■2000年版「ゴー・ミヨ」 ●新しい「ゴー・ミヨ」ガイド2000年版が出版されました。発刊30周年の記念号で、ヨーロッパガイドと題されたフランス以外の国の主要23都市のホテル、レストラン、カフェなどを紹介する小冊子がついています。 巻頭の言葉で30年を振りかえり、伝統派と革新派の間の対立がうすれてきて、結局、食材の品質と正確な火入れとの組み合わせというあたりから、すぐれた料理についての合意が生まれると論じています。 このような時代の「動き」はレストラン業界においても表れているという話に至り、ビストロに通う客が高級レストランの洗練された食卓につくこともあり、プレスティージャスなレストランの顧客が、質素なテーブルを囲むこともいとわぬような時代が来た、アンドゥイエット(内臓のソーセージ)が、オマールやトリュフ入りのピュレよりも「まずい」とはもはや言えないと論を進めます。 そして、「さまざまなカテゴリーのレストランが、人生のいろいろな場面に応じて使い分けられるようになった」と結んでいます。 さて、いかがでしょう、ヨーロッパ「階級社会」の代表選手であり、同時に革命の国でもあるフランスの、美食ガイドというスノビズムの牙城の下したこの結論は?
●「今年のシェフ」として選ばれたのが、我々の学校の研修生もお世話になり、フランス校ナレ先生のお友達でもある、カンヌのホテル・マジェスティックのレストラン、『ヴィラ・デ・リス』のシェフ、ブリュノ・オジェ氏33歳。以前は『ジョルジュ・ブラン』のシェフをつとめていました。 ![]() ●「未来のグランシェフ」というコーナーでは、現在『プレ・キャトラン』のシェフである、フレデリック・アントン、ミシヤックのホテル・レストラン『ル・ブルテスク』のシェフ、ジル・シャルピ、研修生を送っているヴィシーのジャック・デコレ。彼はかつて『オーベルジュ・デ・シーム』で腕を振るっていたつわものです。そのほか。ミュラのレストラン『ジャルーセ』のステファーヌ・デュボワ、オンザンのレミ・ジロー、ラ・ロシェル近くエトレ『ヌーヴェル・メゾン・デ・ムエット』のジョアン・ルクレール、カルカッソンヌでフランス校の研修生もお世話になっている『バルバカーヌ』のフランク・ピュテラ、ディヴォンヌ・レ・バン『ラ・テラス 』のドミニク・ルエが選ばれています。 ![]() ●先ほどの8人以外で最高点の19点に評価されているのは、『マルク・ヴェラ』、『ラムロワーズ』、『ミシェル・ブラス』、『ル・グラン・ヴェフール』、『ラルページュ』、『タイユヴァン』、『ボワイエ』、『レスペランス』、そして、『ラ・ピラミッド』の9軒。今年の昇格は『ラムロワーズ』、『ボワイエ』、『レスペランス』、『ラ・ピラミッド』。『レスペランス』は、なんと「ミシュラン」では3つ星を剥奪されたばかりです。ちなみに、『ラムロワーズ』、『ミシェル・ブラス』、『ラ・ピラミッド』には、辻調グループフランス校から研修生を送っています。 ●18点の22軒中10軒が昇格組ですが、バイヨンヌの『オーベルジュ・ドゥ・ラ・ガリュプ』やパリの『ローラン』など気鋭の料理店に加え、トゥルニュの『グルーズ』が入り驚かされました。いまや絶滅寸前の上質な古典料理を作りつづけるフランス屈指のガンコなお店です。 昨年、評点をはずされた『ポール・ボキューズ』は、『トゥール・ダルジャン』とともに、「国際的な名声により評価外」という特別桟敷が用意されました。 もうひとつ、長く凋落を伝えられていたパリの名店『ラセール』の料理長に、元『リッツ』のミシェル・ロットが就任、評点は15点ながら前途を期待されています。ロット氏は、辻調グループ「エコール・キュリネール国立」の開校記念として、我々が91年に日本に招いた素晴らしい料理人。ご活躍をお祈りしております。 また、本年版から、時折、レストラン名の横にハートマーク?が。可愛い店の目印かと思いきや、凡例を見ると、「ゴー・ミヨの今年のトキメキ」とのこと。独英の解説には、「お気に入り」と味気ない翻訳がついておりました。お間違えのないよう。 |