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食のコラム&レシピ

【日本料理一年生】 37時間目 鯖そぼろ入りばら寿司

04<日本>日本料理一年生

2011.03.08

<【日本料理一年生】ってどんなコラム?>

鯖そぼろ入りばら寿司

●鯖そぼろ入りばら寿司●

本年度の『料理一年生』は、鯖を使ったメニューをご紹介しています。最後は私の取って置きのネタ「鯖そぼろ入りばらずし」についてお話いたしましょう!

さて、「ばらずし」と「ちらしずし」の違いは何でしょう。基本的には同じと考えられますが、関西を中心に、生の具材は使わないで、煮たり、焼いたりした具材を細かく切り、すし飯に混ぜ合わせたり、すし飯の上まんべんなく散らしたりしたものを「ばらずし」と呼び、関東を中心に、にぎりずしのネタを海鮮丼のように、すし飯の上に並べたものを「ちらしずし」と呼んでいます。

辻調グループ校のひとつ[エコール 辻 大阪]辻日本料理マスターカレッジでは、ほとんど毎日のように実習があるので、1年間の献立は膨大な数になります。毎年、年度末に次年度の年間計画を立てるのですが、京都府の京丹後地方出身のN先生から「地元の料理に、こんなのがあります。いかがでしょう。」と提案されたのが、「鯖そぼろ入りばらずし」でした。

とり松 ばらずし

●網野市「とり松」の「網野名物ばらずし」(吸物付・840円)●

本年度の初め、テーマが「鯖を使って」と決まったとき、私は、最後に世間であまり知られていない「鯖そぼろ入りばらずし」を紹介しようと決心し、昨春の雪が解けた頃を見はからって丹後、網野市の「とり松」という「鯖そぼろ入りばらずし」で有名なお店に取材に行ってきました。これで万全!と思っていたところ、コラムの公開より先に、日本料理のS先生が時折コメンテーターをされているバラエティー番組「秘密のケンミンSHOW」で、取り上げられてしまいました。この番組を見られた方、すみません!内容が重複するところがあります。どうしても二番煎じのようになってしまいますが……。

●木製重箱入りばらずし(2,730円)●

先ほどのN先生の話では、子どもの頃から家庭で作る「ばらずし」には、缶詰の「鯖の醤油煮」を砂糖などを使って少し甘く煮直した「そぼろ」を加えていたそうです。N先生は、「ばらすし」には鯖のそぼろが入るのが、この地方独特であることを、辻調に入学後に知ったそうです。

色々調べてみると、丹後地方では明治時代頃から日本海で大量に獲れた鯖を焼いて、そぼろ状にほぐしたものを、「ばらずし」の具の一つとして加えていたようですが、昭和30年頃から鯖の漁獲量が激減したため、一般の家庭では焼き鯖の代わりに缶詰の「鯖の醤油煮」を使うようになったそうです。

若狭や丹後の日本海近海は、昔から鯖の産地です。鯖に塩をあてて、鯖街道を担いで京都に運んだものが、前回お話した「鯖きずし」や「鯖松前ずし」になりました。その他、「焼き鯖」は、丹後では、今回ご紹介しているように「ばらずし」の具として使われます。

また、琵琶湖の北東にある長浜市では、昔から、農家が田植えで忙しい5月に、「五月見舞い」と称して、嫁の実家から嫁ぎ先に「焼き鯖」を贈る習慣がありました。そして、長寿を願って、この焼き鯖を素麺と一緒に煮た「焼き鯖素麺」が郷土料理として有名です。

少し前の休日に、「焼き鯖素麺」の写真を撮ろうと、名神高速を京都から長浜を目指しましたが、八日市を過ぎる頃には、高速道路以外、まわりが銀世界でした。愛車にチェーンは搭載していたものの、雪道に不慣れな私にとっては恐怖以外の何物でもなく、断腸の思いで、彦根インターチェンジでユーターンすることにしました。すみません!「焼き鯖素麺」の写真は、またの機会にお見せいたします。

さらに、最近テイクアウト弁当店として、急速に店舗展開を広げられている「ほっともっと」の献立の中に、「焼きさばほぐし弁当」(390円)があります。

●写真は、ほっともっと・焼きさばほぐし弁当(390円)●

これは、鯖を塩焼きにして身をほぐし、皮と骨を取り除いたものを、刻み海苔を散らした熱々のご飯の上に広げ、刻みねぎといり胡麻を振り入れ、竹輪の天麩羅、鶏から揚げ、きんぴら牛蒡を添えた弁当です。私のような「鯖大好き、混ぜ御飯大好き人間」は、安くておいしくて、重宝します。

<このコラムの担当者>

タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
小谷良孝

辻調の御言持(みことも)ち
重松麻希

<このコラムのレシピ>
鯖そぼろ入りばら寿司

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