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クッキングレポート
日本料理体験記
[ 職業 ]ライター・フードコーディネーター
皆さん、こんにちは。私はヘルシーなスローフードとして世界的にも注目されている“和食”の世界を知るために、辻調理師専門学校の通信教育講座の日本料理を受講しています。日本料理の奥深さってなんでしょう、家庭料理と日本料理の違いってなんでしょう、その答えが“プロ標準”のこの通信教育で見つけられるような気がしています。これから1年間、通信教育講座の受講生代表(?)として毎月、レポートをお届けいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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Vol.4
甘鯛の若狭焼き
夕暮れ時の庭先で魚を焼きながら炭火の煙が目に染みて涙を流す。
その近くには魚を狙う野良猫がいる――
というのはよくある焼き魚のイメージではないでしょうか。
実際は庭ではなく夕暮れ時の部屋でしたが、
魚を焼く私の近くで猫のM吉が一瞬のチャンスを狙って目を光らせていましたので、
調理に油断も隙もありませんでした。
魚を焼きながら佐藤春夫の「秋刀魚の詩」について考えようと思っていたのですが、
M吉に魚を横取りされないか、そのことばかりで頭がいっぱいでした。
佐藤春夫と言えば友人の谷崎潤一郎の妻・千代子に恋をし、
のちに潤一郎から妻を譲り受けた「細君譲渡事件」というスキャンダルを
巻き起こしたことで知られています。
その事件のいきさつは谷崎潤一郎が小説に書いていますが、
男が1人寂しく秋刀魚を焼くこの「秋刀魚の詩」も、
佐藤春夫が千代子への恋心をうたったものだと言われています。
「さんまさんまさんま苦いかしょっぱいか」と魚を焼きながら
佐藤春夫は恋に身を焦がしましたが、
私にとってはひたすらM吉との戦いでした。
では、今回の料理は
第7、8課より魚の焼き物です。
三枚におろした甘鯛の腹骨をすき取り、
塩を振って約1時間置きます。
1時間経つと、魚から水分がでてきます。
こうすることで臭みが抜け
身もひきしまります。
そして、串にさして
3時間ほど陰干しにします。
魚を干している間に、あしらいの準備です。
今回使うのはむかごにしめじ。
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まず、むかごに酒を振りかけて10分蒸し熱いうちに皮をむきます。
むかごというのは、山芋の葉の付け根にできる小指の頭ほどの球芽で、
漢字で零余子と書きます。
温めると皮にしわがより、むきやすくなるのですが、
冷めてしまうとむきにくくなってしまいます。
皮をむいたら軽く塩を振っておいておきます。
そしてもうひとつのあしらい、しめじを準備します。
石づきを切り落とし小房に分け串を打って、酒を少し振りかけてから焼きます。
汗をかいたように水がでてきたら十分火が通っている証拠です。
昔から「におい松茸、味しめじ」と言われますが、
味のいいしめじは料理を引き立てる便利な食材です
次は若狭地(わかさじ)を準備します。
第1課で学んだだし汁に
酒、みりん、薄口醤油、昆布で
味をつけます。
今回の料理に使う若狭地は
白身の魚に合う上品な味わいで
薄い色をしています。
第5課、6課の煮物は、
魚も野菜も全体的にもう少し濃い味で
調理をしました。
基本のだし汁に加える調味料の
バランス少し変えるだけで、
日本料理が多様に
変化することがわかります。
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さて、3時間陰干しをした魚の身を食べやすい大きさに切って、
串を打ったら皮目から焼いていきます。
焦げすぎないように注意をしたら裏返して焼き上げ、
若狭地を振りかけて乾かす作業を3,4回繰り返します。
串を抜いて、しめじ、むかごと一緒に盛り付ければ完成です。
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第1課で、吸い物は最後の一口を
飲み終わった時にちょうどよい濃さになるよう、
味に注意をしなければいけないと学びました。
吸い物に限らず、
箸を進めるほどに味が深くなっていくよう
丁寧に味をつけていくのが
日本料理の特徴ではないかと、
前回の煮物、今回の焼き物を通して
感じることができました。
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