CAREER

パティシエの仕事に将来性はある?

多様化するジャンルと身につけたい知識やスキル

世の中の技術の進歩に伴って、食の世界でもデジタル化が進んでいます。調理用のロボットやAIの登場で、今後パティシエの働き方はどうなっていくのでしょうか。パティシエの仕事に将来性はあるのか。また、長きにわたって活躍するためにどんなスキルや考え方を身につければいいのか。パティシエの現在の需要や将来性について解説します。

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世の中の技術の進歩に伴って、食の世界でもデジタル化が進んでいます。調理用のロボットやAIの登場で、今後パティシエの働き方はどうなっていくのでしょうか。パティシエの仕事に将来性はあるのか。また、長きにわたって活躍するためにどんなスキルや考え方を身につければいいのか。パティシエの現在の需要や将来性について解説します。

多様化するパティシエの仕事

おいしいお菓子をつくってお客様を笑顔にするパティシエの仕事。「なりたい職業」ランキングでは常に上位に入る人気の職業です。

こうしたパティシエの活躍の場は、時代とともに変化していくお客様のニーズをとらえ、少しずつ変わってきています。辻󠄀󠄀製菓専門学校の伊藤快幸先生は、近年の傾向について次のように話します。

伊藤「最近の製菓店では、店頭だけで販売するのではなく、インターネットなどで通信販売をしているところが増えてきました。オープン当初からそうした販売形態を取っているところが多くなってきているようですね。

お菓子やパンはもともとイートインよりもお持ち帰りが多いのですが、より多くのお客様にお菓子をお届けするために、販売形態も変わってきています。」

パティシエの仕事の将来性

「人」にしかできない感性を磨くことで需要はなくならない

今後の人間の仕事はAIにとって代わられる。こんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。製菓の分野はどうなのでしょうか。たとえば30年後、製菓業界はどうなっているのでしょうか。辻󠄀󠄀製菓専門学校の瀬戸山知恵美先生は、「人」にしかできないことがあると答えます。

瀬戸山「30年どころか、もっと近いうちに味の組み合わせはAIが考えるようになるのではないでしょうか。味の構成は人間が考えるよりAIが考えたほうが、理想に近いものができるのではないかと思っています。

それでも、パティシエの需要はなくならないでしょう。たとえば、製菓の世界でも地産地消の考え方を取り入れて、フルーツや粉などを使用し、そこでしかつくれないようなお菓子を考える。製菓の知識と技術を持ったうえで、そうしたプラスアルファの価値を付け加えることができれば、活躍できる場はあるのではないでしょうか。」

素材を選んでお菓子をつくる仕事はAIやロボットでもできるかもしれません。しかし、お菓子にストーリーを加える仕事は人間にしかできないと瀬戸山先生は言います。では、こうしたストーリーや世界観を表現できるようになるには、どうすればいいのでしょうか。

瀬戸山「視覚から入る刺激として、お菓子に関する本を見たり、お菓子好きな人が運営しているSNSアカウントを見たりするようなことから始めるのもよいのではないでしょうか。しかし、お菓子の勉強だからといってお菓子に関わるものだけに限る必要はありません。

たとえば、絵画に興味があるとか、彫刻が好きだとか、美術の世界をのぞく。ファッションが好き、お菓子以外のものづくりが好き、どんな勉強をしても役立つと思っています。そうした自分の好きなものをどうお菓子につなげていくかを、考えてみてはどうでしょうか。」

将来にわたってパティシエとして活躍するために

パティシエとして将来にわたって活躍するためには、どんなスキルや考え方を身につければといのでしょうか。

衛生管理の知識を身につける

未来のパティシエの仕事を考えたとき、現在と変わらない大切なものがあります。それが衛生管理の知識です。

伊藤「お菓子はお客様の口に入るものです。特に小規模な製菓店に勤めたり個人でお店を持ったりする場合、お客様とつくり手が近い位置にいますので、安心して食べていただけるものをつくることが必要になります。

そのためには、製菓の技術はもちろんですが、目に見えない部分だからこそ衛生意識を高く持ってほしいですね。これは何年経っても変わりません。」

柔軟な考え方を持ち、情報を取り入れる

個人の嗜好がどんどん多様化している現代。お客様のニーズはもちろん、食の安全性、健康面への関心の高まりに対し、敏感である必要があります。

伊藤「今はSNSやインターネットでさまざまな情報を手軽に得ることができます。パティシエよりもお客様のほうがお菓子についてよく知っていることもあるでしょう。そうした知らない情報をキャッチしたときに、自分のなかにうまく取り入れられる柔軟性が必要ですね。

また、自分からもアンテナを張り巡らせて、積極的に情報を取り入れて活用できるようになってほしいと思います。パティシエとして活躍するためには、そうした世間の関心に興味を持って常に勉強していく必要があります。」

変化を受け入れて必要とされるパティシエに

時代の流れにあわせて変化しているのは、日本だけでなく海外でも同じです。たとえば、辻󠄀󠄀調グループがフランス校を置くフランスでは、次のような動きがあると言います。

伊藤「これまでフランスでは、フランスパンを工場で大量生産して安く売る傾向がありました。しかし、それが売れなくなってきたのです。

そこで、材料を吟味して、昔ながらの製法で時間をかけてつくるようになりました。使う材料を選りすぐって、安全や安心を提供する。そういう風潮になってきていますね。安いものを量産してきた反動から、人が考え、人の手でつくることで生まれるおいしさを追求するようになったのです。

そもそもパンは、できあがるまでに時間がかかります。たとえば、人々が休む夜間の時間に生地を低温の冷蔵庫に入れ発酵させて、翌日につくるようにする。そんなふうに製法が変わってきています。

入職した当初は長時間労働などは当たり前で、働き方にも課題があったのだと思います。働き手にも負担がかからないよう、かつ安全においしく食べられるよう、時代にあわせて製法を変えています。

日本でも、こうした流れは加速しています。」

お菓子業界ではまた、メインターゲットの変革も起きています。お菓子メーカーでは、従来主流だった子どもや若年女性から30〜40代の男女にターゲットを変え、大人向けのお菓子が開発されてヒットすることも増えています。少子高齢化にともない、市場の年齢層が変化する中で、今後はシニア向けの商品も模索されていくでしょう。

辻󠄀󠄀製菓専門学校の卒業生の中にも、時代の波に乗って自ら新しい活躍の場を切り拓いた人たちがいます。

トレンドを形に。人気のコンビニスイーツの開発に貢献

小跡芙美さんイメージ写真

コスモフーズ株式会社
小跡芙美さん インタビューはこちらから。

辻󠄀󠄀製菓専門学校からフランス校へ留学した小跡さんは、2000年に卒業後、神奈川・鎌倉の洋菓子店『レ・ザンジュ』に就職します。その後、カフェやホテルなどで経験を積み、2014年2月、洋菓子やデザート類の開発・製造などを行うコスモフーズ株式会社に転職。コンビニエンスストア「ローソン」のブランド、「ウチカフェスイーツ」の商品開発を担当することに。2019年3月に発売された「バスチー」は、3日間で100万個以上売れた大ヒットスイーツになりました。小跡さんは、「学校や現場での多彩な経験があったからこそ身についた応用力を活かすことができた」と話しています。

ブランクからの復帰。小さな工房でお菓子をつくってネット販売を開始

小跡芙美さんイメージ写真

pâtisserie COCORO オーナーシェフパティシエール
野口 育恵さん インタビューはこちらから。

1999年に辻󠄀󠄀製菓専門学校を卒業後、製菓事業を手がける企業で製造部チーフとして奈良の喫茶店『パイファクトリー』に勤務。その後は製菓の現場を離れ、結婚・出産を経て2011年に辻󠄀󠄀調グループに就職します。企画の仕事を担当する中で学生の熱意に触れ、「製菓の現場に戻りたい」と感じた野口さんは、小さな工房でお菓子をつくり、ブログを使ってネット通販を開始。現場に戻って、あらためて「この道で生きていきたい」と決意した野口さんは、夫・智邦さんとともに兵庫県西宮市で『pâtisserie COCORO』をオープンし、実店舗とオンラインショップでお菓子を提供しています。

時代にあわせて柔軟に変化しているパティシエの仕事は、今後もなくなることはないでしょう。一方で、多様に変化しているからこそ、どんな知識や技術を身につければいいのか、迷っている人もいるかもしれません。辻󠄀󠄀製菓専門学校では、将来パティシエとして活躍できることに重点を置き、製菓を学ぶことができます。プロとして必要な技術と知識を身につけながら、いつの時代にも通用するたくましさを育んでいきましょう。

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