルーツの味がしっかり感じられました。
お皿の選択も含め、ハーブの散らし方なども勉強になります。

Espuma aux amandes, glace melon & opaline, financier
アーモンドのエスプーマ、メロンのアイスクリームとオパリーヌ、フィナンシエ

スタイリッシュな見た目のこのデザート、パリっと薄焼きのオパリーヌの下にはフィナンシエとメロンのアイスクリームが隠されています。
ベースはアーモンド風味のエスプーマを固めたものですが、このデザートは、形状はそのままで、レモン風味をべースにアイスクリームがマンゴーだったりイチゴだったりと、いろんな組み合わせのバリエーションがあるようです。

こうしてひととおり食してみると、味、触感、彩りのそれぞれの面で、野菜やハーブをふんだんに使っていることを実感します。
トミー氏はパリの郊外に自分の畑を持っており、野菜やハーブはそこで育てているものも多く使っているようです。
とにかく、どれも美しい盛り付けが印象的です。
また、庶民的で伝統的な料理をべースにしながらも、フランス料理にこだわらない食材やスタイルを取り入れ、最終的に質の高いフランスのビストロ料理に仕上げているセンスはすばらしいと思います。
ヤニック・アレノ氏Yannick Allénoや、アラン・ソリヴェレス氏Alain Solivérèsなどパリのスターシェフに学び、その後アメリカに渡って、ニューヨークで数々の有名店を展開しているフランス人シェフ、ダニエル・ブリュ氏の下で修業したそうですから、自身のルーツはもとより、アメリカでの経験も影響しているのかもしれません。

フランス料理は敷居が高くて・・・という人も気軽に行けるお店です。
いま注目の若きシェフの料理をぜひ体験してみてください。

Tomy & Co
住 所:22, rue Surcouf 75007 Paris
電 話:01 45 51 46 93
最寄駅:メトロ13番/8番 Invalides、
予 約:eater.space/tomy-co