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連載コラム ビバ!!ベバレッジ
人間は水を口にしないと数日しか生命を維持できません。何でも体の70%以上が水分だとか・・・・それはさておいても、おいしい料理には、おいしい飲み物をあわせたいものです。もちろん食事中だけではなく、寒い日には一杯のコーヒーで体を温め、夜の静寂にもの思う時はブランデーをチビリチビリ。はたまた友人との愉しい会話を盛り上げる生ビール。夫婦で想い出話をする時のダージリンティー・・・・さまざまな場面で皆さんの傍らに、さりげなく登場するのはどんな『飲みもの』でしょうか。このコラムではそんな『飲みもの』の素顔にスポットを当てていきます。決してミズ臭い話ではありません。 チャんと読んでください。
日本酒造りの1年〜秋の稲刈り
8月の田んぼです。稲が青々と茂っています

8月の田んぼです。
稲が青々と茂っています

  6月末に山野酒造さんの田んぼで田植えをしてから4ヶ月後、酒造好適米の「山田錦」も大きく実りました。今回は稲刈りのレポートとともにお酒造りのお米の処理法をお話ししたいと思います。お米(酒造好適米)に関しては前回のコラムにて紹介しました。今回は収穫されたお米をどのように処理するのか・・・それによってどのようなお酒になるのかをお話しましょう。

   稲刈りを行う「山田錦」は酒造好適米の頂点に立つお米です。山野社長がおっしゃるには「山田錦は相撲で言えば横綱。ほかの酒造好適米は小結以下」。つまり酒造好適米には大関や関脇クラスがおらず、山田錦がダントツの品質だそうです。ただ、山田錦は粒が大きい点はよいのですが、それゆえに稲穂が重く、倒れやすい欠点があります。倒れやすい米は農家が生産を嫌がります。ですから農家と酒蔵が契約し、出来、不出来にかかわらず最低の支払い金額を約束する場合もあるそうです。しかし、山野酒造では稲が倒れるリスクがあっても高品質なお酒を造ることができる山田錦を自社田に植えています。2008年は恵まれた年で台風の影響はほぼなかったのですが、それでも一部の稲は倒れていました。


収穫日の田んぼです。さすが山田錦!今にも倒れそうな重量感です   一部の倒れた稲

収穫日の田んぼです。さすが山田錦!
今にも倒れそうな重量感です

 

一部の倒れた稲


   収穫を行ったのは10月26日。田植えが遅かった分、収穫もかなり遅くなりました。収穫時期を通常の時期からずらすことは害虫対策になり、農薬の必要がなくなります。農薬や除草剤を使用しない分、田んぼは雑草だらけ、虫だらけです。バッタやカエルも多いのですが、それより多いのが「走るタイプのクモ」。中谷は大の苦手です。
   また、稲刈りは田植えと違って雨ではできません。今回は朝まで雨が残るギリギリの状況、曇天での収穫でした。稲刈り中も小雨が降っていました。晴天が続けば足も汚れないのですが…。

 

 
   鎌を持って刈る人とそれを結んで干す人の2グループに分かれて作業を行います。どちらもしゃがんでは立ち、の繰り返し。重労働ですが、皆おいしいお酒のためにがんばりました。
   収穫されたお米は水分を含んでいるので、まず田んぼに干して乾燥させます。通常のお米は機械乾燥ですが、ここではあくまで自然な手法です。その後モミガラを取ると、玄米となります。通常のお米の精米歩合(※1)は90〜92%ですから、玄米から8〜10%要らない部分(糠、胚芽)を削ることになります。しかし日本酒、中でも特に吟醸酒の場合は米の削り方が半端ではありません。精米歩合が「60%」、つまり40%も処分してしまいます。これはお米に多く含まれる旨み・・・たんぱく質や脂質、ビタミンなどをとってしまう作業です。日本酒に必要なのは「でんぷん」。つまり糖分に変化した後に発酵してアルコールになる部分で、たんぱく質があると日本酒では嫌われる「雑味」が出るからだそうです。 食用の米との違いがお分かりいただけると思います。食用の米は当然たんぱく質(旨み)が大切ですから、正反対ですね。


   酒造好適米の中心部には「心白」と呼ばれる部分があります。心白は組織があまり目詰まりしていないために白濁して見えます。心白を用いると、組織が密でないため麹菌がたくさん入り込んで活発に活動するので、よいお酒ができるそうです。写真の米はどちらも山田錦です。中心に白い部分があるのが見えるでしょうか?左は精米前、右は吟醸酒用の精米歩合60%の山田錦です。吟醸酒用の米はほぼ心白の部分で占められています。心白の周りのたんぱく質やビタミンなどを含む部分を削り、注意を払って低温でゆっくりと発酵させれば、吟醸香といわれる果物を思わせるの香りを持ち、雑味のないきれいなお酒になります。(※2

作業が終われば恒例のバーベキュー。山野酒造さんのいろいろなお酒をいただきます。

作業が終われば恒例のバーベキュー。
山野酒造さんのいろいろなお酒を
いただきます。

   「田植え」、「稲刈り」と2回にわたって日本酒を造る「酒造好適米」のお話をしました。次回はいよいよ「仕込み」に入ります。日本酒は世界でもっとも高度な技術が必要とされる醸造酒です。醸造の工程をしっかりとレポートしたいと思います。


※1 お米を削ることを日本酒では「磨く」といいます。米を磨いてどれくらい残すかを「精米歩合」といい、「精米歩合60%」や「60%精米」と言えば、玄米から「米の周りを40%削った状態」という意味です。

※2 吟醸酒は精米歩合60%以下のお米を使ったお酒の名称です。大吟醸酒にいたっては50%以上磨くのですから、原料の米の半分は使わないわけです。食用の米(精米歩合約90%)は約6分で精米できますが、精米歩合70%の場合は3時間、精米歩合40%の場合では72〜90時間もかかります。専用の機械を使って熱を持たさず、米が割れないように時間をかけて精米します。なお、新酒鑑評会に出すお酒は、精米歩合35%まで磨くこともあるそうです。ところで、吟醸酒や大吟醸になると磨きクズの(米粉)がかなり出ることに気づかれると思います。これは捨てるわけではなく、せんべいに加工されたり、家畜の飼料になったりして有効利用されるそうです。



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