エクレール校
1998.3.16-3.31


桜が満開になりました。真っ白とかなり濃いピンクの二種類の花の色です。染井吉野のような情緒のあるうすい桃色の花はありません。総べて6月頃にたわわに実らせる木で、フランスはどうも花より団子のようです。ボルドーの高等裁判所で、現在第二次大戦中の高級官僚で大量のユダヤ人を集め、ドイツに引き渡したとして人道の罪に問われている、モーリス・パポンの裁判が近々結審を迎えます。以前としてまだまだ戦争の傷痕の残っているヨーロッパです。



トピック

<ミシュラン98年版>

料理店やホテルを評価するガイド書はこのミシュラン以外にもいくつか存在しています。新しいところでシャンペラール、さらにボタン・グルマンゴー・エ・ミヨ、タイヤ会社が創刊に関わっていたギッド・クレベール、そして極めつけが19世紀には発刊されていたギッド・ミシュランです。この赤い分厚いガイド書が実際に一番売れているもので、フランス国内、ベネルックス、イギリス、ドイツ、スイス、イタリア、スペイン・ポルトガルなどヨーロッパ各国のホテル・レストランを星や屋根の数でランクづけするというやり方です。このランク付けの是非、またそのやり方などの議論はさておき、ミシュランは他にも緑の観光名所のガイド書、黄色のミシュランの道路地図を発行しています。

さて今年1998年版のご報告をする前に、ここ数年の状況を簡単にまとめておきたいと思います。

まず以前長いこと続いていた21軒という三ツ星レストランの数が、ここ数年3軒減って18軒で推移していたということ、発刊100周年を目の前にしていること、さらに南フランスに三ツ星が一つも無かったという状況(発売元の親会社がタイヤ会社であるということから、車での移動を助長するするような方針を取るべきであろうことは容易に推測されます)。また間接的には、来年から採用される単一通貨ユーロの金融市場への期待感から、ヨーロッパ市場の値上がりが続いていますが、それだけにとどまらず一般消費者がさらに旅行などをして消費活動を加速するという状況の布石を打っている感がします。

確かに外国ナンバーの車の後部座席の後ろの窓にのっているのをよく目にするこの赤い本ですが、一般大衆への影響力もさることながら、レストラン業者への影響力は計り知れないものがあります。星が2つから1つ、1つから星なしになるだけで、一般のお客は料理の質が落ちたとして足を運ばなくなるのですから、これは残酷の一言に尽きます。我々同業の者にとっても、なんとも切ない思いをさせられる訳です。

さて今年の評価に移ります。
フランスでは新しい三ツ星が3軒誕生しました。2軒は返り咲き。モナコのアラン・デュカスがしきるルイXV、それにサンテチエンヌで店を閉め、パリに上ったピエール・ガニェ-ルです。デュカスはなかなかの経営才覚を示しています。ガニェ-ルはパリに店を開いてから彼の芸術的洗練度がやや薄らいだ感があります。これもサンテチエンヌの時に空席の目立つレストランでお客の気を引くことに必死であったあの時期と、話題にもなり連日客が押し寄せている現在との差が原因なのでしょうか。新しい三ツ星店は南フランスのモンペリエにあるジャルダン・デ・サンス。一卵性双生児のプルセル兄弟が経営しています。モダンな店で大きなガラス張りの窓の外には、フランス人のコンセプトの日本庭園らしき庭が見えます。その他顕著なところでは、スイスのジラルデが三ツ星を取り返しました。といってもジラルデ自身はもう引退しているので、かつての右腕のロシャが質の高い料理を引き継いだ形です。ドイツではアンリ・ゴー氏も才能を認めている、ディター・ミューラーがケルン近くのホテルレストランで三ツ星を獲得しました。もう百年の歴史を持つこのガイド書。相変わらずシェフ達を震撼させているようです。







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