さてホテルを出発して、最初に目指すのは5区にあるチョロン地区。ここは華僑が多く住む地域で、この街の西はずれに大きなビンタイ市場がある。もともとチョロンとは「大市場」という意味があるらしく、この辺りの住民の台所といった感じがする。中央入口の時計台の上には龍の装飾が施されており、まるで寺院と駅を合体させたような建物である。中に入ると2階建てで、中庭を囲むように売り場が所狭しと並んでいる。一件の間口はせいぜい2mほど、よくこれで商売ができるなと思うほどのスペースしかない。山と積まれた雑貨屋さん、アオザイ用の布地店、食器屋など見事である。これで火事にでもなれば大変な出来事になるのは間違いない。 さらに足を進めて食材売り場の方に向かうと、鶏やアヒルの鳴き声が聞こえてくる。しばらく足を止めて、鶏を絞めているオバサン達の作業を見ていた。ある人は足で鶏を押さえて首を切り、その横では熱湯に浸けた鶏の羽根をむしるオバサン。またきれいになった鶏の内臓を抜き取って、肉をさばいているオバサンなど、ごく普通に日常的にそれぞれの作業をこなしているのが印象に残る。もちろん、冷蔵庫がまだまだ家庭の中に浸透していないし、日本やアメリカのようにブロイラーを食べる習慣のない彼らにとって、このような光景は当たり前のことだと思う。
市場の周りには XE LAM (セ・ラム)と呼ばれるオート三輪を改造したような小型バスというかタクシーが多く見られ、市場の買い物客とその荷物を運んでいる。
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