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うなぎのパテ

「うたかたの日々」ボリス・ヴィアン
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| パイケース | 詰め物 |


白ワインで煮たうなぎに、とことんコクがでるまで煮詰めたソース・エスパニョルをからめてパイケースに盛りつけた料理。19世紀後半の料理書より再現したもの。
(Sauce・espagnole=ソース・エスパニョル)






料理を再現した人 : フランス料理主任教授 西川清博

この料理は、1867年に刊行された『料理の本』の原書に準じて再現したもの。著者ジュール・グーフェは1807年パリ生まれの料理人で、お父さんは菓子職人だったんです。父親の店のショー・ウィンドウの作品を手がけていて、17歳のときにあの偉大なカレームに見出されたんですよ。その後ナポレオン3世の晩餐会でもたびたび活躍したというから、その腕前の素晴らしさが想像できますね。1877年に亡くなるまでに『保存食の本』『菓子の本』『スープとポタージュの本』を出しており、今回再現した『料理の本』はブルジョワ家庭の料理と高級料理の双方を扱った著作で何度か版を重ねています。実際にこの本を手に取ってみると、手の込んだ飾り付けをした料理の挿絵がカラーで何点も載っていて、「装飾的料理の使徒」という彼のあだ名になるほどなあっていう気がするんです。

この「うなぎのパテ」は、「うなぎのパイケース盛り」と呼ぶ方がより正確ですし、わかりやすいでしょうね。いわゆる一般的なパテ、つまり詰め物をパイ生地で包んで焼き上げるものとは違って、生地だけをケースとなるように別に焼いておき、平行して中に入れるうなぎを調理して、両方出来上がった所で温かい状態のケースにうなぎを盛りつけているんです。このような盛りつけでも、フランス語の料理名はパテ・ダンギーユとなるので、料理名を見ただけでは仕上がりが想像できませんでした。

このパイケースの作り方が、また変わっているというか、独特だったんで驚いているんです。パテ用の型に生地を敷いたあとで、中に小麦粉を型一杯まで詰めてオーヴンで焼くんです。この生地に火が通ったらオーヴンから取り出して、中の小麦粉は捨ててしまう。

もっと小さなパイケースの場合、例えば、お菓子のタルトなどのケースを前もって空焼きしておくときなどに、底の生地が浮き上がってくるのを防ぐために小豆やタルトストーンなど(フランスではサクランボの種を使うことが多いようですが)を重しとして使いますが、これと同じ原理で、10cmほども深さのある大きなパイケースなので、底に重しをするだけではなくて、底の生地も側面の生地も浮き上がったり、膨らんだりしないようにする工夫なんでしょうね。今までこんなやり方は見たことがなかったので、結構勉強になったな、と思っています。






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