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第11課・12課 焼成

通信教育講座受講レポート

宮本さんの受講日記 フードジャーナリスト、料理研究家 宮本さやか製パン技術講座


製パン技術講座を体験中の宮本さやかです。イタリアのトリノに暮らしていますが、辻製菓専門学校にいるかのような中身の濃い授業が受けられること、教材がとてもわかりやすくて楽しく続けられることに惹かれて、数年前に日本料理の講座を履修したことから始まり、次に製菓、今回の製パンと通信にはまっています! フードジャーナリストという仕事をする私にとって、たくさんの料理人や業界のプロの方達を取材する時に、ここで得る専門的な知識はとても役に立ちます。そして在住日本人の奥様方にイタリア料理を、イタリア人に日本料理を教える仕事もしていますが、その時にもここで得た専門知識が頭の中にあることで、自信を持って仕事ができています。

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今回のテーマは...


第11課・12課 焼成


今までの人生で、ケーキなりクッキーなりパンなりの様々な「焼き物」をやって来た経験上、低い温度でグズグズ焼けば水分が抜けてパサパサな仕上がりになり、逆に高すぎる温度で焼いた場合は表面だけ早く焼き色がついて中がきちんと焼けない、ということは知っている。が、それはあくまでも経験上のなんとなくの「高い」「低い」。いったいどんな大きさのどんな生地に何度で何分ぐらい焼くのがいいのか、そういう学問的なことを11課・12課では教えていただいて、私の製パン技術も少しだけ、プロのそれに近づいたようでとても嬉しい。

「高い温度で焼過ぎた場合、中が生焼けではないにしろ、完全にパンになり切っていないので、食べたときの舌触りが悪い」と言う先生のお話にはいたく感動した。私が自分で焼いているパンに時々その手の「なんとなくモソモソ」な仕上がりの時があったのだが、そういうことだったとは!

講義を聞いた後の実技篇は、またまた今課もパン・トラディショネルである。最初にテキストを開いた時は、正直言って「またか」と思ってしまったのだが、しかし、これまで私は、まだ納得のいく仕上がりでパン・トラディショネルを焼けていない。テーブルロールやフォカッチャなど、「私ったらなかなかやるじゃん」と思えるものもいくつかあったが、パン・トラディショネルは難しい。生地を発酵させ、分割、成形まではいいのだが、最後の発酵の時間調整と焼き具合がうまくいかないのか、クープがきれいに割れていなかったり、膨らみが足りないということばかり。

今回こそは! と気合いを入れて取りかかる。今回はオートリーズ法といって水と粉をこねた後、しばらくおいて生地にしっかり水を吸わせてから、イーストを加えて最終的な生地にする製法。ボリュームが出やすく生地の安定性も増すのだそうだ。同じパンでも、いろいろな製法があるんだなあ。

さて、成形まではけっこう上手く進んだ。ただ残念なのは、私のオーブンは一般的な家庭用オーブンなので天板の大きさは30センチ×40センチ。いくら成形が上手になっても、パン・トラディショネルを先生のように65センチで焼くことはできないということだ。いつの日か、ベーカリーカフェなどオープンして、プロ用のオーブンが私のものになり、65センチのバゲットを焼ける日が来たらいいなあ、なんて夢見ながら作業を続ける。

そして、普通の家庭のキッチンでパンを焼くことのもう一つの関門が「ホイロ」である。最初の発酵時は、オーブンを30度に設定してホイロ代わりにできるのだが、焼成前はオーブンを高温に温めておかなければならないので、直前までホイロ代わりにすることができない。だからできるだけ30度に近い、家の中で温かい場所に置いておくのだが、それが私の家の場合はオイルヒーターのそば。ヒーターに近い場所に並んでいる生地は指定時間よりもずいぶん早く生地の準備が整ってしまったり、遠くのはぜんぜん膨らまなかったりと差が出てしまった。

焼いてみるとやはり差が大きく出て、何本かは、今までの中ではなかなかいいできのクープが入ったパン・トラディショネルができたが、ほとんどは膨らみがイマイチで、そりのない寂しい仕上がりになった。道は険しく、遠いなあ。

気を取り直して、翌日、翌々日は12課の山食パン・角食パンとぶどうパンに挑戦した。

結論からいうと、山食パン、角食パンは、縦に膨らみが足りない、納得のいかないできばえだった。生地を練っている時から、なんだかずいぶんベタベタの生地だった。今回は材料のところに「強力粉」とあったので、つい、いつものくせでグラノ・ドゥーロ(日本でいうデュラム・セモリナ)100%で配合してしまった。吸水率が違うのかな、と思い、少し粉を足したりして、先生の生地に近い感じの柔らかさまでもっていった。その後の発酵や成形などはうまくいったと思う。

可愛く丸めた生地を型に並べ入れ、発酵させたあとオーブンへ。時間がたったので蓋付きの型で焼く角食パンを取り出して開けてみると、うーん、なんだか表面の焼き色は薄いし、蓋の高さまで膨らんではいない。だけど側面の焼け具合はどうだろう、指定の時間は過ぎているし、焼けたいい匂いがさっきからしている。あ、そうだった、それに「カシャ」っとやるのを忘れるところだった。「カシャ」っと型を台に打ち付ける。これをやらないと側面がへこんでしまうのだそうだ。というわけでカシャっとやってから少し持ち上げてみると、思った通り側面はもういい色に焼けている。しかたない、蓋を外してしばらく表面に焼き色をつけることに。

数分後、今度は上面もいい色に焼けたのでオーブンから取り出した。蓋を外してしまったので、焼き色はついたけれど、上面もやや丸く膨らんでしまった。これじゃ角食パンじゃないじゃない。

私の型の容量は2800mlだったので、計算して同じ比率になるように生地を増やした(先生は型に入れる生地が2つなのだが、私の型は長いので3つにした)ので、長さはちょうどよく三つの生地が膨らんでつながったのだが、高さは思うように膨らまなかった。

翌日のぶどうパンは、山食パンの教訓を生かして(自分で計算した比率を疑って・笑)、型に入れる生地の量を若干増やして焼いてみた。すると、形はとてもいい感じにできあがった。でもやっぱり縦の膨らみが足りない。味はふんわりして、とてもおいしいのだが、縦にグーンと膨らむことができたら、もっとおいしくなるのだろうか?

思えば、私のパン作り全体的に、上に膨らまない傾向がある。自分で配合して週に2回ほど焼いている雑穀パンは、全粒粉や雑穀をたっぷり入れ、天然酵母で焼いているが、ふんわりと柔らかくとても美味しい。でも縦の膨らみがなんとなく弱い気がして、いつも少しだけ納得がいっていないのだ。先生、なぜでしょう?

でも、イタリアで食べるぶどうパンの味は、それはそれは美味しいものだった。イタリアにはレーズンを入れたパネットーネなどのクリスマスケーキはあるけれど、ぶどうパンはないので、家族やイタリア人の友人にお裾分けしたらとても喜んでもらえた。型は3つしかなかったので、残りの生地は80gに分割して丸く焼いたのだが、それを食べているうちに、ぶどうの少ないパンにいくつか遭遇した。ぶどうが均一に混ざるように、時間ではなく目で見て確認するようにと先生はおっしゃっていたが、チェックが甘かったか。ぶどうの少ないやつは夫に、たっぷり入ったものを娘に食べさせながら、次回への課題を確認する私であった。


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