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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
Qu'est-ce que コンビニ・フレンチ?
小学生の時の話である。夏休みのある日のことだった。いつものように歩いて近所のプールへ行こうとしたところ、T酒店さんが新しい看板を掲げているのが目にとまった。ものめずらしさに引かれて中に入って驚いた。「お酒売ってへん・・・、ノ、ノートと鉛筆売っとる・・・」。真新しい蛍光灯に照らされ、ピカピカの商品が所狭しとひしめき合っていた。おまけに、寒いくらいの冷房・・・。何も買わずに出るのも気が引けたので、ガムを一つ手にとってレジへ向かった。同級生の女の子がレジに居た。入るときには気付かなかった。プールの帰りにも「涼みがてら」に寄ってみた。相変わらず寒かった。今度は落ち着いて商品を眺めていた。缶詰、歯ブラシ、カセットテープ・・・生活に必要な物は全てそろっているかも、と思った。買う気もない商品を、手にとっては戻しの繰り返し。今度は何も買わずに自動ドアを通り抜けた。立ち止まって、暫く背中に大きく冷たい空気の塊を感じていた。ふわふわと歩き出した。冷え切った身体に薄ら汗が滲むのに、そんなに時間はかからなかった。

次の日も行った。看板を見て驚いたのは、朝7時から夜の11時(だったと思う)の営業時間。「そんなに夜遅くまでやってて儲かるんかいな? ウソついてやってへんのとちゃうか?」。後日、「神社の夜店に行く」のを口実に確認に行った。しかしその真新しいお店には煌々と明かりが灯っていて、その明かりを頼りに蛾とか虫が飛び交っているのが遠目にも確認できた・・・。

これが私の「コンビニ」との初遭遇でした。あれから20とウン年。新しく出来たコンビニエンス・ストアを見ると、「また出来たんか・・・」と思いつつ、ふやけた指で恐る恐る商品を手にした、少年だったあの夏の日を思い出します。

あっちでビヨーン(パリのレストランで)今回、「何とかコンビニで売っているもんだけで、フランス料理はできへんやろか?」とホームページを担当している他の真面目な先生方を横目に、私の「いちびり魂」が燃え出しました。コンビニをあちこち覗いてみると、定番商品以外にも生野菜やオリーブ油など結構揃っているのに気付かされました。「粉と卵と牛乳があれば何とかなるけど、あんまし面白くないな。・・・イモつこて、これやったろ・・・」と、ない知恵絞ってひねり出されたのが今回の「アリゴ」です。フランス中央部オーヴェルニュ地方の料理を、日本のコンビニで売っている材料でそれらしく仕上げる・・・。
こっちでビヨーン「しゃぁけど、問題はチーズやなァ。とろけるチーズぐらいでは、あの伸びは出ぇへんしなぁ」。居並ぶチーズを眺めていると、目にとまったのが「さけるタイプ」のスティック状の物。昔、学生を引率して見学に行った、チーズ研究所の所長さんの姿がフラッシュバックしました。「確かチーズを作る工程で、ビヨーンと<伸びるモン>が出来て、それをヒントにこの商品を作った、て言うてはったな」。両手に柔らかくなったその<伸びるモン>を持ち、ゆっくりと左右に手を広げていくと、ちぎれずに伸びていくシーンを写真に収めた記憶が・・・。よし、考えるよりやってみる。午後11時15分、コンビニ・アリゴに挑戦する筆者家に帰ってじゃがいもを茹でて裏ごし、そこへ牛乳と小さく切った「さけるチーズ」とを混ぜて溶かし、ぐるぐるかき混ぜて引っ張ってみると、ものの見事に「ええ感じやんけ」。かくして、コンビニ版「アリゴ」の完成となりました。「やってみるもんやなぁ」と一人ほくそ笑みながら悦に入る・・・が、お皿に山と盛られたアツアツの「コンビニ・アリゴ」を目前に、時計の針は翌日になった事を示し「あかん、今からこれ食べたら、めっちゃ太るやろなぁ・・・でも、しっかり味みとかんな・・・どうしよう、ドキドキ・・・」。
そして、心揺れ動く中年男の額に薄ら汗が滲むのに、そんなに時間はかからなかった。


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レシピ アリゴ

スパークする格闘料理人
人物 榊 正明
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