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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
美食の国フランスが誇るフォワ・グラ
 今も昔もフランス料理になくてはならない素材の一つフォワ・グラ。フランスにおけるフォワ・グラ産地は、アルザス地方とガスコーニュ地方が主産地として知られているが、今回は古代ローマ時代にすでに鵞鳥を飼育していたといわれる伝統があり、日本でも知名度のあるペリゴール地方のフォワ・グラを紹介します。
 ペリゴール地方はトリュフの産地としても知られ、中心の都市ペリグーの名を冠したフランス料理の「ソース・ペリグー」をご存じの方も多いだろう。ペリグー近郊にはフォワ・グラを生産している農家が点在しており、その一つ「FERME ANDREVIAS(フェルム・アンドレヴィアス)」の主人MEYNARD(メイナール)さんの農家を尋ねた。この農家は主人夫妻と息子さんの3人で鵞鳥のフォワ・グラを主に生産しており、生産量は年間約140kg。ほかに鵞鳥の肉などの加工品を年間約1200缶(大小さまざまな缶詰の総生産数)つくっている。
 飼育している鵞鳥の数は360羽。主人のメイナールさんは「昔ながらの伝統的なやり方で、家族3人で仕事するには、この数がベスト」と語っていた。今回見学させてもらったガヴァージュ中の鵞鳥は全部で70羽。オスもメスも関係なく10に分かれたケージの中に6〜8羽ずつ入れて飼育している。

草原にいる鵞鳥 ガヴァージュに入るまでの鵞鳥の説明を少し。鵞鳥の雌は年2回卵を産む。今この農場でガヴァージュを受けている鵞鳥は9月に孵化したものである。生まれた雛は1ヶ月間小屋の中で大切に飼育され、その後の4ヶ月間、昼は草原、夜は小屋の中ですごす。餌は、小麦、大麦、大豆、とうもろこしを砕いたものを混ぜたものを与えられ、あとは草原で自由に草を食むことになる。この時期、鵞鳥を草原にてタップリと運動させ、この後の過酷なガヴァージュに耐えられる体力を付けさせて、強い鵞鳥に育てることが大切になってくる。 そして最後の約1ヶ月間は小屋に移して小さなケージごとに別け、ガヴァージュを行う。

小屋の中 / ケージの中の鵞鳥たち

 ガヴァージュは強制的に餌を食べさせることで、とうもろこしをお湯で少しふやかして少量の鵞鳥脂を混ぜた餌を、6時、12時、18時の1日3回与える。1回の量は、鵞鳥の体調を確認しながら約300gのとうもろこしを与え、餌を準備中約25日〜1ヶ月続けると、1羽の鵞鳥に平均約20kgのとうもろこしを食べさせることになる。この過酷な試練に耐え切れず途中で命を落とす鵞鳥も全体の約1〜2%にいるそうである。ガヴァージュ中の鵞鳥を見た瞬間驚いたのは、そのお腹の出具合。 あと2日ほどでガヴァージュが終わる時期でもあり、動くのもどこかぎこちない感じ。そんな出荷間近の愛くるしい目をした鵞鳥達を見ていると複雑な心境になってくる。

ガヴァージュ中のメイナールさん こういった厳しいガヴァージュ期間は鵞鳥もデリケートになっているため、作業はメイナールさんと奥さん以外は絶対にしないそうである。さて、主人のメイナールさんは薄緑の作業服を着て小屋に入り、ガヴァージュの準備をする。服装は鵞鳥達を驚かせないため、いつも決まった格好をする。メイナールさんは鵞鳥の身体をしっかりと押さえ、喉の中へじょうごのようなガヴァージュ専用機械を入れ、手早く餌のとうもろこしを流し込んでいく。 鵞鳥が目を白黒させながらも、メイナールさんが優しく喉元をさすりながら作業している姿は、鵞鳥とメイナールさんとの信頼関係が見て取れた。鵞鳥の様子を1羽ずつ確認しながら大切に扱っているメイナールさんの姿は、鵞鳥に対する愛情が感じられた。

フォワ・グラ / 自家製加工食品

 ガヴァージュが終わったら、鵞鳥は解体して、フォワ・グラはそのまま、またはテリーヌにし、その他の部分はパテ、リエット、クー・ド・ファルシ(首の詰め物)などに加工して商品にする。メイナールさんのところではこういった加工作業も家族3人だけで行っており、生のフォワ・グラは受注生産しかしていないそうだ。フォワ・グラの特色は、産地ごとの鵞鳥に与える餌によって変わり、メイナールさんの農家があるペリゴール地方では主に赤黄色いとうもろこしを与えるため、ベージュ色をしたフォワ・グラが出来上がり、調理した時も黄色い脂が出てくる。
 メイナールさんは、「鵞鳥は捨てるところがない。1羽1羽すべてを使い切ります。それが鵞鳥への恩返し」と語ってくれたのが印象的であった。ペリゴール地方のフォワ・グラは特にラベル・ルージュ、AOCなど認定を受けてはいないが、それぞれのフォワ・グラはメイナールさん一家の惜しみない努力と愛情の賜物である。そしてひたすら美味しい食物を作るために計り知れない努力を積み重ねてきたフランス人の知恵と執念がうかがうことが出来た。


コラム担当

辻調グループ フランス校 調理部
人物 金井 秀賢
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