初の“出会い”は現在東京で最も予約の取りにくいフランス料理店のひとつ、広尾の『サリュー』に設定。サリューとはフランス語で「やあ!」ぐらいの軽い挨拶の意味。すでに親密感があります。これはいい“出会い”になるかも知れません。さて、野次馬隊はこの出会いをどのように見届けたのでしょうか。前編と後編の2回に分けてご紹介します。
前編は主人公、レストラン、野次馬隊などのご紹介と白ワインの出会いまで、後編は赤ワインの出会いと演出家(オーナーシェフ&マネージャー)の話をお届けします。 |
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主人公
2本のフランスワイン |
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オート=コート・ド・ニュイ 2000 (メオ=カミュゼ) ブルゴーニュワイン。メオ=カミュゼはもちろん作り手の名前。今の名声を築いたのは醸造家アンリ・ジャイエによるところが大きい。主に大銘柄赤ワインを産し、その名声は世界的である。十分に力強く、構造のしっかりしたワインが多いとされる。 |
コルナス 1998 (ノエル・ヴェルセ) ローヌワイン。なんとも表現しがたい深いルビー色(深紅)の色合い(ローブ)を持つ。若いうちはごつごつした野性的なタンニンを感じる。ガシッとした構造をもち、ベリー類の香りが年を経ると、栗、トリュフ、ウイキョウ、カシスなどが混ざり合った香りに変化する。非常に上質の赤ワインのひとつではあるが、評価は実際よりも低い場合が多い。 |
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出会いを演出する人
レストラン『サリュー』(東京・広尾)
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オーナーシェフ 森本 秀和(調理23期生) |
マネージャー 鳥山 由紀夫(調理29期生)
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レストラン『サリュー』は2002年に東京の広尾で森本氏が開店したフランス料理店。どちらかというとこじんまりした店で、シックではあるけれどまったく気取りがなく、かと言ってカジュアルではない、そんな雰囲気です。 オーナーシェフの森本氏は辻調グループ校を卒業後、職員として4年間勤務。退職後、渡仏し、西はブルターニュからバイヨンヌ、東はシャンパーニュと、地方のレストラン数軒で修業した後に帰国。『ステラマリス』を経て、1994年にレストラン『Feu』のシェフに。2002年に独立し、「普通の人に、普通に食べてもらいたい」を料理のモットーに『サリュー』を開店。 マネージャーの肩書きをもつ鳥山氏は『Feu』時代からの良き相棒。 |
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出会った料理
トコブシとウニのエスカルゴ風グラタン 白金豚バラ肉、黒胡椒風味
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「今日は何飲む」野次馬隊
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Y(リーダー):本業は某広告制作会社のコピーライター。日本ペンクラブ協会会員。ワイン関係の著作も多く、クラッシック音楽への造詣も深い。著作に『今日からちょっとワイン通』『武満徹対談集』。
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M:才能豊かな女性。辻調グループ校のスタッフのひとり。いろいろな仕掛けを企む人。食べることと飲むこととヴィオラを演奏することをこよなく愛する。とりわけ飲むことは・・・
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S:男性。このコラムの担当者。どちらかというと晩熟型(悪く言えば進化が遅い)。趣味はアイロンがけと靴磨き。
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F:やはり教養豊かな男性。ワインの知識は豊富だが、アルコールには弱い。酔うことをこよなく愛し、酔って人格が崩壊することに快感を感じる。残念ながら今回の参加が最初で最後。
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さて、ではさっそく“出会い”の場に・・・ |
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飛び入りの脇役コンドリュー登場 |
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マネージャーの鳥山氏がアペリティフに1997年のコンドリューを選んでくれた。これには一同少し意外な感。しかしこの飛び入りが・・・ |
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ここで飛び入りのかんたんな紹介を |
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コンドリュー 1997 (イヴ・キュイロン) コンドリューの多くは強い香りを持ち、酸味が弱い。若いうちに飲んだ方がこのワインの風味をより深く味わえる。香りの特徴は桃、アプリコット、ハチミツなどで、後味は豊穣。 |
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Y:この年か、その前の年かの若いやつを食前酒として飲むとすごくフルーティーで瑞々しくて。あまり寝かせちゃうと梅酒みたいな味になっちゃうかもしれないね。
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S:コンドリューの畑ってすごい斜面にあるんですよね。
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F:いかにもローヌだなって感じのところ。
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Y:(試飲して)うん、穏やかに落ち着いている。すごく落ち着いたコンドリューですね。
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鳥山:そうですね。酸味もすごくまろやかですし。
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F:ほんと、かなり落ち着いていますね。コンデリューに使われるヴィオニエ(ぶどうの品種名)は若いときは強烈な個性があるんですけれど、これはそれほど感じないですね。
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Y:97年だから。酸もそれなりに残っているけど、いい方に転がっていますね。ミネラルぽい香りがいっぱいある。でも、これ、黙って出されるとヴィオニエってわからないかも知れない。うんと若い時に飲んでみたかったですね。
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“秋刀魚のマリネ” |
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F:まずはアミューズですね。主役のワインたちにはもう少し後に登場してもらうとして、この料理に合わせるとしたらコント・ラフォンが作っている1999年のマコン=ミリィなんてどうですか?
Y:それはいいかも知れない。
M:どういうワインなんですか。
Y:地域的にいわゆるブルゴーニュよりはずっと南なので、実が良く熟しますから、華やかな香りを出すワインを作るにはすごくいいんです。でも切れ味がなくなっちゃうんですよ。
M:わかりやすいワインなんですね。
F:少し格調が低い。
Y:やっぱり本当にいいワインっていうのは、どちらかっていうとその品種ができる最も北でできるものなんですよね。結局、ちょっとストレスがあった方がいいんですね。喜んで育ってしまったものは・・・
M:(笑)何だか考えさせられる話ですね。 |
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オート=コート・ド・ニュイと“トコブシとウニのエスカルゴ風グラタン”の出会い |
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Y:ん〜、なんでこの料理を合わせたのかな?エスカルゴを食べるときはよくシャブリなんて合わせますけれど・・・ま、イメージかも知れないけど。
F:この料理にはあまり繊細なワインは合いにくいですよね。もっとシンプルでグラマーなマコン地方産の白が合うような気がする。
Y:もう少しワインの温度が上がると合うのかも知れないね。今はこれ爽やかに冷えすぎているから。でも、確かにもう少し南の方の酸味の少ない白の方が合いますね。もしかしたらウニが入っているからこんなにぶつかるのかも知れない。ウニと白ワインはけっこう難しいですからね。
S:あっ、そうですか。
Y:ウニが持つ苦味がね、ワインの苦味を際立たせてしまうことがあるんで。卵系は難しいですよ。
S:じゃあ、キャビアなんかもワインは難しいですよね。
Y:そうですね。シャンパーニュには合いますけどね。
S:では次の“出会い”は赤ワインですね・・・ |
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と、前編はここまで。出会いの全てをご紹介できなくて残念ですが、まずは白ワインを主役とする“出会い”に立ち会いました。次回は赤ワインが主人公です。どのような“出会い”になるのでしょうか。お楽しみに。
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出会いの舞台
レストラン『サリュー』
〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-4-10 鴻貴ビル1階 Tel:03-5791-2938 Fax:03-5791-2938 定休日:日曜 営業時間:12:00〜14:00LO / 18:00〜22:00LO |
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