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辻調グループ フランス校

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調理外来講習 M.Philippe MILLE(フィリップ・ミル氏) / Les Crayères (レ・クレイエール)

フランス校教壇から

2023.06.27

今回、外来講師としてお越しいただいたのは、シャンパーニュ地方Reims(ランス)にある高級ホテル、Les Crayères(レ・クレイエール)のミシュラン2ツ星のメインダイニングレストランLe Parc(ル・パルク)でシェフを務めるフィリップ・ミル氏です。

ミル氏は、パリの有名レストランで経験を積んだ後、2009年にボキューズ・ドールにフランス代表として出場し、3位を獲得。2011年にはM.O.F.を受章。同年にLe parcを1ツ星へ、翌年2012年には2ツ星に昇格させるという実績をお持ちです。
また、毎年ランスで行われている、世界の調理師学校の学生を対象とした国際料理コンクール「トロフェ・ミル」の主催者として、若手料理人育成、ランスの生産者との交流にも注力されていることでも知られています。 今回、長年シェフの右腕として働かれているフランス校卒業生の日本人シェフの馬場さんも一緒にお越しいただきました。

今回は2品作成していただきました。

Asperges blanches de champagne, Jus de champignons, œuf battu au beurre de cèpes

1品目は旬のホワイトアスパラガスとロゼマッシュルームを使用した料理です。
アスパラガスは太くて大きなものを準備し4種の使い方をします。
ロゼマッシュルームは3種の使い方をします。
まず、アスパラガスの一番柔らかい頭の部分はロゼマッシュルームの出汁でゆでます。

次にアスパラガスの頭を取った下の可食部分は3つの使い方をします。①芯抜きで中をくり抜きアスパラガスの輪の中にロゼマッシュルームのデュクセルを詰めます。

②ジューサーで絞ってアスパラガスのジュースにニワトコの花とヴィネガーで作ったオリジナルのお酢とプロサイフォンの粉を混ぜ炭酸ガスを入れ白い軽いソースを作ります。

③アスパラガスを小さい綺麗な角切りにします。青りんごも同じ大きさに切り、シトロンキャビアとオリーブ油でサラダを作ります。(②と③は別添えのお皿でパン粉とキノコのパウダーを飾っています。)
つけ合わせにロゼマッシュルームの出汁に生クリームとクルミのお酒、ゼラチンを固めて半月型にしたものを添えます。
ソースは2種類で、1つ目は澄ましバターにはセップ茸の香りを付けたものでサバイヨンを作り、エスプーマ仕立てで軽く仕上げます。2つ目はロゼマッシュルームで作った出汁に葛粉を入れたものです。

このたくさんあるパーツを組み立て1品が完成します。2つのメイン食材の特徴を捉え良い部分を最大限に生かし、細かく丁寧な作業をされていました。
研究生たちは細かい手元の作業を食い入るようにテレビ画面を真剣に見ている様子やシェフの作業の素早さに驚いていました。

Homard et celtuces, Jus de cuissons terre/mer

2品目はオマール海老と旬の茎レタスを使った料理です。
茎レタスは茎と葉を使い4種類を作成します。

まず茎の部分は芯抜きで棒状に抜き斜めに切ります。次に抜いた端の部分はジューサーにかけジュースを取ります。
葉の部分はつけ合わせとして使用するので、緑色の濃い部分はクロロフィルを取るために海藻とゆでます。葉の柔らかい部分は串切りにします。
まず斜めに切った茎レタスをバターでソテし、ムール貝のだし汁、緑トマトウォーター、シャンパン酢、カルダモン、茎レタスのジュースを加えて食感が残るように火入れし、煎ったピスタチオを砕いて入れます。
つけ合わせとして、茎レタスの葉の柔らかい所、緑トマトの果肉、ゆでたさやいんげん、サリコルヌ、シトロンキャビア、シャンパン酢で火を通し、エシャロットを加えてさっと炒めます。

海ブドウは塩漬けされているので水で戻します。
オマール海老は縦半分に切ってプリッと焼き上げます。
残った殻や頭でソースを作ります。炒めた殻に茎レタスのジュースや緑トマトの種と皮、オマール海老のみそを入れて味を出します。濾した後に煮詰めて濃度付けに緑トマトの果肉、色付けにオイスターリーフとクロロフィル、サリコルヌを加えミキサーで乳化させます。

それぞれのパーツを盛りつけて完成です。
初夏の雰囲気にピッタリの爽やかさや色彩の美しさが目を惹く素晴らしいお皿だと感じました。

シェフは作業中にアシスタントをする研究生に名前を聞き、その名前を呼んで指示をしてくれていました。アシスタントの学生もシェフとのコミュニケーションに慣れ、積極的に動けるようになってきました。

最後に学生からミル氏に質問で"新しい料理を作る時に大事にしていることは?"という問いに

①季節の物を必ず取り入れること。新しいものを作る時は一度試して良い時も悪い時もあるが改善してその素材のポテンシャルを最大限生かせられるように考えること。
②材料、調理法、調味料をぶれることなくその素材と取り組むこと。
③そして積極的にいろいろな食材の味を知ろうとすること。
この3つのことをアドバイスしてくださいました。

ひとつひとつの回答に理由を説明いただき、説得力のある講義を受けられて新たな刺激になったと思います。本科授業でもこの考え方を生かし、より良いシャトー生活が出来るようにしてほしいと感じました。

最後にミルシェフ、馬場シェフ、アシスタントを務めた研究生と記念写真を撮りました。