最初に、私がなぜ郷土料理をテーマに選んだのかご説明しましょう。
今、日本はお金さえ出せば世界中の主だった料理が食べられるようになりました。たぶんこんな国は世界広しといえど、東洋の小さな島国の日本だけではないでしょうか。
そのことそのものは、大変幸福なことかもしれませんが、しかし反面、自分の国の料理について一体どれだけの人が関心をもっているでしょうか。
「郷土料理」という言葉を知らない人はいないでしょう。では、その意味を知っているでしょうか。
本来の「郷土料理」の意味を一言でいえば「土産土法」、その土地にある材料をその土地の手法で調理するということです。流通の発達していなかった昔、人々は“一里四方”の郷土の自然から入手できる、新鮮な材料を使って生活していました。もちろん、今でもその基本は変わっていません。しかし、現在のようにあらゆる流通が盛んになってくると、自然と意味も変わってきます。北海道でとれた鮭が、新鮮な状態で大阪の市場で売られているのですから。さらに、今日ではいくら伝統的な郷土料理を作ろうとしても“一里四方”の材料だけで作ることは、まず、不可能です。日本独特の調味料の味噌や醤油でさえ、原料の大豆は国産品だけでは足りず、大半を外国から輸入しているのが現実です。
私は、「郷土料理」の新しい解釈として、食材そのものはその土地のものでなくても、調理法が大方その土地の伝統的な方法であればよいのではないかと思っています。今日まで受け継がれ、残っている料理には、それなりの理由があるはずです。日本の伝統料理を発掘し、その料理の生まれた背景や文化を探りつつ、「郷土料理」を再現していきたいと思います。
私流ですので間違っている部分もあるかもしれませんが、その際には、どうかご指摘下さい。
ということで、まずは地元、大阪からまいりましょうか。
杉浦 孝王
<制作協力> 川本 徹也
小川 健
堀 郁雄
湯川 徳之
重松
麻希