辻調理師専門学校 辻製菓専門学校 通信教育部 ブログ

  1. ホーム
  2. 通信教育部 ブログ
  3. 受講生日記
  4. 製菓受講日記 ② サンマルク

製菓受講日記 ② サンマルク

今回のテーマは・・・ 

第3課 ジョコンド生地(アーモンド風味のスポンジ生地)とジョコンド生地を用いた菓子 






ジョコンド生地に挑戦


今回はビスキュイ・ジョコンドにしろ、パータ・ボンブにしろ、初挑戦のものばかり。それを組み立ててケーキに仕上げる、しかもその写真を通信教育講座のホームページで紹介するなんて、なんだかとても大胆な気がするが、それについてはあまり考えないことにして、さっそく作業に取り掛かる。

 まずは、ビスキュイ・ジョコンド。粉の大部分をアーモンドパウダーに置き換えたコクのあるスポンジ生地だ。アーモンドパウダーと粉砂糖に少量の薄力粉を混ぜ合わせたら、その後は卵黄を加えてメランジュールで撹拌するだけ、普通のスポンジ生地のように粉をダマにならないように丁寧に加えたり混ぜたりする気遣いも必要なさそうで、ずっと気が楽。でも、私の家にはメランジュール用のボウルが一つしかないので、後で加える卵白は手で泡立てた。メランジュールで撹拌した粉類と卵黄の生地を別のボウルへ移し、メランジュールのボウルを洗い、拭いて乾かす、という作業を省きたかったからだ。実はこの後、気が遠くなるような細かい、たくさんの仕事と、同じ道具を何度も使用するために洗っては拭き、乾かし、洗っては拭き、という作業が待っているとはこの時点では気が付いていなかったのである。

 とにかく生地はできあがり、焼く作業に入る。オーブンプレートも一枚しか持っていないし、上火と下火の温度を変えることもできないので、オーブンの底部にステンレスのバットを置いてみた。私のオーブンは下が焦げやすい傾向にあるのだが、これで少しは下火を遮ることができたのだろうか、甚だ疑問だけれど、その分焼き時間にとても気を使ったせいかビスキュイ・ジョコンドはまあまあきれいに、しっとり焼きあがった。紙をかぶせて一気にひっくり返しプレートから外す、という緊張する作業もクリアできた。


パータ・ボンブ初体験


さて次は、でき上がったジョコンド生地に2種類のクリームを組み合わせてサンマルクというお菓子に挑戦する。そこでまず必要なのが、パータ・ボンブ。名前はよく耳にし、目にしていたものの、自分で作るのはこれが初めてだ。フランス菓子のレシピには頻繁に登場しているようだから、ぜひ習得しなくては。でもDVDの映像を見ても、レシピを見ても、特に作り方に難しい点はないみたいね、と舐めてかかったつもりはなかったけれど、実際に作ってみたら、なんと大変なことになった。  


砂糖を煮詰めて115度まで上げる、ここが第一の難関と思い、気合いを入れて準備にかかった。いいかげんで怠けやすい傾向にある私の性格は製菓向きでないことは百も承知、このぐらいでいっかなー? と日和ってしまって失敗することも多いので、克己心を高めるためにもお菓子作りは私にとって修行のようなもの、と気分はまるで武士。
温度計は小さな鍋の場合、鍋自体の温度を取ってしまう危険があるので使わない方がよいと先生。なにか針金のようなものでできた小さな輪に煮詰めた砂糖液をつけ、膜が張ったらそれを吹いてみて、シャボン玉のように膨らめばOKとのこと。キッチン道具を入れてある引出しを引っかき回してみるとあった! ステンレスの茶こしの持ち手の先に、小さな金属の輪がついている。

早速煮詰まった砂糖液につけてみる。何度か試すうちに膜が貼り、ふーっと吹くと本当に見事な飴の風船が飛んだ。やった! これでパータ・ボンブはいただき! とさっそくメランジュールの中で待機している卵液に砂糖液を投入。

しかし! 私はこの時に大失敗を犯していたのであった。砂糖液を入れる前の準備段階で「卵黄を攪拌するときは高速で」、そして「シロップを投入しながらリュバン状になるまでは低速で」泡立てると先生は言ったのに、「高速で」だけがなぜか頭に残っていた私は、高速で回転させながらシロップを少しずつ入れてしまったのだ。さて、いくら高速でかき混ぜても、卵はちっともふんわり膨らんでこない。

なぜ? なぜ? メランジュールのボウルをよくみると、ガーン! ボウルの鍋肌に飴状に固まったシロップがびっしりへばりついているではないの。高速回転していた羽根に跳ね飛ばされたシロップが、冷たいボウルの鍋肌にくっついて一瞬で固まってしまったというわけだ。つまり、卵液の中にはほとんどシロップは入っていない。どうりでクリーム状に膨らまないわけだ。舐めてみても、生の卵臭い味がして、熱いシロップはほとんど入っていないことがわかる。

 やりなおすしかない、と思ってさらにガーン。卵がもうないのである。必要な量よりも4個多めに買ってきたのだが、そのうち2個を、うっかり昼食時に娘と食べてしまった。でもまだ2個は余分にあるはずだが、見ると割れているではないか。卵の状態が悪いということだって起こりうるのだ、お菓子作りでは常に材料は多めに揃えようというのが今回得た教訓。

 でも教訓だけではケーキは仕上がらない。気を取り直して、半量のシロップを再度煮詰めてクリームになっていない卵液に加え、撹拌してみる。と、今度はふんわりとクリーム状に仕上がり、さっきの卵臭さもなくなった。


フランス菓子の精密さを実感



2種類のクリームはなんとか無難にできあがったが、仕上げにいたるまでには、とにかく今回は細かな仕事がたくさんあるのに驚いた。クレーム・シャンティイ・ア・ラ・ヴァニーユのためのゼラチンは湯煎で溶かし、チョコレートクリームに使うチョコレート2種類も刻んでおかなければならない。ビスキュイ・ジョコンドにはパータ・ボンブを塗って乾かし、さらに最後に一番上になる面をカラメリゼして仕上げる。そして、そのカラメルを割らないために裏側から切っておき、下になるクリームの部分と重ねて今度は全体を切る。切る時には一回一回ナイフを熱湯でよく温め、水気を切り、切った後はナイフについたクリームをふき取る、という作業を怠ると切れ目のクリームがナイフについてはがれてしまうなど、仕上がりが美しくなくなる。

目が回りそうなこんな細かい作業の積み重ねが、美しいフランス菓子を生むのだなあ、と実感。今まで普通に作っていたショートケーキやビスケットなどの域を超えて、ほんのちょっぴりだが、プロの領域を垣間見た気がした。プロから見たら、まだまだ、と笑われるかもしれないけれど......。



  • 一覧を見る
ボーダー