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第7課 製パンの工程(2) 発酵/第8課 食事パン(4)

通信教育講座受講レポート

宮本さんの受講日記 フードジャーナリスト、料理研究家 宮本さやか製パン技術講座


製パン技術講座を体験中の宮本さやかです。イタリアのトリノに暮らしていますが、辻製菓専門学校にいるかのような中身の濃い授業が受けられること、教材がとてもわかりやすくて楽しく続けられることに惹かれて、数年前に日本料理の講座を履修したことから始まり、次に製菓、今回の製パンと通信にはまっています! フードジャーナリストという仕事をする私にとって、たくさんの料理人や業界のプロの方達を取材する時に、ここで得る専門的な知識はとても役に立ちます。そして在住日本人の奥様方にイタリア料理を、イタリア人に日本料理を教える仕事もしていますが、その時にもここで得た専門知識が頭の中にあることで、自信を持って仕事ができています。

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今回のテーマは...

第7課 製パンの工程(2) 発酵


第8課 食事パン(4) 発酵を使って


 今回は発酵について勉強する。発酵といえば温度や湿度の管理が難しいし、発酵がうまくいくかどうかでパンの風味から膨らみ具合まで変わってくる上に、うっかり発酵させすぎたら取り返しがつかないという、難関中の超難関。製菓の講座をやった時も、そして製パン講座の最初の方でも発酵については繰り返し学んできているし、自己流のパン作り歴5年ほどの間にもいろいろ体験しているものの、「発酵はこうすればああなってオッケー!」みたいな確信は未だ持てずにいる。だからお勉強させていただいているのだけれど。

 というわけで、まずは8課のフォカッチャから挑戦してみた。
 なぜ7課をとばしていきなり8課なのかというと、先週娘が友達を家に招いてちょっとしたパーティーをしたからである。中学校を卒業して、それぞれが別の道に別れるので、最後に一緒に遊ぼうということらしい。
 イタリアの子どものパーティーといえば、欠かせないのがピッツァやフォカッチャ。手抜きのお母さんであればパン屋さんでフォカッチャを、スーパーで飲み物とポテトチップスを大量に買い込んで、はい、どうぞ、というところだが、辻製菓専門学校の通信講座を受けている私としては、全部手作りでいかないといけない。というわけで、8課の実践も兼ねてフォカッチャ作りにとりかかった。

 イタリアで長く主婦をやっているので、フォカッチャは何度か作ったことがある。美味しいフォカッチャのレシピも持っている。先生のレシピとイタリアで入手したいくつかのレシピは大体似ているけれど、「砂糖」を入れるのが大きな違いだ。といっても、それで慌てる私ではございません。砂糖はイーストが活動する栄養源になるのであって甘い味をつけるためじゃないのはすでに学習済みである。それから塩のパーセンテージがイタリアのものよりも若干低い気がするけれど、イタリアのパン類は塩分が多すぎるということでちょっと前に問題になっていたから、これぐらい(2%)のほうがいい。

 あまりボリュームを出さなくてよいということで、普通にミキシングし、生地は少し柔らかめのフランスパンぐらいな感じに仕上がった。オリーブオイルを使ったりしながらフォカッチャを作っていると、毎日の食事(イタリア料理)を作っているようで、なんだか今日は気楽だな~、と調子にのっていたらこね上げ温度を計るのを忘れました、ごめんなさい、先生。

製パン  できるだけいいオリーブオイルを使えば風味がよくなります、という先生のお言葉に妙に感動する私。通信講座をイタリアで受けること早○○年、いつもいつも、材料が完全に揃わないのが悩みの種だったのに、ああ! 今回ばかりは最高級のオリーブオイルが簡単に使えちゃうのでーす。

 ホイロ代わりのオーブンは30度に設定し、霧を時々ふいて湿度を与えるようにする。50分後、生地を出してみると、お餅のようにぷんわりと膨らんで大きくなっている。白くつやつやとしたところに指を「ブスッ」と差し入れてみると、かすかに戻りがあるような感じで指の跡がしっかり残る。よし、発酵オッケー。

 次は分割、丸めである。DVDを見た時は、今回の丸めは先生の手が前後にチャッチャ、左右にグルグルっとダンスをするように丸めて、それを繰り返すといった感じで、また新しい別の技かあ~、難しそうだなあ、という印象だった。でもやってみると、意外と私もチャッチャとできるじゃない! 第1課からやってきた成果は、少しずつだけど身に付いているんだなあ、と嬉しくなってくる。

製パン  ベンチタイム後の生地をポンポン、と叩いて麺棒で丸く伸ばしたら、オリーブオイルを塗り、指で形をつけ、好みの具をのせる。テキスト通りのオリーブ、ローズマリーと粗塩の他、イタリアの子どもたちが絶対的に大好きなロッソ(トマトソースを塗って赤く=ロッソ、に仕上げること)も作った。ちなみにトマトソースと便宜上言うけれど、イタリアではピッツァやフォカッチャに塗るトマトのソースはタマネギ等を入れて煮込んだものではなく、トマトの水煮に塩とオリーブオイルを混ぜただけのものを指す。美味しく煮込んだトマトソースよりも、フォカッチャだけはなぜかこちらの方が美味しく仕上がるのです。

製パン  綺麗な焼き色がついてテーブルに並べておくと、招待した子どもたちも、同伴してきた親たちも、誰も褒めてくれないではないか! なぜ? なぜ?? 後でわかったのだが、それはあまりにおいし過ぎて、美し過ぎて、誰も私が、日本人である私が作ったとは思っていなかったからだそうだ。食べてみるとたしかにとても美味しい。冷めてもフワフワとやわらかく、粉の風味やオリーブオイルの香りもとてもいい。イタリア人シェフの夫も「こりゃうまい」とパクパク食べていた。フフフ、君たち見たかね、日本の、辻製菓製パン講座の実力を!!!

 調子に乗った私は翌日、ストレート法でパン・トラディショネルに挑戦する。と思ったら、いつも買い置きしてある硬質小麦の粉がないのに気がついた(フランス粉の代用として、硬質小麦8、軟質小麦2をミックスして使用している)。急いで近所のスーパーに買いに行くと、違うブランドのものしかないけれど、まあ、同じだろう、と買って帰る。ところがミキシングをしてみると、なんだか吸水加減が違うような感じ。はっきり言えないのだが、なにかが違う。その証拠に1速4分、2速2分が終了しても、生地は伸びがとても悪い。いくらリーンな生地はあまりミキシングを長くしないほうがいいとは言え、こんな状態ではまずいだろうと判断し、さらに2分ほどミキシングを続けると、どうにか、いつものように伸びて、穴があいたところがギザギザでない、という状態になった。よし、発酵容器に入れてホイロだ。おっとその前に、今回はちゃんとこね上げ温度を計ります。するとどうしたことでしょう、室温は23度なのに生地は27度もある。今回の場合はこね上げ温度の目安は24度だから、ずいぶん高い。どうしよう、冷やした方がいいのだろうか?? 発酵時間を短くすればそれでいいのかな??? と悩みながらホイロに入れる。

 テキストに記された通りの時間経過後、生地を見ると表面に穴がプツプツ空いている。指を差し入れてみると跡は残るのだけど、こんなふうに表面が汚いのは初めてだ。なぜだろう?? とまたまた頭の中は?でいっぱいになる。でもわからないのでそのまま分割し、成形(これはとてもうまく行った。第2課でライ麦入りバゲットを作った時とは大違い)。

製パン  ところが焼成に入る前にクープを入れようとすると、あれれ? なんだか発酵が行き過ぎたようなしなっとした感じがしなくもないではないか?? 焼いてみるとやっぱり、全然膨らまないし、クープも開かない。幸い、長くて大きいバゲットは全部天板にならばないので、ホイロ代わりのオーブンに入れられたのは最初の2本だけ。残りは室温で最終発酵させたので発酵の進みが遅く、焼き上がりは少しましだったという不幸中の幸い。

製パン  それにしても、焼き上がったパンはどれも膨らみが悪いし、先生のもののように反ってもいない。食べたら美味しかったけれど、バゲット独特のバリッとした皮もない。切って見てみれば先生のものと比べて気泡がとても小さいような気が。

 粉の違い、ミキシング時間の違い、温度の違いなどなど、いろいろな要因が重なった今回のパン・トラディショネルはちょっと失敗に終わった。パンの神様が、8課まで進んできて少し上手になった気になっていた私にお灸を据えたのだろうか? それにしても発酵恐るべし! もっともっとパンを焼かないといけない。

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