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日本料理体験記~vol.4 甘鯛の若狭焼き

     

Vol.4  甘鯛の若狭焼き

夕暮れ時の庭先で魚を焼きながら炭火の煙が目に染みて涙を流す。
その近くには魚を狙う野良猫がいる――
というのはよくある焼き魚のイメージではないでしょうか。

実際は庭ではなく夕暮れ時の部屋でしたが、魚を焼く私の近くで猫のM吉が一瞬のチャンスを狙って目を光らせていましたので、調理に油断も隙もありませんでした。

魚を焼きながら佐藤春夫の「秋刀魚の詩」について考えようと思っていたのですが、M吉に魚を横取りされないか、そのことばかりで頭がいっぱいでした。

佐藤春夫と言えば友人の谷崎潤一郎の妻・千代子に恋をし、のちに潤一郎から妻を譲り受けた「細君譲渡事件」というスキャンダルを巻き起こしたことで知られています。
その事件のいきさつは谷崎潤一郎が小説に書いていますが、男が1人寂しく秋刀魚を焼くこの「秋刀魚の詩」も、佐藤春夫が千代子への恋心をうたったものだと言われています。
「さんまさんまさんま苦いかしょっぱいか」と魚を焼きながら佐藤春夫は恋に身を焦がしましたが、私にとってはひたすらM吉との戦いでした。


では、今回の料理は第7、8課より魚の焼き物です。 

三枚におろした甘鯛の腹骨をすき取り、塩を振って約1時間置きます。
1時間経つと、魚から水分がでてきます。
こうすることで臭みが抜け身もひきしまります。

そして、串にさして3時間ほど陰干しにします。

魚を干している間に、あしらいの準備です。今回使うのはむかごにしめじ。

まず、むかごに酒を振りかけて10分蒸し熱いうちに皮をむきます。
むかごというのは、山芋の葉の付け根にできる小指の頭ほどの球芽で、漢字で零余子と書きます。

温めると皮にしわがより、むきやすくなるのですが、冷めてしまうとむきにくくなってしまいます。
皮をむいたら軽く塩を振っておいておきます。

そしてもうひとつのあしらい、しめじを準備します。
石づきを切り落とし小房に分け串を打って、酒を少し振りかけてから焼きます。
汗をかいたように水がでてきたら十分火が通っている証拠です。
昔から「におい松茸、味しめじ」と言われますが、味のいいしめじは料理を引き立てる便利な食材です。


次は若狭地(わかさじ)を準備します。
第1課で学んだだし汁に酒、みりん、薄口醤油、昆布で味をつけます。
今回の料理に使う若狭地は、白身の魚に合う上品な味わいで薄い色をしています。

第5課、6課の煮物は、
魚も野菜も全体的にもう少し濃い味で調理をしました。
基本のだし汁に加える調味料のバランス少し変えるだけで、日本料理が多様に変化することがわかります。

さて、3時間陰干しをした魚の身を食べやすい大きさに切って、
串を打ったら皮目から焼いていきます。
焦げすぎないように注意をしたら裏返して焼き上げ、若狭地を振りかけて乾かす作業を3,4回繰り返します。
串を抜いて、しめじ、むかごと一緒に盛り付ければ完成です。



第1課で、吸い物は最後の一口を飲み終わった時にちょうどよい濃さになるよう、味に注意をしなければいけないと学びました。

吸い物に限らず、箸を進めるほどに味が深くなっていくよう丁寧に味をつけていくのが日本料理の特徴ではないかと、
前回の煮物、今回の焼き物を通して感じることができました。



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