プロの隠し技

日本料理




   

キーワード

盛りつけ
こつ 木の葉一枚で季節を表現
解説
日本料理が他の国の料理と明らかに違う点として、盛りつけに木の葉を使うことがあります。「こんな食べられないものを、なぜ、料理に使うのか」という人もいるようですが、その理由は簡単で、季節感を表現するためです。
日本料理は、とにかく一目見ただけで、ああ春の料理だな、夏の料理だなと分からなければいけません。そのために木の葉を使うのです。これを「皆敷き(かいしき)」といいます。
まだ、器というものがなかった時代、柏(かしわ)のとか朴(ほう)など大きめの葉を手にのせて、器のとして使っていました。それが今でも残り、季節を表わす重要な要素として使われているのです。具体的には、松・梅・桜などの枝、しょうぶ、かえで、笹や菊の葉、紅葉、南天、椿の葉、裏白、金柑・柿・蓮の葉などいろいろあります。料理の下に敷いたり添えたりしますが、使い過ぎにならないように注意して下さい。主役は料理ですから、ちょっとあしらうという程度に使うのがコツです。

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盛りつけ
こつ たき合わせのかけ汁は薄味のものを
解説
「たき合わせ」とは、異なる材料をそれぞれの持ち味を生かすような味つけの煮汁で煮て、盛りつけるときに一緒に盛ったものです。彩りや材料の組み合わせを考えて、材料を取り合せます。
料理屋では、煮物というと、この炊きあわせの形を取ります。一つの器の中で複数の味を楽しむことができ、見た目にもきれいに仕上がります。
春なら代表的なものに若竹煮があります。これは、わかめとたけのこの炊き合わせです。木の芽を添えれば完ぺきです。盛りつけの最後に、煮汁をかけるのですが、どの煮汁をかけたらよいでしょう。かける煮汁は、煮たものの中で一番味の薄いものをかけると覚えて下さい。そうすれば、全体の味が変わってしまうことはありません。

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盛りつけ
こつ 盛りつけは箸と手を同時に働かせる
解説
料理は、器に盛りつけるという最後の仕上げをして完成します。この盛りつけというものは、簡単なようで、実は大変難しいのです。
盛りつけを、手ですることはありません。必ず、箸を使います。衛生的で、盛りつけしやすいからです。
では、箸を持っていない方の手はどうしたらよいでしょう。使わないのではなく、そっと料理に添えて下さい。箸がふれている料理を、横から支えるような気持ちで使うのです。 こうすると、途中で料理を落とすこともなく、はたで見ていてもきれいです。 箸と手を同時に動かすこと、これが盛りつけの基本です。
余計なことかもしれませんが、最近、私たちの学校でも、箸を満足に持てない者が入学してきます。試食のときにすぐ分かります。何となくぎごちないのです。こういう生徒には、箸の持ち方から練習させます。料理どころではありません。きちんと箸が持てること、あずき一粒でも、箸でちゃんとはさめなければいけません。自信のない人は、今すぐ練習して下さい。

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盛りつけ
こつ 煮つけの汁はタップリかける
解説
魚の煮つけ、中でも白身魚の場合、魚に火が通ればでき上がりです。野菜と違い、身の中まで味を入れるような煮方はしません。火が通っても煮続けると、魚のうま味がどんどん煮汁に出てしまい、身はかたくしまってきます。だから、中心まで火が通ればでき上がりとし、器に盛ったとき、煮汁をたっぷりかけます。煮汁をつけながら食べるようにします。
背の青い魚、さば、あじ、いわしの場合は、火が通ってもしばらく煮ます。これらは、ほとんどが身が柔らかいので、そんなにしまることがないし、クセをぬくために、少し煮詰めるような気持ちで火を通します。もちろん、器に盛ったときに煮汁をかけて下さい。どちらの場合でも煮汁をつけながら頂きます。

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盛りつけ
こつ 料理が複数のときは変化をつける
解説
おもてなしの料理は、やはり何品か出すことが多いでしょう。いくつかの料理を出す場合、注意してほしいことがあります。簡単にいうと「変化をつける」ということです。もてなされる側があきないようにするのです。
具体的には、まず、味に変化をつけます。同じような味つけのものばかりだとあきますね。醤油味があれば酸味もあり、甘いものも苦いものもあるというふうに工夫して下さい。
次に、料理法で変化をつけます。日本料理は、五法といって生・煮る・焼く・蒸す・揚げるという料理法があります。これらをすべてする必要はありませんが、上手に組み合わせてほしいのです。 煮たものばかり、焼いたものばかりにならないようにということです。
そして最後に、器に変化をつけます。 目を楽しませることを、日本料理ではとても大切にします。舌も目も満足してもらうのです。そのためには、配色を考えて盛りつけたり、器の感じを変えたりします。日本には外国と違い、デザイン、色、材質どれをとっても多くの種類の器があります。材質を例にとっても木製、竹、ガラス、陶器、磁器、金属という具合です。 フランス料理がすばらしいといっても、器では、日本料理ほどの変化はありません。形は大半が丸で、ほとんどが磁器ですね。このすぐれた日本の美的感覚を、料理に生かして下さい。器にできるだけの変化をつけるのです。形、色、材質などいろいろ工夫を凝らして下さい。高価な器がいいのではありません。いろいろなところで変化をつけて、もてなされる側に楽しんでもらうのが、本来のおもてなしだと思うのです。

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盛りつけ
こつ 揚げ物は30秒以内に盛りつける
解説
揚げ物は、特に時間との戦いです。いかにして揚げたてを食べてもらうかをよく考えないといけません。冷めた天ぷらというのはおいしくないですね。揚げ物で盛りつけに使える時間は、どんなに長くても30秒です。ああでもないこうでもないと悩んでいるうちに、料理はどんどん冷めていき、敷紙に油がにじんでいきます。少しくらい盛りつけの形の悪いのは、この際、気にしないことです。
形よりも味を優先して下さい。揚げ物の出し方の理想は、揚がればすぐに、食べる人の前に出すことです。
料理屋のようにカウンターでもあれば、できることですが、家庭ではむずかしいですね。でも、とにかく、早く出しすよう心がけて下さい

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盛りつけ
こつ 身を表にして盛る魚のこと
解説
切り身にした魚を盛りつける場合、皮を表側にします。しかし、これは原則で、開いた鰻、穴子、はもの場合は身側を表にします。これらの魚にはにうろこがないので、自分の身を保護するために、他の魚に比べて皮の部分が大変厚くなっています。だから、焼く場合、かなりしっかり火を通さないと、ゴムをかんでいるようで食べられません。しっかり焼き、ましてたれをかけると、皮の部分が黒くなり、見栄えが悪くなります。だから、身を表にします。要するに見栄えの問題です。
うろこのある魚は、皮の部分は薄い(といっても生では食べられませんが)ので、それほど焼かなくても食べられます。

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盛りつけ
こつ 魚の一尾づけは頭左で腹手前でよい
解説
「川背海腹」という言葉があります。これは、姿焼きにした魚を盛りつける場合、川の魚は背を手前に、海の魚は腹を手前に盛りつけるということです。理由は、川の魚と海の魚を区別するためなのですが、今でも、この通りに盛りつける店もあります。しかし、あゆの塩焼きは、海の魚と同様に頭を左で腹を手前にするところがほとんどです。
やはり、見た目にも頭を左で腹を手前にした方が、自然です。魚の絵を書いて下さいというと、ほとんどの人が、頭を左で腹を手前に書くでしょう。この方が無理がないようです。
家庭の料理では、古いやり方にこだわることはありません。食べやすいということ、きれいに見せるということを頭おいて料理して下さい。

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盛りつけ
こつ 人数盛りは数をチエックして
解説
日本料理でも宴会のとき、大皿にオードヴルの盛り合わせのようにします。数種類の料理を人数に合わせて盛りつけるのですが、そのとき、注意をしなくてはいけないのが数のことです。ものによって、一人一切れのものがあったり、一人二切れのものがあったりするのはいいのですが、人数分で割り切れないようなものはよくありません。注意して仕込み、また、盛りつけて下さい。

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盛りつけ
こつ 冷たいものはより冷たく、熱いものはより熱く
解説
このことは、料理するうえでとても重要なことです。 料理の一番の基本であり、絶対に守らなくてはなりません。
冷たい料理、例えばお刺身です。これは、冷たいものと決まってます。暖かいものは、ありえません。理由は、暖かくなれば、生魚の臭みが出て食べられなくなるからです。だから、刺身は冷たい状態で提供しないといけません。そのために、氷をくだき、器の底に敷き、ここに盛りつけるのも一つの方法です。氷で冷やすのは一番簡単ですぐにできる方法です。
逆に、熱い料理であれば、より熱い状態で出さなければなりません。冷めかかったものは、味が半減します。では、熱い料理を冷めにくくするにはどうしたらよいでしょう。椀は一度湯をはり、温めたものを使うのです。焼き物を盛りつける器は、やはり湯にくぐらせて温かくして使います。料理の演出として、一人前のこんろを使って煮ながら食べてもらうのも喜ばれます。 冷たい料理は冷たい状態で、熱い料理熱いまま出せるように努力して下さい。それが、料理の真心です。




 

















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