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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
濡れ手で粟
濡れ手で粟 濡れ手で粟
解説

「濡れ手で粟」
濡れた手で粟をつかめば、粟粒がたくさんくっついてくることから、何の苦労もなく利益を得ることのたとえ。
 神社などで神官の祝詞の中に「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」という言葉を耳にすることがある。この「五穀豊穣」の五穀とは古代から人々に常食として食べられていた5つの穀物で、米・麦・粟・黍(きび)・豆(小豆・大豆)を表しており、本によっては黍であったり稗(ひえ)であったりもする。すなわち「五穀豊穣」とは、これらの五種類の穀物の収穫祈願ということである。

 今回のテーマの粟はこの五穀の一種で、イネ科の植物である。淡い(あわい)味なのでこの名がついた。近年の日常生活では口にすることが少なくなり、小鳥の餌などに使われているが、食品としては食物繊維やビタミンB1、B2を多く含み、近頃話題のマクロビオティックなどで注目されている。

 日本料理では、粟に材料を包み込んだり被せたりして蒸し上げる「粟蒸し」や、生麩に粟を練りこんだ「粟麩」を使うことが多い。また、大阪には大阪名物といわれる「粟おこし」というお菓子がある。これは、蒸して乾燥させた米を炒って、糖蜜で固めたお菓子である。私は、どこか地方に出かけるときは、手土産としてこの「粟おこし」を持参することにしているのだが、このお菓子は「粟」と言いながら米が原料なのである。

 おこしは、平安時代初期に中国からお菓子として伝わってきた「唐菓子」のひとつ、「おこしごめ」が元祖と言われている。その後、室町、鎌倉時代を通じて広まり、特に江戸時代後期には広く各地で作られるようになった。その中でも有名になったのが大阪の「粟おこし」である。江戸時代の大阪は、日本の経済の中心地として、日本諸国の物産が集中していた。特に米は米相場が起ち、全国の米が集まってくるとともに、米問屋が数多くできた。その大阪で、ある商人が、米を粟粒のように細かく砕いて糖蜜で固め、それまでの団子状ではなく、現在のように薄く延ばして板状にした「粟おこし」を売り出した。これが大いに評判を取り、多くの店で作られるようになった。米粒を粟のように細かく砕いた、故に「粟おこし」なのである。

 先日、阪神タイガースがリーグ優勝した際に、タイガースファンが次々とダイブしようとした道頓堀川の周辺は、当時から芝居小屋が多く並んでいた。粟おこしは、芝居見物の時の食べ物として、現在の若者が映画を見るときにポップコーンを頬張るように重宝され、浪花名物として現在まで庶民に親しまれてきたのである。
 市販されている「粟おこし」の包装紙には梅鉢の紋が描かれていることが多いが、これは菅原道真が京都から大宰府に流された時に、村民が米を飴で固めた「おこし」を差し上げると、道真は大変喜び、自分の着物の家紋の入った小袖を引きちぎって与え、お礼を言ったそうである。この逸話から「粟おこし」の包装紙に梅鉢の紋が描かれるようになったと言う説がある。

 大阪名物には「粟おこし」のほかに、「岩おこし」と呼ばれるものがあるが、これは「粟おこし」の米粒をさらに細かくして、「おこし」全体を隙間なく硬く仕上げたものである。現在では、蜜に上白糖以外の甘味料を使われたり、胡麻やピーナッツと言ったものを混ぜたり、生姜やバター、カラメルなどで風味付けされたものまで多種の「おこし」が市販されている。
 東京では、同じ要領で作られるお菓子に「雷おこし」がある。江戸時代後期に浅草の雷門の門前の露天で販売され、浅草寺の観音様の参拝に欠かせない土産物になったと言われている。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 粟蒸し

タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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