日本料理



 

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盛りつけ
こつ 盛りつけの基本は三角形
解説
盛り合わせる材料が、二種類以上になると、日本料理では三、五、七……と奇数の取り合せをします。どんなに数が増えても、盛ろうとする器に三角形を描いてみると、盛りつけの構図が決めやすいものです。
丸い器の中では、三角形を描き、それぞれの頂点に料理を盛ります。正方形や長方形の器では対角線を引き、その線上と中央に盛ります。変形の器の場合も、やはり三角形を描いて盛ります。適当な余白を取って、それぞれの位置に盛りつけるだけなのですが、このように盛ると、きちんと改まった印象になります。これではおもしろくない、という場合には、一つを少しずらしてみるとよいでしょう。いわば、日本的な乱調の美です。
盛り合わせでは、材料の色もまちまちです。赤い色の食材は少ないので、三角形の上部や対角線の中央に盛ると、料理全体が引き立ってきます。

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盛りつけ
こつ 縁側に座って日本庭園を見る感じで
解説
日本庭園の美しさは、そのまま日本の美しさにつながります。縁側に座って庭園を眺めていると、日本人のすぐれた美意識をしみじみと感じます。敷石や苔があり、築山があり、さらに木立へとつながっていきます。この日本庭園に、一定のルールがあるのをご存じですか。それは、「手前から向こうへ高く」ということです。料理の盛りつけの中にも、このルールを取り入れて下さい。
例えば、まぐろの刺身は、大根のあしらいを向こうに高く、おろしわさびを手前に低く盛ります。たけのことふきならば、たけのこを向こうに高く、ふきを手前に低く盛るという具合です。盛り合わせでは、このとてもシンプルなルールを守れば、落ち着いた感じが出せます。すべての料理が同じ高さというのは、ベタ盛りといって、おもしろみがありません。日本料理では、立体感のある盛りつけを心がけて下さい。

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盛りつけ
こつ 大きなものから盛りつける
解説
食材を配置するときに、大きいものは向こう側に、小さいものは手前に盛るとバランスがよくなります。例えば、ぶりの照焼きを向う側に、大根おろしを手前に盛った皿を想像して下さい。大きいものは主役、小さいものは脇役です。
ここでおもしろいのは、西洋料理とは、盛りつけが逆になることです。器の上でナイフを使って切る必要があるかないかが、その理由かも知れません。どちらにしても、食べやすさを第一に考えます。パーティの料理で数種類の料理を大皿に盛る場合は、大きなものから盛りつけましょう。場所がなくなって全部を盛りつけできず、やり直すことにもなりかねません。小さいものの盛りつけは、比較的簡単にできるので、大きなものから盛って下さい。
盛りつけをするときは、器を体の正面におき、でき上がりのイメージを描いて、一気に盛ります。料理を盛りながら景色を作るというよりも、大体のイメージを持って盛り込むようにし、また、まな板の上やボールの中で、あらかた料理の形を整えてから器に移すということも盛りつけのコツです。
盛りつけは、器の外から始まっています。さらに器選び、材料の取り合せ、切り方などにもつながり、これらがそろって初めて盛りつけが成功します。

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盛りつけ
こつ 配色を考えて盛りつける
解説
日本料理が食材の豊富なことは、今さらいうまでもありませんが、色彩的にも変化に富んでいることは、注目すべきです。
料理がきれいに見えるという色が赤、黄、青、黒、白の五色です。それぞれに役割があります。赤色と黄色は食欲を増進させる、料理には欠かせない色です。でも、多く使いすぎると料理全体の品位を落としてしまいます。黒色は、全体の色調を引きしめる効果があります。白色は、そのもの自体は冷たい感じがしますが、雑然とした色調の盛りつけに使うと清潔感が出て、暑い時期には涼しさを演出するのに最適です。最後に青色(緑色)ですが、この色は、炊き合わせに添える木の芽とか、刺身のつまに使う海藻のように、すがすがしさを与え、配色にアクセントをつけるのに多用されます。「青味」という言葉がよく使われますが、この色を上手に用いると料理が上品に見え、いかにもおいしそうな雰囲気が出ます。手前に立てかけるようにしてよく目立つところに配置して下さい。青空と同じで、人を一番すがすがしい気持ちにさせる色なのです。

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盛りつけ
こつ 椀物はくずれないことが第一
解説
椀物というのは、単なる吸い物と違って、汁も具もたっぷりの料理をいいます。代表的なのは、お正月のお雑煮でしょうか。
最近料理屋では、最初の椀にこういった形のものを出しているところが多いようです。春の鯛の潮汁、夏の鱧椀などがその例です。魚の切り身や比較的大きめに切った具を数種類椀に入れるのだから、椀の中に盛りつけをしなくてはいけません。豆腐とわかめの赤だしの場合、椀に盛りつけるという考えはいりませんが、椀物では、この心構えが必要です。
椀の中には吸地が入るので、具が浮きやすくなります。また、運んでいるときにくずれることもあります。こうならないためには、どうしたらよいでしょう。まず、安定よく、大きなものから盛りつけます。小さいものは、手前におき、大きなものに立てかけるようにして下さい。吸口となる木の芽や柚子は、吸地をはったあとで添えて下さい。こうすると吸地がかからないし、色も変わりません。このようなことに注意しながら、椀盛りをして下さい。椀というのは、中心的な料理なので、特に気合いを入れて作って下さい。

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盛りつけ
こつ 主役がまん中
解説
日本料理には昔から、材料そのものに「位(くらい)」があります。「私はあなたの家来」「おれはお前の主人」だというふうに、上下が決まっているのです。このことを知らないと、盛りつけでも困ってしまいます。例えば、海の魚は、川の魚より位が上です。ただし、くじらは別です。
それから、海の貝が、川の貝よりも上に扱われます。いのししやけだものの肉の方を、鶏肉より上に考えます。魚介類、鳥獣肉と野菜類を比較したら、魚介類、鳥獣肉の方が上です。魚介類と鳥獣肉では、材料によって違いがあり、一概にはいえません。このように、材料には位があり、主役があれば必ず脇役があります。芝居と同じで、やはり、主役は一番目立つところに配置しなくてはいけません。ですから、盛りつけるときは一番目立つ所、まん中において下さい。脇役は、主役を引き立てるためのものですから、そのものが目立ってはいけません。

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盛りつけ
こつ 器の30%〜40%は余白にするつもりで
解説
盛りつけがうまくいかない原因に、量が多すぎることがあります。そんなときは、思い切って2/3くらいに減らしてみましょう。
家庭では、せっかくのおかずを残すともったいないと、つい一皿に大盛りにしてしまいがちですが、余白も料理のうちということを忘れずに。多く作ったらお代わりするようにしたり、残ったらその分を別の器に盛って出すのもよいでしょう。
器にもよりますが、だいたい六、七分盛りが美しく見えます。夏は余白が多いほうが涼しげです。特に深い鉢は、思ったより少なめにしたり、絵のある器では、絵を生かした上手な余白の取り方で、おしゃれな印象が生まれるものです。家庭のパーティでは、大きな器に葉などをあしらって、余白を効果的に演出するのも楽しいものです。とにかく、盛りすぎは料理の品をなくすので気をつけましょう。

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盛りつけ
こつ 季節で器を替えて装いも新たに
解説
一年中同じ器を使っていたのでは、おもしろくありません。日本には四季があり、服装も季節ごとに替えるのですから、同じように器も替えてはいかがでしょう。季節には、それぞれにふさわしい器があります。
デパートでも、季節ごとに変化をつけて販売しています。こういうものを見るだけでも目が肥えてきます。具体的には、春は寒い冬が終わり、ようやく暖かい季節の訪れということで、さわやかで明るい雰囲気の器がいいでしょう。夏ならばやはり涼感あふれる器でしょう。茶道の言葉に「夏はいかにも涼しきよう、冬にはいかにも暖かきよう」とあります。夏向きには、青磁、薄い染めつけ、ガラスを上手に使うとよいでしょう。秋には、渋めの感じの器はいかがでしょうか。秋というと、落ち葉、紅葉、実り、菊などが思いうかびます。一年中で食材が一番多く、料理も工夫を凝らしやすい時期です。日本料理を表現するのに一番よい時期でしょう。それだけに器も種類多く出回ります。最後に冬ですが、とにかく「暖きように」ということですね。具体的には、やや厚手の楽、志野、織部、萩などがよいと思います。 一人前の小鍋なども温かさの演出には効果的です。どうぞ、季節感がある器を使って下さい。頂く方はもちろんのこと、作り手にも料理に意欲がわいてきます。

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盛りつけ
こつ 深い器にはこんもりと盛る
解説
あえものやお浸しは、円すい状にこんもりと盛ります。この形が単品を盛るときの基本です。例えば、切り身の焼き魚は、順々に積み重ねて全体がこんもりとした姿になるように盛ると、安定感があります。
刺身も、いかやさよりなど細造りのものは、こんもりとか、つんもりといった印象に盛り、鯛などそぎ造りのものは、交差するように順々に重ねていきます。
材料の形がいろいろな煮物を盛るときは、ひと山にざっと盛ったあとで、それぞれの向きや色のかたよりを直すといいでしょう。のり巻やようかんなどのように形のしっかりしている場合は、俵を積むように盛りつけます。とにかく、ベタッとさせないよう、いつも、小高くこんもりと盛るということを心がけて下さい。そして、空間をあえて作るように盛って下さい。そうしないと、料理がおいしく見えませんから注意しましょう。

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盛りつけ
こつ 角には丸、丸には角が基本
解説
西洋料理の盛りつけは、合理的、対称的、平面的なのに対して、日本料理は情緒的、非対称的、立体的であるといわれます。アンバランスの中に、流動感のある安定を求めるのが、日本料理の盛りつけの根本的な考え方といえます。
この美しさは、例えば、直線と曲線の対称などによっても生まれます。
四角い器には、まろやかな感じの料理を盛り、円形の器には、どこか直線的な料理を盛ります。器も料理も、同じような形の取り合わせでは、少しもおもしろみがありません。日本料理は器の美しさを観賞しながら、料理を賞味します。
したがって、器の紋様、色調、絵柄などを生かして盛りつけ、料理と器が調和し、お互いに引き立て合うようにするのが最高の盛りつけといえます。日本料理の調和の美しさは、直線と曲線の組み合わせによって生まれているのです。