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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
パリで出会った異国の米料理
   パリでの4日目の朝、ホテルのベッドで目覚めると最悪だった。くしゃくしゃになったシャツを脱ぎ捨てシャワーを浴びていると、焦点が定まらずに軽いめまいと頭痛におそわれ、
スーパーで購入したバドワ。小さいボトルの方が値段は高い。これぞパリ価格?

スーパーで購入したバドワ。小さいボトルの方が値段は高い。これぞパリ価格?

何かが喉につかえたようで無性に喉が渇いた。我慢しきれずにシャワーの湯を口に含むとほのかな塩味を感じた。金気を帯びたその水はさすがに飲み込むことが出来ずに口をすすぐ事しか出来なかった。吸水の悪い固いタオルで身体を拭きながら戻った部屋のベッドの上に昨夜の飲み残しのバドワを見つけ、潰れたペットボトルから気が抜けて生ぬるくなっているのを口に含むまでは「パリは砂漠?」と、何かのコマーシャルで聞いたフレーズが頭の中を廻っていた。フランスに来て3ヵ月余りになるが初めての二日酔いだった。

高級レストランで、ダイナミックに盛られた大皿料理が華麗な手さばきで美しい一皿に変わる瞬間

高級レストランで、ダイナミックに
盛られた大皿料理が華麗な手さばきで
美しい一皿に変わる瞬間

   朝、ディジョン発のT.G.V.で旅立った2度目のパリ行は、昼はランブロワジー、夜はクロ・ロンシャンでの食事で幕を開け、2日目はタイユヴァンを経て夜にホテルリッツのR氏を訊ねるに至って異常な盛り上がりで飽食の旅の前半を終えていた。3日目は中休みで、ユーロディズニーで1日過ごした。ご多分にもれず人気アトラクションは長蛇の列であったが、フランス人気質なのか2時間待ちのプラカードの後ろに並んでも待ちきれなくなった人々が抜けて行く為か、30分程度で順番が廻ってきた。アルコールの無い唯一の食事となった昼食は、短いスカートを身につけた海賊の行き来するカジュアルなアメリカンスタイルのレストスペースでとることにした。

   前回来た時は「米食べようか?久しぶりに…」という言葉が誰とは無しに出て、つなぎの入らないハンバーグ(フランスで言う所のビフテック・アッシェ)をご飯にのせたハワイ名物の「ロコモコ」を食べたのだが、今回は豆の煮込みやフライドチキンと共にテイクアウトコーナーで買い込んできたサンドイッチで済ませることにした。

深夜も早朝もにぎわうピエ・ド・コション

深夜も早朝もにぎわう
ピエ・ド・コション

   帰りの列車の中で「今夜は中休みして明日は自由行動だな」と確認しながらも、やはりホテルから電話を入れて22:00にはピエ・ド・コションになだれ込んだ。アシェット・ド・フリュイ・ド・メール(海の幸盛り合わせ)の大皿にギャルソンに笑われるほどの量の生がきをプラスして平らげた後、山盛りのオニオングラタンスープ、さらに思い思いにアラカルトとデザートを片付けた。「やはり生がきにシャンパンは合わない」と文句をいながら飲んだボトルは4人で5本、調子に乗って食後酒までおかわりするありさまで、4人ともにギャルソンに「あだ名」をもらってリボンをかけた店のメニューを記念にもらい…、タクシーに乗った所で記憶が途絶えていた。

海の幸盛り合わせ。これで2人前   オニオングラタンスープは1人前600ml。これだけでお腹一杯になる

海の幸盛り合わせ。これで2人前

 

オニオングラタンスープは1人前
600ml。これだけでお腹一杯になる


   時計を見ると9時をまわったところであったのだが、ホテルでの朝食はあきらめて霧雨に煙る街へとさまよい出て行くことにした。河岸の古本屋を冷やかしてレアルのショップを覗き、昨夜大騒ぎした店の横を抜け、たどり着いた器具屋を出たのは12時過ぎだった。「やはり何か食べておかないと調子が戻らないな…」つぶやきながらビストロ街を通り抜け、何とはなしに一件の店の前にたどり着く。スペイン料理のパエリヤも食べる事の出来る小さな店。この体調では肉や野菜は無理、こんな時にはやはり米を食べようと思い、ガラス越しにギャルソンに声をかけると、奥のカウンター席に通された。朝からの体調も省みず、とりあえずシェリーを一杯もらい喉に流し込むと、食道を冷たい炎が流れ落ちるような感触に一気に食欲が失せていった。私は、酒に関してはまったく懲りない男である。

   一向に注文をせず、シェリーをなめ続けるおかしな東洋人に痺れを切らしたのか「何か食べないのか?」とギャルソンが声をかけたのは席について30分以上経ってからであっただろうか、食事時間にゆとりを持たないせっかちな東洋人にしては珍しいと思われたのであろう。「米が食べたくてパエリヤを食べに来たんだが、体調が悪くて食べられそうに無い」。素直にそういうと、「そいつは別なのか?」と、シェリーを指差し呆れて言葉を続けた。「米を食べたいんだったらアロス・コン・レチェ(米のプディング)でも食べるか?あれなら柔らかくておなかにもやさしいぞ」と訊ねてくれた。「アロス・コン・レチェか、まさにミルク粥だな」。なんとか喉を通りそうに思いそれを頼むと、笑いながら「温かい方がいいよな?」と聞いてくれた。まだ冷ましていないアロス・コン・レチェをゆっくりと流し込んで、店を出る時、「夜も来ないか?」とギャルソンがいうので、「2回も続けては…」と答えると「もっといいものを用意してやる」という言葉が返ってきたので、「8時頃に来る」というと「もう少し早くこい」という。「そんなに早く、客はこないだろ」というと「客じゃなく病人だ」と笑って答えてくれた。

   6時過ぎに店のドアをくぐって入ると白衣姿のスタッフやベストの前のはだけたギャルソンが食事を終えたばかりの様子でウロウロとしていたが、
初めて見たカンジャを再現。玉ねぎとかぶが入っていた

初めて見たカンジャを再現。
玉ねぎとかぶが入っていた

片隅のテーブルにスプーンと皿がセットされていてそこに案内された。スープ皿ではなく深い大きな鉢が目の前に置かれ、大きな鍋から直接、琥珀色の液体と共に細かくほぐした鶏肉と柔らかく煮えたお粥状の米がサービスされた。「カンジャだ、俺の国の料理で、おふくろの自慢の一皿だ。ミントとレモンを振り掛けて食べろ」と勧めてくれた。柔らかく煮えた鶏肉と米、煮崩れた野菜、ミントとレモンで抑えられて主張しすぎない鶏の味と香り、その日の体調にぴたりと合う素晴らしい一皿であった。異国の、しかも旅先の、初めて入った店でのたった二言三言の後の厚情に、涙するほど心は弱っていなかったが、「素晴らしい、美味しい、なんてやさしい食べ物だ、いったい何処の国の料理?どうやって作るの?」という興味と言葉は止めど無く流れ出た。

   と、いうことで今回はポルトガルの料理「カンジャ」とその出会いを作ってくれたスペインのお菓子「アロス・コン・レチェ」をご紹介。そして、物語の前半で登場するジャンクな一皿も…お試しあれ!



このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ カンジャ
レシピ アロス・コン・レチェ
レシピ ロコモコ
レシピ ポキ

老人ライダー候補生
人物 此上 潤
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