「秋の野」という言葉から、すすきや草葉の穂波が風になびき、黄金色に輝く晩秋の風景を思い浮かべました。かつて京都の大原を訪れた時、山里のすすきが見事なまでに穂を付け、風に吹かれ、きらきらと輝いている景色を見たからです。それはそれは美しく、今でもその情景をはっきりと覚えています。
歌のイメージと、私のこの経験から、お菓子を作りました。
きんとんのそぼろ は すすきの穂波
を
黄色の餡と粒餡 は 黄金色に輝く様子 を
錦玉羹(寒天のさいの目切り) は 白露(露のみずみずしさ) を
あらわしています。
さらに細かく裏ごしした薯蕷練切を全体に散らしました。風が露を辺り一面に吹き
散らした様子を、「きんとん」というお菓子で表現してみました。
きんとん餡には、菓子の趣旨によって、山の芋餡や百合根餡などもったりとした味
わいの様々な種類の餡があります。今回はできるだけ柔らかく炊き上げ、さっぱりと した白こし餡と、コクのある粒餡を合わせ、あっさりとした口溶けの良いものに仕上
げました。
定岡 宏和