トルテッリ
「土曜日の午後」アントニオ・タブッキ
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| 作り方
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トルテッリにイタリアン・パセリをたっぷり入れたチーズの詰め物をし、コクのあるトマトのソースとパルメザン・チーズと一緒に、層にして器に盛りつけます。
料理を再現した人 : イタリア料理専任教授 本多功禰
イタリアには詰め物をしたパスタが数多く存在します。それらはラヴィオリ、トルテッリーニ、カッペッレッティ、アノリーニ・・・などと呼ばれ、その形によって、あるいは同じ形であっても土地によって、呼び方が違います。
小説では「リコッタチーズ入りのラヴィオリ」となっていましたが、ラヴィオリとは詰め物をしたある特定のパスタを指す語であると同時に、詰め物入りパスタを総合的に指す語でもあります。今回再現した料理の出てくる箇所でも、日本語では全てラヴィオリと訳されていましたが、イタリア語の原文を見るとravioli(ラヴィオリ)とtortelli(トルテッリ)の2つの単語が使われています。
そこで料理を再現するにあたり、どの地方の、どのパスタかを特定する必要があると思われました。
小説の中で舞台となっている街がどこなのか、はっきりと述べられてはいませんが、本文に出てくる近郊の地名(ラ・スペーツィア、ラパッロ、フォルテ・デイ・マルミなど)から、リグーリア、トスカーナ、エミリア・ロマーニャの3つの州が接する付近であることは間違いなさそうです。
とりわけエミリア・ロマーニャあたりには、トルテッリと呼ばれる詰め物入りパスタを使った料理が他の土地に比べて多くありますので、その点からも、この小説に出てくる「ラヴィオリ」はエミリア・ロマーニャ州のトルテッリか、それに近いものと考えられます。
詰め物に使われた材料として具体的に小説に記述されているのがリコッタ・チーズだけでしたので、エミリア・ロマーニャ州の料理であり、リコッタ・チーズが主役の、シンプルなトルテッリを選ぶことにしました。
ローマにもリコッタ・チーズだけでできたラヴィオリがありますが、ローマ料理であること、形が違う(ローマのラヴィオリは四角く切り分けますが、本文には「貝の形をした型で、抜いていけばいい」とあります)ことなどから、この小説に出てくる料理には当てはまらないと判断しました。
作り方については、土地の伝統的な料理であると思いますので、『Le ricette regionali italiane(イタリアの地方料理のレシピ)』(Casa
Editrice SOLARES社)という本を参考にしました。 ここで再現したもともとの料理名は「Tortelli della
vigilia(イヴのトルテッリ)」で、「Turtlo'」と呼ばれることもあります。クリスマス・イヴなどの宗教的祝日には肉を食べないキリスト教(カトリック)の風習に従い、詰め物に肉ではなくチーズを使ったラヴィオリ(Ravioli
di magro)を食べたことから、このような料理名がついたのでしょう。 小説にはソースについては述べられていませんでしたので、上記の本の通り、バターをたっぷり使ったトマトのソースと組み合わせて器に重ね盛りにしましたが、溶かしバターとパルメザン・チーズで食べることも多いようです。
詰め物に用いるイタリアン・パセリは今回は茎が固くて葉だけを使用しましたが、本来は、特に家庭料理では、茎ごとでいいと思います。
ソースに加える砂糖の量は、玉ねぎの甘みやトマトの酸味によって加減が必要になります。仕上げでは多量のバターも混ぜ込むので、どちらかといえばトマトの酸味を生かした方がさっぱりとしたソースになります。
チーズやバターが、詰め物にもソースにも、たくさん使われるわりに、全体的にあっさりとした味に仕上がります。
『Le ricette regionali italiane』
(イタリアの地方料理のレシピ) |
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