www.tsuji.ac.jp 辻調グループ校 学校案内サイト www.tsujicho.com 辻調グループ校 総合サイト blog.tsuji.ac.jp/column/ 辻調グループ校 「食」のコラム


 

フランスで出版されている
ボキューズの自伝


ポール・ボキューズ

M.O.F.の料理人、3ツ星レストランの経営者、
そしてフランス料理を次代に伝える指導者



フランス料理界の大御所だが、大物ぶらない、飾らない人柄がたまらなく素敵だ。


いつも周りのみんなを上手にたてて、気分よくしてくれる細かな気づかいを忘れない人。


ボキューズにはじめて出会ったのはリヨンの市場でだった。


前もってメニューを定めるべきではなく、朝、市場へ行き、そこで見つけたものによって定めるべきだ。

『ポール・ボキューズ フランス料理ー「市場の料理」』より



『現代フランス料理技術』からボキューズの手紙

の友人のジャン・トロワグロ、マルク・アリックスの2人の「最優秀料理人賞」受賞者とともに、フランス料理がいかなるものであるかの証左を持って、大阪・あべの・辻調理師学校を訪れた。そして、日本のフランス料理業界を代表する辻静雄氏に、すばらしい肩書きのひとつを授ける役割をもったことを、私たちは誇りに思っている。
フランス最優秀料理人賞―輝かしい賞を手にする特権を勝ち得る才能のある候補者にとって、なんと美しい響きがあることか。
M.O.F.のコンクールは、1924年にパリで第1回めの競技が行われて以来、4年ごとにくり返されている。フランス全土の若い料理人たちはすべて、M.O.F.を規範にしながら、自分の職業に強い愛情を持ち、仕事にいそしんでいるのである。

(署名) ポール・ボキューズ M.O.F. 1961年受賞


1974年、辻静雄がフランス料理の研究と日本における正しい知識の普及につとめた功績からM.O.F.名誉賞を受けたとき、ボキューズはトロワグロなどをともなって来日、辻調理師専門学校において、M.O.F.の料理とは何かを見せる講義を行った。この手紙はその折り寄せられたもの。




M.O.F.すなわちメイユール・ウーヴリエ・ドゥ・フランス、「フランス最高の職人」という称号は想像以上の重みを持つ。料理界では現在ミシュラン3つ星のレストランのシェフのほとんどがこのタイトルの獲得者である。


『現代フランス料理技術』監修者のことばより)













M.O.F.の料理は、フランスが「これがフランス料理である」と世界に主張するものであり、ボキューズやトロワグロといったM.O.F.の称号を持つ料理人とは、そのフランス料理の規範を作ってみせる力を備えている人たちなのである。
ボキューズは、3つ星レストランの経営者としてみずからのレストランで最高水準の料理を30年以上にわたり供しつづけている。本店以外にも宴会専用のレストランをつくり、リヨンにそれぞれ趣きの異なるビストロを経営、アメリカや日本へも出店した。そして多忙な日々の中にあっても、さらに豊かな人脈を築き、料理人仲間こぞって向上していこうという意欲に満ち、後進の指導にも熱心で、世界中を飛び歩いている。そのボキューズ氏の人となりの魅力は誰もが語るところである。

リヨン市の北西30km少しのところ、ボジョレのぶどう畑の真中に辻調グループ校フランス校シャトー・ド・レクレールがある。現代フランス料理界の大御所ポール・ボキューズ氏も気軽にやって来て、授業をしてくれる。その日は彼の片腕ロジェ・ジャルー氏もいっしょだった。料理人にとって最高の名誉ある称号M.O.F.(フランス最優秀料理人賞)をもつ二人のシェフの揃踏み。なんとも贅沢な料理講習である。すっ飛ばしてきたジープから降りたつなり、いつものしぐさで片手をあげ、人なつっこい笑みをみせながら「ボンジュール、元気にやってるか」と張りのある大きな声で呼びかける。
仕事にかかると、まなざしも怖いような鋭さに変わる。メニューには本書にも登場する<かぼちゃのスープ>と<すずきのパイ包み焼き>。ジャルー氏に次々と指示を出しながら、ご自身もすずきの下ごしらえにとりかかり、手を止めずに新鮮な魚の見分け方や旬について説明していく。授業のあい間に、今は亡き師匠のフェルナン・ポワン氏のこと、フランス料理の新しい傾向、フランス料理を学ぶのに家庭料理もひとつの柱として考えることの大切さなど、ポンポンと話がでる。自分の知識や体験は何でも後輩に伝えようという熱意に生徒もぐいぐいひき込まれていく。
授業が終われば、ボジョレのグラスを傾けながら、生徒のサインの求めにもきさくに笑顔で応じてくれる。大物ぶらず、若者に囲まれたいかにも気のよい、飾らないおやじさんといった感じの、ムッシュー・ポールがまたたまらなく素敵だ。

(肥田順 筆 『ボキューズさんちの家庭料理』より)









ヨン市の中心を流れる2筋の大河のひとつ、ラ・ソーヌの河岸は青空市場のにぎわいとともに目覚める。美食の都リヨンとその近郊にひしめくレストランやビストロの料理人たちの朝もまた、そうした市場で新鮮な野菜や果物を物色することからはじまる。彼らはまたもうひとつの河、ル・ローヌを越え、街の東部、パール=ディユにあるレ・アール・ド・リヨンに足を運ぶ。この街の食を支える巨大な市場である。

枝肉が吊りさがり、氷詰めの魚が並び、大きなチーズの塊やリヨン名産のソーセージ類なども豊富に揃っている。売り場をあちこちとめぐり歩き、材料の仕入れに目を利かせたあとで、料理人たちは近くのカフェでコーヒーを飲み、時には遅めの朝食をたっぷりとる。そうしたカフェのひとつで、私は初めてポール・ボキューズに出会った。
「ポール!こいつが日本のシズオ・ツジのところから来たスギヤマだよ。」


フランスでのはじめての研修先であったレストラン「ブーリヨ」の主人の紹介だった。クリスチャン・ブーリヨ氏はボキューズの薫陶を受けてミシュランで1つ星を獲得するまでに育った料理人のひとりである。

ボキューズ氏は、そのぎょろりとした目で睨み付けるようにこちらを見る、と一転して満面の笑顔を浮かべて握手の手を差し伸べてくれた。その時の強烈な印象はいまでも忘れられない。

「おい、お前のところのあの料理、あれはどうやってつくっているんだ」「あれはうちじゃぁこういう分量でこうやって・・・こんどいっぺん見にこいよ」そんな会話が料理人たちの間では気軽にとり交わされている。仕入れのあとのコーヒーブレイクはまた、互いにコミュニケーションを深め、情報を交換する場でもある。何のてらいもなく、互いの料理を語り合い、惜しげなく情報を分かち合う。そんな気風がフランス料理の底辺を引き上げていっているのだ。この層の厚いフランス料理の世界で、常にあまたの料理人の先頭を走り、フランス料理文化をひっぱってきたのが、ポール・ボキューズという人である。

(杉山忍 談)









ランス校でジャーナリストなどを招んでパーティをして、ボキューズさんにもきていただいたことがありました。そのときお菓子をフランス校の教授のモーリス・ボゲさんという人がつくったんですが、ボキューズさんは帰る時に、「ムッシュ・ボゲ、MOF、メルスィ!」とかいうんです。M.O.F.っていったらフランスではもうすごい称号でしょ、だからジャーナリストが「えっ」っておどろいた顔してね。ボキューズさんは、あれはミシェル・ゲラールといっしょに働いていた、ムッシュ・ボゲで、すごい人で、ここの先生なんだ、とかさりげなく言うんです。そしたらジャーナリストはわっとカメラをむけて、ボゲさんにボキューズといっしょに並んでくれって。ボゲさんは職人肌の人でマスコミに顔を売りたいとかそういう気持ちはない人なんですが、やはり自分の仕事にはプライドをもっていますから、ボキューズさんの気遣いはうれしかったみたいです。
また、ボキューズさんのレストランに、うちの生徒を連れていったときでもご本人がおられたら、若い生徒相手でもそれはもう細かい気遣いをしてくれます。いつでも周りのみんなを上手にたてて、気分よくしてくれる人なんです。


(木下幸治 談)









<ボキューズ・ドールBocuse d'Or>



キューズ・ドール、それはリヨンで2年に1度催される食の見本市「サロン・デ・メティエ・ド・ブーシュ」と合わせて行われる料理コンクールで与えられる金賞である。20ヶ国あまりの国々から、審査員1人、選手1人が選ばれ、料理を競う。このボキューズ・ドールを勝ち取ったフランス人の料理人は、続いてM.O.F.を獲得するというのが最近の傾向のようだ。ジャッキー・フレオン、ミシェル・ロット、そしてレジス・マルコンなどもこのコンクールの優勝者だ。それだけ確かな実力を求められる権威ある賞なのである。
このコンクールと賞を1987年に設立したのはもちろんポール・ボキューズ。コンクールの運営に携わっているのは、ジャン・フルーリ、クリスチャン・ブーリヨ、ロジェ・ジャルー、ダニエル・ルロン、ミシェル・ローラン、ジャッキー・マルガンなど。ピエール・オルシはコンクールの司会をつとめた。彼らはみなボキューズの弟子である。
ボキューズのもとで働いた経験をもつ、あるいはボキューズを師とあおぐ料理人は今や200人にも達する。 ボキューズは、ディシープル・ボキューズ、あるいはエコール・ボキューズをつくりたいという主旨のことを口にすることがある。エスコフィエが一派を築き、ボキューズ自身そうであるようにフェルナン・ポワンの弟子たちもまた一派をなして活躍している。そして21世紀を迎えようという今日以後、ボキューズ一派とでもいったものをつくって、自分の料理を後世に残して欲しいという思いがあるようだ。それがなければ伝統ある料理も地方の料理も守れないというのが彼の持論である。
今そのボキューズ派の先頭をきっているのがマルガンであろうか。またかのオルシは出世頭とでもいえよう。フルーリやジャルーは、実質現在の「ポール・ボキューズ」の味を維持しているシェフである。こうしたボキューズ一派が、コンクールを主催することにより、ますますフランス料理界にその影響力を強めていっている。



ディシープル
diciple=
弟子、門弟、信奉者、後継者


エコール


流派、学派


書斎


厨房


食卓