父親が失踪し、一人自宅に残された千夜子が
ふと冷蔵庫を開けると、そこに一台のケーキが。




一言で言うとチョコレートのムースです。
底にはチョコレート風味のスポンジ生地が薄く引かれ、上にはオレンジのコンフィ(シロップ煮)とヌガティーヌ(熱いキャラメルと細かく刻んだアーモンドを混ぜて板状に固めたもの)が飾りに乗っています。
そしてこのケーキのポイントは、ムースに隠されたオレンジ風味のクレーム・ブリュレ。
クレーム・ブリュレとは、近年ちょっとブームにもなりましたが卵黄が多く入ったクリーミーなプリンのこと。
材料はオレンジの果汁と果肉、生クリームと卵黄、砂糖とコワントロ(オレンジ風味のリキュール)。これらを合わせて薄い型に流してディスク状にオーブンで焼き凍らせておきます。
これを型の高さの半分までムースを流した上に置き、その上に残りの高さのムースを流します。
食べる頃には凍ったクレーム・ブリュレが少し溶けていて、食べると滑らかな食感とオレンジの風味が口いぱいにひろがります。
上に乗っているオレンジのコンフィは、オレンジの果肉とオレンジピール(オレンジの皮のシロップ煮)をオレンジの果汁だけで煮たもの。砂糖を使って煮ていないのでさわやかな風味に仕上がっています。





ドラマで料理やケーキ類の制作の協力をするとたいてい一度はリクエストが出てくるのが「まずそうなケーキ(料理)」とか「失敗作のケーキ(料理)」を作ってください、といわれることです。

まあ失敗作のほうは、ケーキで言えばスポンジが上手く焼けなくて膨らまなかったりドラマでも出てきますが、焼き過ぎで黒焦げになったりと見た目でわからせるのは、割と簡単なのですが、
(料理でも、オムレツが壊れていたり、焼きすぎで焦げていたりというのはよくありますね)
先生方を悩ませるのは「まずそうな」というリクエストです。


テレビでは味は伝わりません。どんなものが「まずそう」に見えるのか。食べておいしくないケーキ、というのは多分作ることはできます。でも、テレビでは食べる前、見た目で「まずそう」ということが求められます。

で、今回先生方が考えたのが「色」と「飾り方」です。
バナナシューは飾り方を雑にしてしまったもの、あとから出てくる松吉さんの幻のコンテスト用ケーキは色のコントラストをちょっときつめにしてしまったものです。

先生方はいつもは「おいしいもの」「美しいもの」を作ることに慣れているので、こういうのが一番難しいようで、テレビのスタッフに試作品を見せては「もっとこう、まずそうになりませんか」といわれて苦労していました。

ところで、この「まずそうな」ケーキたちなのですが、吉村先生によると「どちらもすごくおいしかった」のだそうです。
特に「バナナシューはおいしかったですねえ」とのこと。何しろ、どのケーキも学校のレシピで作っているので、見た目がどんなにまずそうだろうが、味は抜群なのです。



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