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大阪の食文化は「出しと薄口醤油」に集約される

 大阪の食文化の特徴を一言で表現すれば「出しと薄口醤油」になります。

 まず、とにかく大阪の料理は、出しを吟味します。大阪の料理が旨いというのは、出しの旨さもあるんです。例えば「きつねうどん」で説明しましょう。きつねうどんそのものは全国どこに行ってもあります。非常に庶民的な食べ物として人気がありますね。でも、大阪のきつねうどんが美味しいと定評があるのは、麺そのもののおいしさというより出しのおいしさなんです。

 料理の味を決めるのに「出し」というのは大変重要なポイントになります。味付けをする場合、調味料の多い少ないの加減が大切なことは勿論ですが、土台となる「出し」の味が悪くては話にも何もなりません。その点大阪は、「天下の台所」といわれていたように、全国の優秀な食品が集められていましたから、出しを引くための材料も昔からありました。北海道の昆布、土佐の鰹節等は代表的なものです。

 また、一般に惣菜によく使われる煮干しでも、大阪湾で片口鰯が豊富に取れましたから、それこそ新鮮な鰯で作った煮干しが安価で手に入ります。煮干しの出しをばかにしたらいけませんよ。出しの取り方によっては、本当に美味しい出しが引けます。一般に市販されている「出しの素」のたぐいなんか問題になりません。煮干しの出しは、臭みが強いからと敬遠しているかたもいらっしゃるかもしれませんが、絶対に間違いです。ただ、取り方をいい加減にしたらだめですが。

 少し、煮干しでくどくなりましたが、とにかく、「 大阪の味は出しの味」なんです。

 また、出しを取る素材の中では特に昆布といういものが実は、大変重要な役割を果たしています。具体的に説明をしましょう。

 例えば昆布と鰹節で出しを取る場合ですが、あまり昆布の重要性を感じてない人が多いのではないかと思います。鰹節を吟味すれば昆布はどんなものでもかまわないと思っている方もいるでしょう。しかし、これは大きな誤解なんですね。何故かと言いますと昆布の旨みの成分と鰹節の旨みの成分がうまく調和したとき、そのときに何ともいわれぬ「旨み」がうまれるんです。わかりやすく言いますと、昆布の力で1足す1は2ではなく3にも4にもなるということなんです。煮干しで出しを取る場合でも煮干しのみではなく昆布といっしょに使いますと、さらに美味しい出しを取ることができます。

 次に薄口醤油の存在。醤油に薄口醤油と濃口醤油があることはご存じだと思います。ところで、薄口醤油というのはいつ頃から存在しているかご存じでしょうか。戦後? いや昭和の初め? とんでもない!今から300年以上前にすでにあったんです。その薄口醤油は、濃口に比べて色が薄いのを特徴としている醤油ですが、誤解のないよう念のためいいますと、味そのものは薄口醤油の方が塩分は強いんです。でも、ただ辛いだけでは問題ですので風味をよくするために甘酒がくわえてあるんです。その結果、濃口と比較して香りも押さえられ、色も薄くなったわけですが、その点が素材の持ち味や色を重要視する大阪や京都の人に大いに受け入れられ、料理の発展に大きく貢献したのです。この薄口醤油が存在したことが、関西の料理が洗練され、食べて美味しく見て綺麗な料理になった理由であることが、これでおわかりいただけたかと思います。




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