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これから度々話の舞台となるのはオッフェンブルク(Offenburg)。ドイツの西南部のバーデン・ヴュルテンベルク州でも西の端、ライン河とシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中間に位置する街です。この街に在住している辻調グループ校の卒業生(そして元職員)が、独断と偏見(?)を時に交えながら、食文化を中心とした情報をお届けします。
ビールの原材料 〜ビール(其の壱)〜

醸造所直営のビーァシュトゥーベ(Bierstube)の入り口

醸造所直営のビーァシュトゥーベ(Bierstube)の入り口

  ドイツ国内には、大小のビール醸造所(Brauerei:ブラウァライ)が多数ある。そこでは、現在でも約500年前に制定された「ビール純粋令」に則って、ビールが醸造されている。
  今回は、麦芽、ホップ、水や酵母などのビールの原材料と、麦汁エキス濃度(Stammwürze:シュタムヴュルツェ)によるビールの等級分類について紹介する。



★ビール純粋令(Reinheitsgebot:ラインハイツゲボート)

5リットルの樽の側面には、ドイツのビール純粋令に基づいて醸造そして原材料:醸造用の水、大麦麦芽、ホップの文字が・・。

5リットルの樽の側面には、
ドイツのビール純粋令に基づいて醸造
そして
原材料:醸造用の水、大麦麦芽、ホップ
の文字が・・。

  1516年4月23日に、バイエルン候のヴィルヘルム4世により公布されたのが、「バイエルン・ビール純粋令(Das bayerische Reinheitsgebot)」。これは「ビール醸造の際には、大麦、ホップ、水以外は使ってはならない」というもので、16世紀半ばに酵母が加えられた。後に例外として、小麦ビールの醸造には小麦麦芽を使用することが認められているが、その他の添加物は認められていない。
  尚、この「バイエルン・ビール純粋令」は1906年に「ドイツビール純粋令(Das Deutsche Reinheitsgebot)」として受け継がれ、法制化された。現在も有効な食品規制としては世界最古の法令である。


★ビールの原材料(Zutaten : ツーターテン)
◆麦芽(Malz:マルツ)

小麦麦芽を使用したヴァイツェンビーァ(Weizenbier)各種。

小麦麦芽を使用したヴァイツェンビーァ(Weizenbier)各種。

麦芽(モルト)
  麦を洗浄し、吸水させた後、発芽、乾燥させ「麦芽」にして使用する。麦が発芽するときに作られる酵素が、穀粒の中に含まれるデンプンやタンパク質を、発酵に必要な糖分やアミノ酸に変える働きをするからである。
  麦芽を焙燥する際の処理の違い(温度や時間など)によって、同じ麦からでも違うタイプのモルトを作ることができ、ビールの色合いや風味、芳香に大きな影響を与えている。
  ビール醸造には、基本的に大麦麦芽が使われるが、小麦ビール(Weizenbier:ヴァイツェンビーァ)には、小麦と大麦の麦芽が併用される。

大麦
  ビール醸造に使用される大麦(Gersten:ゲルステン)は、主に春播種の「二条大麦」で、別名「ビール大麦」とも呼ばれている。
  殻粒が大きく、形が揃っていて、殻皮が薄いこと、発芽力が高くて、麦芽にした際の酵素力が強いことが、良いビール大麦の条件である。そしてデンプンの含有量が高く、タンパク質の含有量が適当(過多の場合麦芽エキス分の低下やビールの香味・安定性に悪影響を与える)であることも重要である。

◆ホップ(Hopfen:ホプフェン)

  ホップは、アサ科の蔓性の多年生植物で、雌雄異株である。ビールの原材料として使用されるのは、この雌株に付く淡緑色のマツカサ状の毬花で未受精のもの。雌花の受精を妨げる目的で、雄株は畑から取り除かれる。収穫期は8月末から9月初旬である。
  ビール醸造において、ホップは爽快な苦味と独特な香りを与えるという、非常に重要な役割を果たしている。苦味成分となるアルファ酸を多く含むタイプのビターホップ(Bitterhopfen)と、発酵や熟成の過程で生じるエステルなどの成分と共にビールの香りを演出する、油分を多く含むアロマホップ(Aromahopfen)があり、それぞれのビールに合わせて使い分ける。また泡持ちを良くしたり、雑菌の繁殖を抑えたりする効果もある。
  ドイツでの作付面積が一番大きいのは、ミュンヒェンの北に位置するバイエルン州のハラタウ(Hallertau)で、これに次ぐのがボーデン湖の側のテットナンク(Tettnang)である。


◆水(Wasser:ヴァッサー)

ビール瓶の内容量は、0,33リットルと0,5リットルが一般的。季節によっては、5リットル入りの樽も販売される。

ビール瓶の内容量は、0,33リットルと0,5リットルが一般的。季節によっては、5リットル入りの樽も販売される。

  ビールの成分の約90%は水分である。そのため、水質はビールの品質に大きな影響を与える。ドイツの水はカルシウムやマグネシウムなど、ミネラル分を豊富に含む硬水である。ビール醸造に使用する水は、一般の飲料水規格だけでなく、それ以上に厳しい独自の規格に適合することが求められる。自然に含まれている塩分や石灰を取り除くなどの加工(例えば水の軟化)は可能だが、ミネラル分の添加は禁じられている。
  原材料としては勿論、洗浄や冷却にも使用するために、ビール醸造には多量の水が必要である。1リットルのビールを製造するのに、6〜25リットルの水を要するという。殆どのビール醸造所が、敷地内に独自の地下水源(Quelle:クヴェレ)や井戸(Brunnen:ブルネン)を持っている。


◆酵母(Hefe:ヘーフェ)

  ビール酵母は、麦芽とホップ、水から造られた「麦汁(Würze:ヴュルツェ)」と呼ばれる発酵前の液体を、「ビール」に変える働きをする微生物である。麦汁中の糖分をアルコールと炭酸ガスに分解するだけでなく、有機酸やエステルなどの香味成分も生成する。酵母の種類によって、ビールに香りと風味の個性が生まれる。ビール酵母は、「上面発酵酵母」と「下面発酵酵母」とに大別される。

上面発酵酵母(Obergärige Bierhefe:オーバーゲァリゲ・ビーァヘーフェ)
  上面発酵酵母は、15〜20℃で短期間に力強く発酵する。発酵の最中に炭酸ガス共に液体の表面に浮上する性質を持っている。ドイツの地下室の常温よりも高い温度で発酵するので、一年中醸造が可能である。発酵と熟成が速く進むために、長期貯蔵には向かない。上面発酵ビールは、フルーティな香りが特徴である。

下面発酵酵母(Untergärige Bierhefe:ウンターゲァリゲ・ビーァヘーフェ)
  5〜10℃という比較的低温で緩やかに発酵し、発酵後期に酵母が発酵タンクの底に沈殿することから下面発酵酵母と呼ばれる。低温で長期の熟成期間を要するが、長期保存が可能である。その昔は、寒冷地で冬期(秋から春にかけて)だけ下面発酵ビールを醸造して、穴蔵で貯蔵していた。夏場には、気温が高くても製造可能な上面発酵法でのみ醸造されていた。19世紀半ば頃から、冷蔵や低温殺菌、酵母の純粋培養などの技術向上により、四季を通じて下面発酵での醸造が可能となった。そして現在では、すっきりした味が特徴の下面発酵ビールが主流となり、世界の生産量の9割を占めている。


★ビールの等級分類(Biergattungen : ビーァガットュンゲン)

  ドイツのビール等級は、麦汁エキス濃度(Stammwürzegehalt:シュタムヴュルツェゲハルト)によって分類される。

  等 級 分 類 麦汁エキス濃度
Einfachbiere アインファッハビーァ 1,5 〜 6,9%
Schankbiere シャンクビーァ 7,0 〜 10,9%
Vollbiere フォルビーァ 11,0 〜 15,9%
Starkbiere シュタルクビーァ 16,0以上

ベルリーナー・ヴァイセのラベルには、SCHANKBIERの文字が・・・。

ベルリーナー・ヴァイセのラベルには、SCHANKBIERの文字が・・・。

  麦汁エキス濃度は、発酵前の麦汁に含まれる糖分やタンパク質、アミノ酸、ビタミンやミネラルなどの、大麦麦芽とホップから抽出されたエキスの麦汁全体に対する割合を示すものである。
  その麦汁エキスの濃度に比例して、税金が高くなる仕組みになっている(大抵の場合、麦汁エキス濃度が高い程、発酵後のビールのアルコール度数も高くなる傾向にある)。
  例えば、首都ベルリンの小麦ビール、ベルリーナー・ヴァイセ(Berliner Weßie)の麦汁濃度は7〜8%で「シャンクビーァ」に分類され、ドイツ国内で一番親しまれているタイプのビールのピルスナー(Pilsner)は、麦汁濃度が11〜12%で「フォルビーァ」に分類される。




コラム担当

Kimiko Kochs
人物 キミコ・コッホス
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