CAREER

調理師の仕事内容が知りたい!

食の現場で担う重要な役割とは?

あなたは「調理師」という職業に、どんなイメージを持っていますか?テレビドラマなどで見るような、レストランやビストロの厨房で調理をする姿でしょうか。それとも、大勢の料理人を率いてパーティーの料理を作るホテルの料理長を思い浮かべるでしょうか。「食」にかかわる現場で、調理師はどんな仕事をしているのか、どんな役割を果たしているのか、紹介します。

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あなたは「調理師」という職業に、どんなイメージを持っていますか?テレビドラマなどで見るような、レストランやビストロの厨房で調理をする姿でしょうか。それとも、大勢の料理人を率いてパーティーの料理を作るホテルの料理長を思い浮かべるでしょうか。「食」にかかわる現場で、調理師はどんな仕事をしているのか、どんな役割を果たしているのか、紹介します。

調理師の主な勤務先

調理師の活躍の場はレストランやホテルだけにとどまりません。辻󠄀󠄀󠄀調理師専門学校の先輩たちは学校を卒業したあと、次のような職場に就職しています。

ホテル、レストラン・料理店、カフェ・喫茶店、病院、結婚式場、食品工場やケータリングサービス、料理教室

このうち給食は、学校だけでなく病院、老人福祉施設など就職先はさまざまです。レストランやホテルで経験を積んだあと、独立して自分の店を持つ人もいます。また、テレビの料理番組に出演したり、CM用の料理をつくるようなプロデューサー的な立場で料理に携わる人もいます。

調理師の活躍の場をより詳しく知りたい場合は、こちらの記事で解説しています。

調理師に求められる役割

調理師が現場で果たす役割について、公益社団法人全国調理師養成施設協会では次の点を挙げています。

・バランスがとれた食事を提供することで、人々の健康を維持し増進する。
・安全な食品を見極め、衛生的に調理することで、食の安全性を確保する。
・伝統的調理技術や調理様式などを受け継ぎ、さらに新たな調理法を創造することで、食文化継承の役割を担う。
・食をめぐる環境や食と健康の関係性への理解を深め、それらを人々に伝える"食育"を実践していく。
・おいしい食事と空間を提供することで、喜びや心の豊かさを提供する。

情報引用元:公益社団法人全国調理師養成施設協会

こうした役割を果たすためにも、調理師は食品衛生や栄養、調理科学、食文化など、さまざまな知識を身につける必要があります。

おいしい料理で心を豊かにする

おいしいものを食べることで笑顔になったり、幸せになったり。食は、人間にとっての「楽しみ」であり、人生を豊かにしてくれるものです。

「食のプロ」である調理師に、人々はどんな期待をしているのでしょうか。辻󠄀󠄀󠄀調理師専門学校の高岡和也先生は、調理師の役割について次のように話します。

高岡「日本では、どこでも『安くて美味しい』料理が食べられるようになりました。そんな時代に調理師が存在する価値はどこにあるか。私は、調理師はお客様の『ハレの日』を豊かにする存在であるべきだと思っています。

どこへ行っても一定以上の美味しい料理が提供される中で、料理が出てきただけで嬉しくなる、ひと口食べただけで感動させられるような調理の技術が求められています。

そうした技術は調理師学校で理論と実践を同時に学び、自分で考える力を養うことで身につくと考えています」

衛生管理を徹底し、食の安全性を確保する

店舗や料理の衛生面を管理するのは、調理師の大切な役割です。辻󠄀󠄀󠄀調理師専門学校の岡本健二先生は、2019年に開催された「G20 大阪サミット」で各国首脳にふるまうディナーの調理を担当しました。当時の様子を振り返りながら、衛生管理について語ります。

岡本「G20の調理を担当したときにはハラル料理を扱いましたが、ハラル料理はイスラムの厳格な基準に基づいて、徹底した衛生管理を行わなければいけません。ハラルと一般の料理が廊下など同じ空間内ですれ違うのも許されなかったので、完全に密閉された環境で調理をしました。

ふだん、ホテルで行われているような検食もいつもより厳しく行うなど、一切妥協を許さないような状況でものごとが進んでいきましたが、規模が大きくなっただけで、基本は変わりません。ふだんやっていることを、いつも以上にきっちりやっただけですね。

料理を作るという印象が強い調理師ですが、衛生管理も重要な役割のひとつです。飲食業界は食中毒など食の安全に非常にシビアな世界なので、どんな場面においても衛生管理を徹底できるよう、調理師であれば衛生管理の知識は必ず身につけておく必要があります。

私たちは、調理の技術以上に衛生管理はプロとしての基本と考えて、指導をしています」

食を「文化」として伝える

人間が生きる上で、「食」は欠かせないものです。健康を維持するための「食べる」という行為には、食の安全や栄養の観点が重要です。食べ物の「機能性」は大切ですが、食にはもうひとつ、「文化」という側面があります。

日本食という文化についていえば、2013年、日本人の伝統的な食文化である「和食」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。これを受けて、国内でも食文化を振興するためのさまざまな取り組みが行われています。

調理師の仕事内容

調理師の仕事は食材を調理することに加え、仕入れや片付け、衛生管理といった調理以外の仕事も含まれます。また、仕事内容は、職場によってさまざまな特徴があります。

まず、小・中規模の個人店の場合、一般的には小規模の店舗ほど仕事が分業化されておらず、スタッフ一人がかかわる作業の幅が広いといえます。料理人とサーヴィスでは、大きく仕事内容が変わります。ジャンルは、レストラン、料亭、居酒屋、カフェ、などさまざまです。

次に企業の場合、一般に個人店と比べはるかに大量の調理に携わることが多くなります。新メニューの開発では、企画・開発部門と調理部門が連携してプロジェクトを進めます。

さらに、枠を超えた食の仕事も多くあります。雑誌やCMなどにかかわるフードコーディネーターや、フードスタイリスト、フードライターなど、食を取り巻くメディアでの活躍には、正確さと即効性が重視されます。

調理師のワークライフバランス

将来の進路を考えるとき、プライベートの時間を確保するため「ワークライフバランス」を意識する人も多いのではないでしょうか。
2019年度に辻󠄀󠄀󠄀調理専門学校に来ている求人の平均休日数は、100日となり週休2日に近い休日が取れていることを示しています。
個人店などでは、就職してから数年の修業のあいだは仕事を覚えるために早めに出勤したり、残業をしたりすることもあるでしょう。

ホテルに勤める料理人の場合は、大きな宴会がある場合には前日から泊まりがけで仕込みをしたり、早朝に出勤したりすることがあります。時間帯は不規則に見える一方で、休日はしっかりとることができます。

岡本先生は、調理師の仕事には体力が必要だと話します。

岡本「レストランなど個店では、昔から労働時間や労働環境が問題にされてきました。以前に比べればいろいろな面で改善されてきていますが、時代が変わっても、そうした体力面での厳しさはあります。

そうは言っても、実際に体力面でのきつさを感じるのは、特に最初の1〜2年です。料理人になったばかりの頃は覚えなければいけないことが多くて作業だけに集中することができないために労働時間が多くなりがちです。

3年経つ頃には慣れてくるのと、自分のできることが格段に増えてくるので、料理人を目指した頃にやりたいと思っていたことが少しずつできるようになっていきます。ですから、勝負は最初の1〜2年だと思って頑張ってほしいですね」

いま、あらゆる職種で労働条件の改善が行われているように、飲食業界でも勤務時間が長くて当たり前という考えの経営者は少なくなってきています。時代とともに、飲食の現場でも働き方が変わってきているのです。

調理師養成施設で調理の知識や技術を学んだからといって、就職してすぐにすべての仕事を任されるわけではありません。洗い場や下ごしらえから始まり、徐々に責任ある仕事にステップアップしていくことで、一人前といわれるようになります。

就職して最初の数年間を乗り越えることで、料理人として成長することができるでしょう。

調理師の役割や仕事内容は多岐にわたる

料理の現場に飛び込んだあと、調理師は経験やスキルに応じてだんだんと責任ある仕事を任されるようになっていきます。それぞれの仕事にしっかり取り組むことで専門性を身につけ、料理人として成長します。

料理を通してお客様の心を豊かにしたり、お客様に安心して料理を召し上がっていただくために衛生管理をしたり。調理師は、調理以外にも重要な役割を果たしています。

調理師として多岐にわたる仕事や役割を確実にこなすためには、食に関する基礎知識や調理技術をしっかりと身につけることが大切です。そのうえで、自分らしくいきいきと働ける仕事を選びましょう。

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