CAREER

卒業生インタビュー

つくりたい味も、今の職場との縁も。
「好き」から始めた私に、たくさんの“プラス”をくれた学校。

PROFILE
兵庫県生まれ。辻調グループフランス校を卒業後、『ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション 名古屋』での1年半の修行を経て、再び渡仏。以降、フランス校時代のスタージュ先だった『Maison Pic』のシェフ、アンヌ=ソフィー・ピック氏に師事する。スイスの店舗で研鑽を積んだ後、ヴァランスの本店へ。2020年9月、『Maison PIC』cheffe de cuisineに就任。

『Maison Pic』cheffe de cuisine

小林珠季さん

「本当にやりたいことをやっている大人」になりたいと思った。

料理が好きになったのは、祖母の影響です。実家では祖父母とも一緒に暮らしていて、日常的に料理をつくっていた祖母の姿を見て、私も料理をつくるようになりました。私がつくった料理を、家族が食べて喜んでくれるのがうれしかったですね。
実は大学受験をしているんです。その時はなんとなく「大学を出て就職する」といったビジョンを描いていたのですが、ずっと受験勉強を続けていくうちに疑問を抱くようになって…。勉強は嫌いじゃない。でも「自分が本当にしたいことは何?」とよくよく思い直してみると、頭に浮かんだのは料理でした。「料理の道に進みたい」と話すと、両親はすごく驚いていましたね。高校3年の11月頃の「受験真っただ中」といった時期に、想像もしていなかった娘の本心を聞かされたのですから。結局、「まだ意志が固まっていないのなら、まず大学を受験して、そのあとでじっくり考えてもいいんじゃないか」と言われて入試を受けたのですが、試験の日の1週間後には辻調グループの体験入学に参加していました。「将来、仕事をもって人生を歩むのなら、本当にやりたいことをやっている大人になっていたい」。そんな強い想いを胸に、私は両親を説得し、辻調グループに進学。仕事として料理と向き合う未来を、選択しました。

入学してすぐにフランス料理の魅力に惹きつけられた。

もともと入学前から最も興味があったのがイタリア料理だったので、西洋料理を専門に学ぶコースを選択。実際にこのコースで学ぶようになってからは、イタリア料理以上にフランス料理への関心が急速に高まり、1〜2ヵ月目には「フランス料理を極めたい」と考えるようになっていました。
フランス校への留学を決心できたのは、母に勧めてもらったから。「料理の道に進みたい」と初めて話した時はあれほど戸惑っていたのに、フランス料理にのめり込んでいく私を見て「そんなにやりたいならフランスに行ってみたら?」と言ってくれたんです。うれしかったですね。親には反対されて進んだ道だと思って、留学させてもらえるなんてまったく想像していませんでしたから。両親には本当に感謝しています。

留学時代は日々刺激を受け、それが意欲にも直結。

フランス校での留学期間は、授業だけでなく、普段の生活のなかでもたくさんの学びがありました。例えば、先生が「あそこのお店ではこういう料理が食べられるよ」「あのお店のシェフはこんな料理が得意だよ」と教えてくれ、休日に食べ歩きをする時にもさまざまな角度から刺激を受け、吸収できました。その蓄積から「自分もこういう料理がつくりたい」「この味に近づけたい」といったイメージが湧き、挑戦したいという意欲も高まりました。
そうした私自身が求める料理のイメージについて、「こうしてみたら?」と先生たちが親身になって具体的なアドバイスをくださるのがうれしかったですね。一方で「あえて失敗させてくれる先生」もいました。その時は気づかなかったのですが、先生は私が失敗することをわかっていても、止めずにそのまま見守ってくれていたんです。失敗を通して学べることは多いと思いますし、私自身が失敗しないとわからないタイプでしたので、「失敗させてくれる先生」の存在はとてもありがたく感じられましたね。

そしてフランスでのスタージュで、人生を変える出会いが。

フランス留学の集大成となるスタージュで、私の研修先となったのが『Maison Pic』。そこでオーナーシェフのアンヌ=ソフィー・ピックという人と出会えたことが、私のその後の人生に多大な影響を及ぼしました。私は留学を終えて帰国してから、日本国内のフランス料理店で1年半働いた後、すぐまたフランスに渡ってこのシェフに師事し、今もずっとこの『Maison Pic』で働き続けているのです。
留学時のこの素晴らしい縁がなければ、今の私はなかったと言えるでしょう。そういう意味でも、辻調グループは私の原点と言いますか、なくてはならないもの。好きなことをやりたくて入学した私に、「どんな料理をめざすか」「どんな味を実現したいか」といった目標やかけがえのない縁まで与えてくれた。私自身の「好き」「やりたい」という気持ちに、いろんな“プラス”を付け加えてくれた場所なんですよ、辻調は。

新人時代の挫折から、バランスと持続力の大切さを学んだ。

完璧を求めて100%を出そうとしても長続きしないのなら、90%で合格ラインを出し続けられるほうが強い。名古屋での新人時代に体調を崩したことで、得た教訓です。それまでは「元気が自分の取り柄」と思うくらい体力には自信を持っていたので、人生で今までそんな挫折を味わったことがないというくらいショックでした。仕事を頑張ることばかりに目が向いてしまっていて、自分の体を気遣うといった精神的なバランスがとれていなかったんですね。この体験から、バランスや持続力の大切さを肌で学びました。つらい思いもしましたが、克服できたのは「この仕事が本当に好き」という周囲の人たちにいい刺激をもらえたからでしょうね。仕事をしているといろいろな問題に突き当たりますが、それを一つひとつ解決していくとこんな成長ができるんだというお手本を示してくれる人がたくさんいて、その人たちが幸せそうに働いている姿が、私を奮い立たせてくれたのです。
その後、再び渡仏してからも、周囲に刺激をもらいながら、バランスを意識しつつ、一生懸命に頑張りました。そして20代後半に、一つの目標としていたcheffe de partie(部門シェフ)というポジションを任せてもらえるようになったのです。

お客様の喜び、そしてスタッフの喜びが、私の幸せ。

cheffe de partie就任以降は、スタッフの指導・育成にも強く意識を傾けるようになりました。「この仕事でやっていける」と本気で思えるようになったのも、cheffe de partieになってからですね。それまでは自分が頑張ることで精一杯でしたが、責任を負う立場になって初めて、リタイアしていくスタッフが少なくないことにも気づかされました。「自分はこんなにも厳しい世界で頑張ってきたんだ」と実感し、そのなかで責任あるポジションに就けたことは自信になっています。以前の私は「あの先輩はこういう時、こんな対応をしているな」というのを見て、「自分もこうなりたい」と先輩たちの良さを学び取ることにがむしゃらになっていた。そうした自らが感じてきた思いや体験もふまえて、今はスタッフたちにアドバイスをしています。
新人時代も今も、ずっと変わらないのは、お客様の喜びが一番の幸せということ。お客様が喜んでくれて、そのなかで自分の成長も感じられて、それが何よりうれしかったのですが、ただ、今はその幸せに「一緒に働くスタッフの成長や喜び」も加わっています。シェフである私と一緒に働くことを、うれしいと思ってくれるスタッフたちがいる。その事実を、心から喜ばしく感じます。

女性の社会進出への貢献など社会のプラスとなる役割を。

自分が女性であるということは、これまであまり意識したことはありません。何しろ『Maison Pic』は、オーナーシェフが女性ですからね。でもその点について改めて考えてみると、オーナーシェフがやってこられたことの素晴らしさを再認識できます。この店ではソムリエの統括責任者も女性で、私自身も初めての女性シェフに抜擢されました。そうして自らのビジネスのなかで率先して女性の活躍の場を広げることで、オーナーシェフは女性の社会進出への貢献を果たしてきたのです。いつかは私も、彼女のように社会のプラスとなる役割を担いたい。難しくても、やっていく必要があると実感しています。

『Maison Pic』(フランス・ヴァランス)

1889年に設立された世界的に有名なレストラン。ホテルも併設され、この店の料理を味わうために世界各地から多くの観光客が訪れています。オーナーシェフのアンヌ=ソフィー・ピック氏は、フランスでミシュラン3つ星を獲得した唯一の女性シェフ。

PROFESSIONS