37 文屋朝康

 中級官吏だったようですが、生まれた年も亡くなった年もはっきりしません。日本 文学史において社会的な身分や地位では名は残りません。恋愛経験の豊富さこそ、文 壇に名を残すのです。なぜって、和歌の多くはラブレターだから…。和歌が上手=人 の心を捉えるのが上手=恋愛上手(!?)となるのです。この人物は『古今和歌集』と いう歌集ができる直前(800年代後半〜900年代前半頃)に活躍した人のようです。一説には、「六歌仙」として有名な文屋康秀(ふんやのやすひで)の息子ともいわれます。


 歌は上手なようです。
「秋の野原、風が辺り一面にさっと吹くと、葉の上におりていた露がぱらぱらと落ち てしまう。それはまさに糸のきれた真珠が飛び散るようだ」
歌の情景が目の前にさっと現れるような美しいことば。声に出して読んでみて下さい 。恋の歌ではないけれど、とぎ澄まされた感性を想わせます。透明感のある、少し肌 寒い秋の景色のひとコマでしょう。 これを和菓子にしてみると…。


重松 麻希

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