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『和食の知られざる世界』発刊にあたって
2013年12月26日

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新潮社から出版された『和食の知られざる世界』。

yoshikibook.jpgこの本のテーマに出会ったきっかけは、2004年の内閣官房長官・知的財産戦略本部でコンテンツ専門調査員に就任したことでした。いわゆるソフトパワーとして、さまざまなジャンルのコンテンツのなかに、「日本食」「和食」も入るだろうという議論がそこで交わされました。
そのなかで、当時、私は、ファッションやアニメのように、すでに出来上がったものを、海外に発信するのと、「食」とは決定的に違うということを主張しました。つまり、異文化間での「食」の伝達には「変換」作業が必要であり、その変換を実現するための「教育」の必要性、整備が欠かせないことを訴えました。

その後、2010年には、カリフォルニアの料理大学CIAで行われた3日間にわたる「日本の食文化」を紹介するコンフェランスの基調講演をすることになり、改めて日本の食文化を、歴史的に、地理的に紹介するため、自分なりの「日本の食文化」の見取り図を作ってみました(本書では、2章においてその骨格が活かされています)。

2011年に、日本食文化世界無形遺産検討委員として、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に向けた議論や調査にも参加しました。本年、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、日本の食文化への関心が高まっています。ただ、今回の登録を祝賀ムードのなか、イベントやお祭りのようなもので終わらせてはいけないとの思いも、同時に強く持ちました。食文化の保護・伝承という側面と、これから将来に向けて新しい食文化を創造していくという観点も必要なはずです。この時期に、あえて本書では、グローバルな視点から「和食」「日本の食文化」を考えてみました。とりわけ、私たちの専門である技術教育の観点から捉え直してみたかったのです。

本書で取り扱う「和食」は、ユネスコに登録される伝統的な側面ばかりではなく、むしろ、異文化のなかで、変容、変換し、「和食」の過去、現在を辿りながら、これからのグローバル時代のなかで、新たな日本の食文化の未来をデザインするためのヒントのようなものを提示できたら、との思いも込めました。
現在、辻調グループには、海外からの留学生諸君が数多く在籍しています。いまや、彼らの関心は、日本料理だけではなく、製菓、フランス料理、イタリア料理、中国料理にも向けられています。日本は、すでに海外の学生からも、食の総合的な学びが可能な国として注目を浴びつつあるということです。

そうしたなかで、カレーライスやラーメンが「和食」かどうか、という議論さえある意味ナンセンスだと思えてきます。重要なことは、日本で「生まれた」あるいは、変換されて発展、定着してきたさまざまな外来の食文化も含めて、日本の食文化を大きく見直す視点を持つということです。さらに、技術教育の観点から言うなら、異文化間で必要な食の「変換」を支える技術と背景になる教養を伝える、学びの技法を磨く必要があるでしょう。

また、国内において伝統を守るべき立場の方々には、さらなる研鑽を積んでいただき、伝統的なこの国の食文化は(さまざまな食材からその調理法、提供法にいたるまで)、まだまだ探求できる余地がいくらでもあるはずです。もともと、日本の食文化のパワーの源は、飽くなき好奇心と探究心であり、それこそが、「伝統と革新」の二つのエンジンを駆動させてきたものだと思います。

yochiki.jpgなお、本書では、議論をわかりやすくするために、辻調グループがニューヨークで運営している「ブラッシュストローク」をはじめ、タイプの違う様々なレストランや和菓子店も取材し紹介しました。日本の食の可能性は、その多様性にあるということを示したかったからです。
『和食の知られざる世界』は、現時点での、私の「和食」についての主張・意見をまとめています。この小さな新書から、グローバル化の中でさらなる進化をとげようとしている和食の世界の未来に向けたメッセージを込めました。つまり、本書は、これから食の世界のプロを目指そうとしている若い皆さんにこそ、読んで欲しいと願っています。
日本のこれからの食文化を皆さんと一緒に考え、議論するための一助になれば、教育機関の人間として、こんなに嬉しいことはありません。


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書 名:『和食の知られざる世界』 (辻芳樹 著)
定 価:720円(本体価格・税別)
ページ数:224ページ
発行:新潮社
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