辻調理師専門学校 辻製菓専門学校 通信教育部 ブログ

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製菓受講日記 ⑬ チョコレート菓子

今回のテーマは・・・ 

第4課 チョコレート菓子  





通信教育製菓技術講座もいよいよ第19課。チョコレート菓子制作に突入である。

うーん、チョコレートが扱えるなんて、パティシェとして一人前の域に達した感じで感無量だなあ(おいおい、それは今まで習ったことを全部体得していれば、の話だよ)。思えばスポンジケーキに始まって、失敗の連続、長い道のりだったなあ...なんてメランコリックになっている場合ではない。まだまだやらねばならないことは山積みだ。ではいざ、チョコレート作りに挑戦!



一にも二にもテンパリング


テンパリングは、チョコレート菓子を作るときに避けては通れない巨大な関門である。製菓用チョコレート、別名クーヴェルテュール、ついでにイタリア語ではコペルトゥーラ、を溶かしていろいろなチョコレート菓子を作るのだが、ただ溶かして固めるだけでは学校に通う必要も通信教育を受ける必要もない。しかしツヤツヤと美しく、スッと口どけのいい美味しいチョコレートにするには、クーヴェルテュールに含まれるカカオバターの脂肪分を安定のよい結晶体にする必要があるそうで、そのための温度調節作業がテンパリングと言われる作業なのだ。ふむふむ。


実は2年ほど前、イタリアの人気パティシェによるお菓子教室に通ったとき、チョコレートのレッスンもあり、テンパリングはすでに体験済み。DVDで辻の先生がなさっているように、溶かしたクーヴェルテュールを大理石の作業台に流し、パレットとスパチュールを使って広げてはまとめ、まとめては広げるという作業をやった。カシャ、カシャとリズムよくパレットとスパチュールをこすり合わせてクーヴェルテュールを混ぜ合わせる動きが「なかなかいい」と、イケメンのイタリア人先生に褒められいい気分だったなあ。そんなことを思い出しながら、まずは普段は物が山積みになっている大理石の作業台の掃除から。


テンパリングをきちんとしさえすれば、あとは丸く絞り出してナッツ類をのせるだけの「マンディヤン」や、ガナッシュを丸めてクーヴェルテュールでコーティングするだけの「トリュフ」などなど、なんだか簡単そうだなあ。おっといけない、いつも簡単そうだとかいって甘く見て、いろいろと失敗を重ねてきた私。今回こそは慎重に。チョコレート職人はショコラティエといって専門職があるぐらいだから、簡単そうに見えて奥はとても深いに違いない。


さて、包丁で細かく削り、湯せんで51度に溶かしたヴェールテュールを、ピカピカに掃除した大理石の作業台にダーッと流す。我が家は10歳の娘もみんなミルクチョコレートが嫌いなので、ブラック一種類のみ。ツヤツヤと、黒々と、チョコレートってきれいだなあ、とうっとりしているうちにも、どんどん温度が下がり始めるので、さっさと作業を始める。ところが、温度計で確認しながら作業してはいるものの、チョコレートの周りから冷えていくようで、どんどん濃度が増し固まってくる。ベランダに面した我が家のキッチン、その窓際に置いた大理石の温度が冷えすぎなのか?(この冬は11月最後の日曜日にすでに初雪が降り、マイナスを記録する日が続いたトリノ。しかも築200年のアンティークアパートは隙間風だらけだから、大理石も冷え冷えなのかも。チョコレート作りは暑さ大敵とはいえ、寒すぎるのもどうなんでしょう?)


これはあきらかに28度を下回っているよ!とあわてて保温しておいた残りのクーヴェルテュールと混ぜ合わせる。あれれ、すると今度はまた40度に上がってしまった。うーん、だけどこれをまた、冷え冷えの大理石に流すと急激に冷えてしまうに違いない。そうしたら今度はまた湯せん→テンパリングのしなおしで、作業はいつまでたっても終わらない。えーい、めんどうくさいから(コラコラっ)、ボウルの中でかき混ぜてかき混ぜて、温度が下がるのを待つことにした。あ、確か水冷法といって、ボウルの中で温度を下げる方法もあったじゃないの。


根気よく混ぜて混ぜて28度になったので、よしっとばかりに準備しておいた紙の上に丸く絞り出す。ところが5個ぐらい絞ったところで、最初に絞ったものは既に固まり始めて、あれーっとあせってナッツ類をのせてみたがすでに遅し。固まったチョコレートにくっつかない。しかたがないので3つ4つ絞ってはのせ、のせては絞るという効率のあまりよくない作業をし、「マンディヤン」は完成(テンパリングのすんだクーヴェルテュールは、大理石の上を避け、テーブルの上にふきんをのせておいたので31度に保てた)。


テンパリングの苦労はどこ吹く風、といった風情で美しく、おいしそうに仕上がった「マンディヤン」。食べてみると、うーん! おいしいじゃないの...実は翌朝、ツヤツヤで美しかったブラックチョコレートの表面に、薄ココア色の斑点のようなものができてしまうことなど、この時点では予想できなかった私。うーん、テンパリングに問題があったんでしょうか!先生。


気を取り直して、翌日はトリュフに取りかかる。テンパリングを我が家の寒過ぎるキッチンでするコツも少しつかんだので、心安らかに楽しく作る。ガナッシュは簡単にできあがり、冷やすと面白いほどに固まってきた。これをお団子状に丸めたら、テンパリングしたクーヴェルテュールを手にとってプレコートする。手がチョコレートでべたべたになり、なんだが泥んこ遊びをしているような楽しさ。だけどこれじゃ写真がとれないよ、と10歳の娘にベタベタ手のアップをワンカット撮ってもらう。そう、わがCANON デジタル50Dは、バターやらチョコレートやらでいつもべたべたなのである。


そんなこんなで、トリュフも完成。自作のトリュフを食べられる日が来るとは。感涙にむせぶ私。なんておいしいんだろう。でも撮った写真をアップでパソコンで見てみると、なんとも形が不格好だ。次回は大きさを正確にそろえること、もう少し丁寧にまるめること、も課題だな。


後日、調子にのった私は、日本びいきのイタリアの友人に、自作チョコレートをプレゼントすることにした。日本風のお菓子といえば抹茶味である。ホワイトのクーヴェルテュールを使って、ガナッシチョコレート菓子ュは白、周りが抹茶チョコのトリュフを作るのだ。ホワイトを使ったガナッシュのレシピがないので、クーヴェルテュールと生クリームの割合がわからず、固さを調整するのにちょっと苦労したが、ありったけのクーヴェルテュールを加えて最終的にはうまくかたまった。お味のほうは、海外暮らしで抹茶味のお菓子に飢えているということもあって最高においしく感じられたが、見た目がなんだかへん。抹茶が高くて貴重なこともあり、表面には抹茶をまぶさなかったため、とても何かに似ている。そう、まるで芽キャベツみたいじゃありません? 次回挑戦するときは、表面をツルツルにしあげ、ホワイトチョコレートで細いラインかなにかを描いたらきれいかしら、などと想像を膨らませる私であった。






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