【オリヴィエ・ローランジェ国際料理コンクール】2025年日本大会 本校学生がグランプリに輝く
2025年11月21・22日、北海道室蘭市・北斗文化学園にて開催された第4回【オリヴィエ・ローランジェ国際料理コンクール】日本大会において、辻調理師専門学校の学生が優勝いたしました。受賞した田中創士さんは昨年、同大会の高校生部門においても優勝しています。
本コンクールは2011年にフランスで創設されたものです。大会の主なる目的は、若い世代のシェフたちに海洋水産資源の脆さを伝えつつ、乱獲されていない魚介類を選んでもらい、海洋水産資源の保護に自らが果たせる役割を体験させること。日本大会では、国内の調理師養成校(専門学校及び高等学校)の在校生がエントリーの対象となります。
《グランプリ》
田中創士さん
辻調理師専門学校 調理師本科1年生
実技試験では、レストラン向け料理(制限時間2時間30分)、家庭向け料理(制限時間30分)の計2品を調理します。レシピは必ず持続可能な魚介類を中心に考えなくてはなりません。審査では調理技術、および味と盛りつけが総合的に評価されます。その後、使用した食材について、口頭プレゼンテーションにてそのサステナビリティを論証します。
●実技試験「レストラン向け料理」の解説●
使用主食材:ボラ、すじ青のり
今回はレストラン向け、家庭向けの両方、「ボラ」という魚がメインの食材です。サブテーマとして「ミリン」と「すじ青のり」を使用しています。
この料理はボラの中にボラのムースを詰め、ベーコンで巻いて焼き上げた一品です。
ボラは身の食感に特徴がある魚です。その魅力を活かすために「焼く」という調理法を選びました。ただし、少々肉質がかたいので内部にムースを仕込むことでやわらかさを加えています。また、ボラは鯛などに比べて風味にクセがあり、それを和らげるためにムースにすじ青のりを加えました。すじ青のりは、環境に配慮した養殖を行う生産者のものにこだわっています。一般的な青のりの約4倍もの香り成分を含むすじ青のりは、まるで香草のように料理に爽やかな香りを添えてくれます。
●実技試験「家庭向け料理」の解説●
使用主食材:ボラ、チーズ、トマト、アスパラガス
春巻きを西洋風にアレンジし、具にはボラ、チーズ、トマト、アスパラガスといった洋の食材を組み合わせました。
この料理の主役はシーズニングです。すじ青のりをベースに一味とうがらし、ゆずの皮、カルダモン、塩を加えています。春巻きそのものには強い味付けをせず、すじ青のりの豊かな香りを楽しんでいただけるよう工夫しました。
一方で、春巻きのサイズ感を決めるのには苦労しました。絞り部分と具が詰まった部分のバランスが料理の美しさを左右するため、1cm単位で調整を重ねて完成させています。これほど精密な作業は初めての経験であり、特に難しい挑戦でした。本番では30分という限られた時間の中で、食材を切るところから仕上げまで細心の注意を払いながら取り組みました。
●受賞の感想●
昨年の高校生部門で優勝したことで「今年はさらに成長を示さなければならない」というプレッシャーを感じ、大会直前には気持ちが沈みがちになることもありました。
授賞式で自分の名前を呼ばれた瞬間は、とても嬉しかったです。その時に思い浮かんだのは友人の存在でした。直前に風邪をひいて準備に困っていた私を支えてくれたのが友人で、手伝ってもらいながら話すうちに気持ちも軽くなり、「友達のために優勝して帰ろう」という前向きな力をもらえました。
先生からも熱心なサポートをいただきました。時には厳しい指導もありましたが、春巻きの長さを細かく記録してくださったり、ご自宅で試作までしてくださったりと、技術面だけでなく、精神的にも支えていただいたことに深く感謝しています。先生の姿を見て、「僕もやるしかない」と覚悟が固まりました。
今回の大会では昨年以上に食材の相性を突き詰めて考えることに力を注ぎました。間違いなく美味しくなる組み合わせを前提に、自分の色やコンクールらしさを取り入れることができたのは、辻調理師専門学校で学んだ成果だと思います。
さらに、料理を考える中で友人と意見を交わし、新しい発見を得られたことは、高校時代にはなかった経験で、とても楽しかったです。時には白熱して言い合いになることもありましたが、異なる感性を持つ友人と向き合ったことが、自分の成長に繋がったと実感しています。これから料理を続けていく上で、「仲間と共に考えること」が最も大切なことになるのではないかと思います


