■97年版ミシュラン・ガイド最新情報
フランス料理界の大部分のシェフ達が一喜一憂する季節がやってきた。赤いバイブル、あの「ミシュラン・ホテル・レストラン・ガイド、フランス1997年版」がこの3月5日(水)に発売された。たった一つの星が付くか、はずされるか。付けばレストランのプレスティージュが上がり、お客は倍増する。星がはずされるとお客は遠のき、死活問題にもなりかねない。残酷な評価であるが、他のガイド書よりはるかに影響力のあるのが、このミシュランである。
さて今年の新評価をお知らせしよう。まず今年最大の話題は、昨年引退したジョエル・ロビュションの店を引き継いだアラン・デュカスが、そのまま3ツ星を引き継いだことだろう。ロビュションの完璧さを求める料理から少し離れ、クラシックを取り混ぜたメニューも出してはいるが、やはり基本は地中海の太陽の料理。誰にでも美味しいと評価される料理である。ただし、その筋によるとデュカスとモナコ公国との契約がここ数年で切れるということを、ミシュランの編集長、ベルナール・ナジュランに彼自身が洩らしたから、モナコの「オテル・ド・パリ」の「ルイ・キャーンズ」が今回2ツ星に落ちたという噂である。引退したロビュションは、いまだに予定している料理学校を軌道に乗せてはいないが、弟子達の後押しに力を入れている。かつてのジャマンを引き継いだブノワ・ギシャールと、ロビュション自らコンサルタントをしている「オテル・アストール」のレストランは、どちらも1ツ星を獲得した。ちなみにウイークデーのお昼から10分間の料理番組<Cuisinez comme
un grand chef>(グラン・シェフみたいにお料理しよう)に出演していて、サヴォワ、ロランジェ、ブラスなどの共演を実現している。
さて本題に戻ろう。昨年経営難で3ツ星を返上したサンテチエンヌのピエール・ガニェールだが、パリのシャンゼリゼの凱旋門近く「オテル・ド・バルザック」に、昨年暮新たな店を開いて再出発を図り、見事に今年2ツ星で再スタートした。またアルデッシュの山奥で、ブラスを思わせる山草の香りたっぷりの料理をサーヴィスしている、レジス・マルコン(2年前にボキューズ・ドール料理コンクールで優勝)も二つ目の星を手に入れた。その他話題の新2ツ星は両ジャック、つまりグラースのジャック・シボワの店「バスチッド・サン・タントワ-ヌ」と、ヴァンスにあるジャック・マキシマンの店。もう一軒は地中海に近いピレネー山中、セレにある「レ・フイヤン」である。
店名(地名)
●新3ツ星
アラン・デュカス(パリ16区)
●新2ツ星
ピエール・ガニェール(パリ18区)
ジャック・マクシマン(ヴァンス)
オーベルジュ・デ・シーム(サン・ボネ・ル・フロワ)
バスチッド・サン・タントワ-ヌ(グラース)
レ・フイヤン(セレ)
●2ツ星から1ツ星へ
パリの「アンフィクレス」、「プレ・キャトラン」、「デュクノワ」、「ジャック・カーニャ」、トゥ-ルの「シャルル・バリエ」、ポンスの「ムーラン・ド・マルクーズ」(オーナーシェフのドミニク・ブーシェがパリの「オテル・クリヨ」ンのシェフに招聘されたため)、ムージャンのロジェ・ヴェルジェの店、そして
カルカッソンヌの「バルバカンヌ(」シェフのデル・ビュルゴーがパリの「オテル・ブリストル」に招聘)である。
●新1ツ星
新たな1ツ星は31軒。めぼしいところは、先ほどご紹介したパリのジャマンとアストル、そして先の「トゥ-ル・ダルジャン」のシェフ、マルティネ-ズが独立し、こしを落ち着けた「ルレ・ルイ・トレーズ」である。カンヌの「オテル・マジェスティック」のメインダイニング「ヴィラ・ド・リス」は、先ごろまで「ジョルジュ・ブラン」のシェフをやっていたブルーノ・オジェを招聘し、今年すぐに1ツ星。
●星を無くした店
計48軒。そこにはパリの「マノワール・ド・パリ」、リヨンの「ナンドロン」(引退のため)が含まれる。
今回の傾向を見つめてみると、以前アルザスの評価が上がった時期があったが、今回は南仏料理が高く評価されているようだ。ただの結果にすぎないのだろうが。
ところでフランス以外のヨーロッパ各国のミシュラン3ツ星情報も、お知らせしよう。
まず一番変化があったのがイタリア。
96年版の3ツ星「アンティーカ・オステリーア・デル・ポンテ」(アッビアテグラッソ)、「グァルティエロ・マルケージ」(エルブスコ)が星を落とし、代りに「ドン・アルフォンソ1890」(サンターガータ・スイ・ドゥエ・ゴルフィ)が昇格。「ダル・ペスカトーレ」(カンネート・スッローリョ)は現状維持。つまり3軒から2軒に3ツ星が減った訳だ。
スイスはジラルデの引退にともない、3ツ星が1軒も無くなる。
ドイツは変化無く、デュッセルドルフの「イム・シッフェン」とバイエルスブロンの「シュヴァルツヴァルトシュツーベの」2軒である。
スペインは96年版のサン・セバスチアンの「アルザック」とサン・セローニの「エル・ラコ・カン・ファベス」に加えてロサスの「エル・ブ-リ」が新たに加わった。
イギリスはイングランドに4軒の3ツ星店があるだけだが、変化無し。
ベルギーも「デ・カルメリート」、「コム・シェ・ソワ」、「ブリュノー」の3軒で変化無し。