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日本料理体験記~vol.8 笹身胡麻白酢和え

     

Vol.8  笹身胡麻白酢和え

前回の記事で、酢の物は「縁の下の力持ち」のような料理だと表現しましたが、今回の料理を一言で表現すると「調和」です。
講義のなかで先生が「和え物は調和の料理」と話されるのをとても面白く感じました。

料理というよりオーケストラなど音楽的なものをイメージしてしまったからです。その後、すっかり音楽モードになってしまい、モーツァルトをかけながらキッチンに立って料理を作ったのですが、和え物という料理は、それぞれの素材の個性を生かしながらも主張しすぎない調理を行うことで優しい味を表現する料理だということを感じました。


さて、今回の料理は笹身胡麻白酢和えです。


まず、下準備です。干し椎茸を戻して軸を除き、熱湯で湯がいたものを流水にさらします。そして椎茸を戻した汁と第1、2課で学んだだし汁、椎茸を使って調味料を加えるのですが、この時点ですごくいい香りです。

香りのキノコと言えば松茸ですが、家庭で調理することはあまりないと思います。その点、干し椎茸は気軽な素材。私の母もよく使っていました。干し椎茸の戻し汁の香りは、子どもの頃の私にとって「おいしいものができるぞ」という期待の香りだったような気がします。


続いて鶏の笹身の準備ですが、まず筋を引きます。
今回の講義を受けるまでは、包丁を使いながら自己流で引いていましたが、身の部分が裂けてしまったり、筋が途中で切れて残ってしまったりして、なかなかうまくいきませんでした。

先生の言葉どおり、筋の両側からV字の切り込みを入れて、裏返して左手で筋を押え、包丁で筋を引くと上手に取れます。
その後、身を半分に開いて、振り塩をします。その後、しばらくおいた笹身を熱湯に通し、霜降りにします。表面が白くなったらすぐに氷水に落とします。

もう少し?まだかな?と迷っていると火が通りすぎて霜降りにならないので、ここは手際よく作業します。きれいな霜降りになるかドキドキしましたが、水気を取って3mm幅に切ると、ちゃんと白い部分と赤い部分が層になっていました。


続いて、胡瓜を準備します。塩を振って板ずりし、熱湯で色だしをします。
鮮やかな緑色になった胡瓜を水に落とした後、縦半分に切って種をのぞいてから薄切りにして、立塩に10分つけ、水気を切ります。これは第13課の「さば昆布じめ」で学びました。

一度学んだら終わり、ではなく繰り返し学ぶことで技術は自分のものになっていくんですね。


最後に胡麻白酢を作ります。木綿豆腐を裏漉しして、当たり胡麻と砂糖、酢、薄口醤油などの調味料を加え、生姜汁でさっぱりさせ、だし汁でかたさを調整します。そして細切りにした椎茸、笹身、胡瓜と胡麻白酢を和えて盛り付ければ完成です。


和え物というのは、塩をする、焼く、煮るなどの下ごしらえをすませた材料に味つけとなる「合え衣」をあわせたもの。今回は、柔らかい豆腐を当たり胡麻や酢で調味し、だし汁で伸ばしたやわらかい食感の胡麻白酢を「合え衣」に使いました。歯応え、舌触り、色彩、形、味がほどよく混ざることでおいしさが生まれることから、「調和の料理」と表現されます。

完成した料理を口にしてみると、笹身の歯ごたえ、きゅうりのしゃきしゃき感、椎茸の旨みが柔らかい和え衣に包まれ、バランスのいい味わいです。合え衣も、豆腐と胡麻の濃厚さを酢としょうが汁がほどよくさっぱりさせており、優しいまろやかな味わいです。

巷では、掃除で開運する、家事で幸せになる、というようなテーマの本が流行っているようですが、日々の料理は大事なことに気づかせてくれます。

調和を大切にする和え物を忘れずにいようと思いました。






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