|作り方|


花さそふあらしの庭 花を誘って散らせる嵐の吹く庭
桜の花
雪ならで
雪ではない
ふりゆくものは
花が雪のように降る
             人間が年老いて「古くなる」


に吹き散られる落花で、庭が雪の降ったようになっているのを見てわが身の老いを嘆いた歌です。

の昔、山の桜の咲くさまを見てその年の稲のみのりを占ったそうです。桜は、稲の花の象徴でした。例年よりも早く散ると、その年の収穫にとっては悪い予兆でした。花が散るということは、人の心を不安にしたのです。美しいものが散るのを惜しむ気持ちの前に村人たちの禍福にかかわる切実な願望がこもっていたに違いありません。
普通、花といえば「栄え」「華やかさ」を象徴しますが、同時に「もろさ」「いつわり」「頼りなさ」あるいは、「不安」の象徴でもあります。この歌にも、そういう思いが込められているのでしょう。


回は、菓銘を「花吹雪」とつけました。全体として桜の花が春の風に舞い散るところをイメージして作りました。

表面のギザギザの波 春の風
染め分けた味甚羹の淡いピンク 桜花
雪が降ったように見える花びら
表面に散らしたピンクと白のいら粉 舞い散る花びら
を表わしています。

薯蕷羹を流し合わせ、山の芋の風味を生かして瑞々しく、口溶けのよいお菓子に仕上げました。

今成 宏





辻調グループ 最新情報はこちらから