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パティシエになるために学校で学ぶ意義とは?

どんな学校に通うべきか?

パティシエになるには、専門学校などで専門知識や技能を身につける、お店に就職して修業するなど、さまざまな手段があります。学校に行かなくても現場に出れば製菓の技術を身につけることはできます。では、あえて学校で製菓について学ぶ意義とは、どんなところにあるのでしょうか。

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パティシエになるには、専門学校などで専門知識や技能を身につける、お店に就職して修業するなど、さまざまな手段があります。学校に行かなくても現場に出れば製菓の技術を身につけることはできます。では、あえて学校で製菓について学ぶ意義とは、どんなところにあるのでしょうか。

学校でお菓子づくりを学ぶ意義とは

パティシエになるためには、必ず学校に通わなければいけないということはありません。実際に学校へは行かず、現場に出て経験を積むことで一人前になった人はたくさんいます。しかし、辻󠄀󠄀製菓専門学校の伊藤快幸先生、瀬戸山知恵美先生は、学校で製菓について学ぶことには次のような意義があると話します。

現場に出てから必要な知識を先取りして学べる

伊藤先生は、学校に通って製菓を学ぶことで、現場に出てから必要な知識を先取りできると言います。

伊藤「ただ決まった技術を磨きたいのであれば、学校に通うよりも現場に出たほうが早いでしょう。毎日同じルーティンワークをするので、たとえばケーキの基本の生地を1台つくるにしても、1年間現場で経験を積むほうが学校で習うよりも早く、安定してつくれるようになります。

ではなぜ学校で学ぶのか。それは、自分がつくりたいものを自在につくれるようになるからです。たとえば材料の特性を知っておくことで、お菓子をつくるとき、こんなアレンジをしたいからこの材料を使ってみようと発想ができるようになります。

さらに、将来自分で独立開業する目的を持っているなら、必要な知識を先に蓄えておくという意味合いも強いですね。お店では既にある商品のつくり方を知ることはできるでしょう。ただし、これまで取り扱ったことのないお菓子を商品としてつくってみたいと思ったとき、自分が勤めているお店でつくっていなければ、独学で勉強するか、つくっているお店に転職するしか方法がありません。

ですが、学校に通えばさまざまなお菓子づくりを経験します。そうした幅広い知識を覚えられる点で、学校に行く意義は大きいと思います。」

「製菓の勉強のしかた」を学べる

また、学校では「勉強のしかた」を身につけることができると瀬戸山先生は言います。

瀬戸山「この先製菓の世界で活躍していこうと思ったら、学校で『お菓子の勉強のしかた』をきちんと勉強するのは良い選択だと思います。

まずは、自分が知らないお菓子がまだまだたくさんあることを知る。そのお菓子をどうつくればいいのか、先生に聞いたり、図書室で調べたりといった方法で、自分がつくりたいお菓子をつくるにはどんな技術や表現方法を身につければよいかを学ぶ。

そうした『勉強のしかた』を学んでもらうのも学校の役割だと思っています。」

どんな学校を選ぶか

厚生労働省が指定する製菓衛生師養成施設は、高等学校、大学・短大、専修学校の3つに分かれています。製菓衛生師として必要な知識及び技能を1年以上習得することで製菓衛生師の受験資格が得られます。

辻󠄀󠄀製菓専門学校では次のような学科を設け、製菓の技術と知識の習得を目指します。

製菓衛生師の受験資格は、1年制・2年制いずれも1年次終了時に取得でき、2年制学科においては在学中の受験合格に向けてのサポートもおこなっています。

辻󠄀󠄀󠄀製菓専門学校 学科紹介

製菓衛生師本科(1年制) 1年間集中して基礎を徹底的に学び、
お菓子の世界で活躍するための土台を築く。
製菓技術マネジメント学科(2年制) 基礎から応用へ、技術に自信をつける2年間。洋菓子・和菓子・製パンの基本技術を身につけ、味の基準を知り、「自ら考え、行動できるプロ」になる。

辻󠄀󠄀製菓専門学校のカリキュラムの特徴とは

製菓衛生師養成施設では必須科目である8科目のほかに、各学校が設けた授業科目をあわせ、1年間あるいは2年間で習得していきます。

製菓衛生師養成施設の必須科目は次のとおりです。

衛生法規 30時間以上
公衆衛生学 60時間以上
食品学 60時間以上
食品衛生学 120時間以上
栄養学 60時間以上
社会 30時間以上
製菓理論 90時間以上
製菓実習 480時間以上

情報引用元:全国製菓衛生師養成施設協会

どの施設でも最低限上記の教育内容が課されるほか、各校それぞれに工夫をこらした独自性あるカリキュラムを提供しています。辻󠄀󠄀製菓専門学校で学べることにはどのような特徴があるのでしょうか。

「なぜこうするのか?」理論重視のカリキュラム

辻󠄀󠄀製菓専門学校の大きな特徴として、技術とともに理論重視のカリキュラムが組まれている点が挙げられます。

伊藤「辻󠄀󠄀製菓専門学校では実際に手を動かす技術の授業だけでなく、「どうしてそうなるのか?」を学ぶ理論の授業を重視したカリキュラムを組んでいます。

たとえば、生地の泡立て方によって空気が入る量が違ってくること、空気の量によって膨らみ方が変われば食感も変わることを伝えます。その中で、味、香り、食感、口どけのバランスがよい泡立て方を教えていきます。

バランスのよい泡立て方をベースとして覚えておけば、そこからもう少し泡立ててみたり、混ぜ方を強くしてみたりといったふうに、自分で加減がしやすくなります。好みでアレンジができるようになるのです。

どういう材料を使えばどんな状態になるのか、なぜその状態になるのかも理論の授業で教えます。現場に出て自分でお菓子をつくるときに、授業で学んだ理論が役立ちます。

辻󠄀󠄀製菓専門学校に入学してくる学生のほとんどは、自分でお店を持ちたいという夢を持っています。自分で自由自在にお菓子がつくれるようになるとおもしろくなる。私たちはその手助けをしたいと思っています。」

辻󠄀󠄀製菓専門学校では、ただ教えられた通りにお菓子をつくるのではなく、「なぜこうするのか?」を理論的に理解し実習を重ねることで、限られた1年間という短い期間で、もっとも効果的に、プロとして必要な力を身につけることに重点が置かれています。

食材について調べて、食べて、イメージする

とにかくお菓子を「つくる」ことが好きな人は、理論の授業というと難しく感じられ、不安になるかもしれません。辻󠄀󠄀製菓専門学校では、学習した理論が定着するようさまざまな工夫をしています。

伊藤「製菓理論が定着するよう、授業では先生から学生への一方通行で伝えるだけの授業でなく、グループワークも実施しています。

たとえば、ふだん強力粉でつくっているパンを、薄力粉でつくってみたらどうなるか?といった課題を出して、グループごとに調べてもらいます。ただ答えを先生が教えるのではなく、それまでに学んだ知識をふまえてグループで話し合い、仮説をたててみる。実際につくってみる。そして、実際に食べ比べをしてさらに話し合い、体験としてイメージをつかむような授業を取り入れています。

さらにつくったパンを自分がおいしいかだけを考えるのではなく、『お客様に求めてもらえるかどうか』という視点も持ち、『自分だったらこう思う』と1つの意見にたどり着いてもらえたらと思っています。」

学生同士で学びあう環境がある

独学では得られない「学校に通う価値」の1つが、学生同士で学びあう環境があることです。

瀬戸山「学生同士で教えあう環境も大切にしたいと思っています。先生が発信したことを学生がかみ砕いて伝えると、ほかの学生も意外とすんなり理解できることが多いのです。実習では自分自身が理解できているかどうかの確認もかねて、知っていることはお互いに伝えてもらっています。

授業以外でもSDGsの勉強をしようとなったら、どうやって勉強していくかというところから学生と一緒に考えています。学生との対話の中から私たちには思いもよらない意見が出ることも多く、とても楽しいです。」

「つくる力」と「考える力」を育む

辻󠄀󠄀製菓専門学校では、自分で「つくる力」と「考える力」を育んでいます。

瀬戸山「SNSで見たお菓子や今世の中ではやっているお菓子について、学生からどうやってつくればこんなお菓子ができるのか、聞かれることがあります。そんなとき、わたしは答えの一部分だけを教えるようにしています。知りたいことのヒントだけを与えて、学生自身に調べてもらうのです。

授業では基本的な生地をつくるところから始めますが、そうしたはやりのお菓子をつくるための技術は、基本ができていてこそ。お菓子の世界の楽しさを感じてもらいながら、一方できちんと学んでほしいと思います。

キラキラしたものを見つけたときの好奇心を、技術を学んで挑戦したいというエネルギーに変えてほしいですね。」

インターネット動画を見たり書籍を読んだりすることで、独学でお菓子づくりを学ぶことはできます。また、早く現場に出て技術を身につけるのも、一人前のパティシエになるための1つの手段といえます。

その前に「製菓に関する知識を身につけたい」「他者と支え合いながら学びを深めたい」という人は、製菓衛生師養成施設に通うのもよいでしょう。お菓子づくりに必要な技術や知識を得るには時間がかかります。学校ではそれらを体系的に学べるため、効率的に知識を得ることが可能です。

どの進路が自分にあっているかは、パティシエとして最終的にどうなりたいか、そのために自分には何が必要か、自分のキャリアパスを描きながら考えてみるとよいでしょう。

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