ーキ作りに紅い果物が無くなると何と寂しいことか。特に紅い果物を代表する、可憐で気品高い味わいの苺が無くなると・・・・・・。


本人がこよなく愛するはずである。我が国では、一つひとつ大きさも、色も揃えられ我が子のように、また宝石のように大切に箱に並べられて店頭に売り出されますが、ヨーロッパ研修当時、仕事場には朝市から運び込まれたもぎたての真赤に熟れた瑞々しい苺が、穫り篭にこぼれ落ちんばかりに無造作に盛られていました。その苺を赤子の手を拭くように、固く絞った濡れ布巾で丁寧に汚れをひとつずつ拭いて、一口大のタルトレット(TARTELETTE) に盛りつけていたことを思い出します。私にとっては、ヨーロッパで初めて手にした仕事だつたからです。


本で苺を使ったお菓子と言えば、真っ白なホイップ・クリーム、色鮮やかな苺、軽くしっとりしたスポンジを組み合わせた苺のショートケーキ を思い浮かべることと思います。日本人が作り出した最高のケーキであり傑作の一つだと私は、思ってはいるのですが。色、形は最高ですが苺の味が今一納得できないのが残念です。この苺のショートケーキに近いケーキ(ERDBEERSAHNEKREMTORTE)がドイツに見つける事が出来ますが、フランスで見つけることは至難の技です。 


ランスでは、ムスリーヌ(カスタードクリームとバタークリームを混ぜ合わせたもの)、スポンジ、いちごを組み合わせたフレジエ(FRAISIER)と呼ばれる苺のケーキが一般的です。 瑞々しい苺にこくの強いバタークリーム。水分と油脂分、組み合わせとしては合うはずがないと思っていた私に、衝撃を与えたお菓子の一つです。店でも、スポンジにキルシュ風味のシロップをたっぷり振りかけ、ムスリーヌを塗った上に、これでもかと言わんばかりに苺を縦にぎっしり並べ入れ、さらにムスリーヌ、スポンジと重ねて形を整え、冷蔵庫で一度冷やし固めてから、表面に上品なピンク色に色付けたマジパンを被せ、サイドから苺が見えるように大胆に切って丸く形を整えて仕上げる贅沢なお菓子でした。我々が口に出来るのは、売れ残りのものでしたが美味しいの一言でした。 最近では、野いちご(FRAISES DES BOIS)フランボワーズ(FRAMBOISE)も輸入されたり栽培され、鮮度の良い美味しいものが入ることを期待しております。








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