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料亭「八百善」について

杉浦
今、関東料理のお店というのはほとんどないような気がします。

永山
僕がよく行く銀座の日本料理店でも京都の料理を出します。日本各地で「江戸前料理」という看板を出しているところを見かけますが、あれは誤解しています。江戸前料理というのはもともと江戸の前海の素材を使った料理という意味なんです。江戸前料理の看板を出すことによって、新鮮な料理ということを示したいのでしょう。そうすれば、お客さんが喜ぶという考え方があるからなのでしょうけどね。
江戸前料理で一番有名なのは八百善さんですね。

杉浦
八百善さんが出されているのは、今でも江戸料理なんですか?

永山
そうみたいです。

杉浦
江戸料理というのは非常に手の込んだものだとよく聞きます。例えば魚の身をすり身にした後でいろいろ手を加えて調理するといったふうに。

永山
手の込んだものもありますが、基本は素材の味を生かすということでしょう。そういうことはわきまえて出されているのだと思います。
材料によっては、つぶしたときにより強く味を感じるものがあるのではないでしょうか。食べ物のかたまりを舌の上に置いただけでは味はあまり感じない。しかし、噛んで液体にすることでその中に含まれている味の物質が分解されて舌の味蕾細胞に吸収されやすくなるのです。噛まなかったら味などは分からないですよ。だから、物によってはすり身にして素材の味を感じやすくさせ、おいしさを引き出す工夫をしたのでしょう。
素材の目利きということが料理人にとって一番大事な資質です。有名な話があります。金持ちの旗本が八百善でお茶漬けでも食べようかといって上がったんです。とてもおいしかったが、小半時(約1時間)も待たされた挙げ句、代金がとっても高かった。どうしてかとたずねたら、茄子はこうこうこういう茄子を使って漬けて、水は多摩川から汲んできたというのです。そのくらいこだわっているのです。そして、お客の方にもそれを待っているだけのゆとりがありました。待たされたことに対して怒るのではなく、理由を聞いて納得できる懐の深さがありました。こういう話を聞いていると、料理というのはお客さんが育ててゆくんだなぁとつくづく思いますね。

 

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江戸料理の本質に迫る