っとフランスでの研修にも慣れ、これからと言うときにベルナション(M・BERNACHON)から「一度国外で研修したら」と言う話があり、『レストラン・ボキューズ』で働いていたケラー氏(KELLER)の店、オーバーベルゲン(Oberbergen)(ドイツ)の『シュバーツァー・アドォラー』(Schwarzer Adler)で研修させて頂くことになりました。

リヨンからはケラー氏の運転です。
途中、おかあさんらしい、優しそうなご婦人が同乗することになりました。彼女のレストランに帰るそうで、ケラー氏の店に行く道すがら、我々も立ちに寄ることになりました。

ストランは、小さな村に流れる川の畔にたたずんだ綺麗な店でした。ケラー氏の話では、料理はもちろん、デザートも素晴らしく大変おいしいと言うことです。

冗談でケラー氏は「ここで研修させてもらったら!」と言ってくれたのですが、その時はその言葉をあまり気に留めませんでした。その後も「田舎にも素晴らしいレストランがあるものだな〜!」程度で、お店のことも忘れしまいました。

ところが、フランスで研修を終えて帰る時、先代校長(辻静雄)と食べ歩きをご一緒させていただいたのですが、その時のレストランの一軒に、この『オーベルジュ・ドゥ・リル』(AUBERGE DE L´ILL)があったのです。

レストランの前に立った時、「一瞬何処かで見たレストランだなー」と思っていると、あの「田舎のレストラン」の記憶がよみがえり、あっと言う間に、田舎のレストランと目の前の現実のレストランが重なり合うのをひしひしと感じた事を思い出します。

あの時の私は、まだ『三ツ星レストラン』と言われるものを知らなかったのです。
今から思うと働かせてもらっていればと、悔やまれます。

て、ケラー氏の『シュバーツァー・アドォラー』では製菓店では経験出来ない、雨上がりのエスカルゴ捕りやホーレン草の芯とりなど、色々な経験をさせていただいた思い出があります。

そして、もっとも思いで深いのは「さくらんぼ」です。

この地域は黒い森(Schwarzwald)の南端に位置し、さくらんぼの季節ともなると、赤黒く色付いたさくらんぼが作業台一杯に積まれ、手や白衣を紫色に染めながら種を取ってピューレにする仕事が毎日でした。

このピューレは冷凍されて、一年中使用するソースやソルベに利用されます。

甘く、ほろ苦く、適度の酸味を持っているこのさくらんぼを使って作るクラフティは絶品です。









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