荷物を部屋に置き、すぐに外へ出た。今から市内へ向かってもすぐに日が暮れてしまいそうだったので、とりあえずホテルから続く道沿いに足を進めてみた。ホーチミンとの違いは、まず人々の服装で、アオザイを着ているのはホテルやレストランで働く女性くらい。一般に外で働いている人は気温が低いためか、厚手のジャンパーかウインドブレーカーのような服装が多い。それにマフラーを首に巻きつけている人も見かける。次に感じたのは食べ物屋の数が比較的少なく、道路までテーブルを広げている店がほとんどなかった。
さらに足を進めて行くと、路上で炭火をおこし何か揚げ物をしている女性がいる。しばらく眺めていると、14~15cmくらいの靴底のような形をしたものに天ぷら粉をまぶして油の中に入れている。おそらく魚の切り身でも揚げているのだと思っていたら、子連れのオバサンが自転車に乗ってその天ぷらを買いにやって来た。私たちを見て外人だと察したのだろうか、英語か仏語かわからないような言葉でバナナだと教えてくれる。試しに1枚だけ買って食べてみたが、これがなかなかいける。ちょっと固めに揚げたバナナのベーニェといった感じで、生地の中に片栗粉のようなものが多く入っているように思えた。それに生地は色粉のようなもので少し赤く染められ、かじるとカリッとした衣にバナナの柔らかくて自然な甘みが口いっぱいに広がる。この揚げ菓子の名前は と呼び、1枚 Dong800 ≒ \8 。
さらに歩くと今度は「 ](米粉で作った麺で、北部が本場)の看板が目についたので、牛肉入りのフォーと鶏肉入りのフォーを食べてみた。腰のない麺に刻んだ葱と香菜、それに味の素をたっぷり、さらに寸胴で煮込んでいる鶏のスープを注ぐ。これに薄切りの牛肉(麺を温めるように水切りに入れ、煮込んでいるスープの中で火を通す)か、ゆでて細切りにしてある鶏肉をたっぷりとのせる。南部ではモヤシを入れるが、北部では入れないのが一般的であるようだ。さらに好みで、酢(南部ではレモンを絞る)とすりつぶした唐辛子のペーストを混ぜて食べる。1杯Dong 4,000 ≒ \40。


このあと市場をのぞいてみたが、素材としてはあまり変化はなかったが、ホーチミンでは見かけなかった野菜として「ディル」を見つけた。それと鶏やアヒルを絞めて羽根をむしっているオバサン達を見たが、もうこの頃には慣れっ子になってしまっていた。
|