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【半歩プロの西洋料理】楽しさいっパイ!?パイ包み料理!

01<西洋>半歩プロの西洋料理

2011.09.02

<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>


こんにちは!
まだまだ残暑が続く今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか?
昨日、9月1日から夏休みを終えた学生が登校してきています。
料理や製菓の業界では、一旦就職すると長い休みを取ることが難しくなりがちですから、多くの辻の学生達にとって、この夏休みはいわば「最後の夏休み」ともいえます。
たくさんアウトドアで遊んだのか、日焼けで真っ黒(真っ赤?)な学生や、終盤まで遊びすぎてまだまだ体が本調子ではない様子の学生、はたまたレストランで1ヶ月まるまる研修してきてやる気満々の学生など、いろんな学生がいますね。
かくいう自分もご他聞にもれず、フランス校生だった2008年の夏は3週間のヴァカンス(休暇)、「最後の夏休み」を楽しみました。
真夏のニースの素晴らしさに感動したり、駅や空港でのフランス人スタッフの対応の適当さにウンザリしたりもしたのですが、そういった困難も今では良い思い出です。
何といってもフランス校の魅力の一つは、有名レストランへも日本から比べればわずかな時間で行けることです。ヴァカンスではいろいろな店に食べ歩きに行きましたが、中でも思い出に残っているのはやっぱりココ!
かの有名な「レストラン ポール・ボキューズRestaurant Paul Bocuse」注1です!

 

「ポール・ボキューズ」のスペシャリテは非常に多く、どれもが一度は食べるに値する逸品ばかりなのですが、中でも代表的な料理として、パイ包み料理があります。

まずはスープ料理から
「スープ・オ・トリュフ・ノワール ヴェ・ジェ・ウ Soupe aux truffes noires V.G.E. (黒トリュフのスープ)」注2

そして魚料理では
「ルー・アン・クルート、ソース・ショロンLoup en croûte, sauce Choron
(スズキのパイ包み焼き、ソース・ショロン添え)」注3


これらの2品を食べたときに「あぁ、料理をパイで包むとこんなに美味しさが増すんだ!」
と、感動しました。
…もちろん、ただ包めばいいという訳ではなく、料理人の腕あってこその味ですが(笑)
パイ包み料理は生地で包んで素材に火を通すため、素材の持つうまみや香り、風味を閉じ込めることができ、また、素材に熱が間接的にあたるのでしっとりと焼き上げることができます。
また、そこに香ばしく焼けたパイの風味とサクサクした食感が加わるのも、味わいを高めるポイントですね。
そして、パイ包み料理には演出効果を高める力があります。
先ほど紹介した「黒トリュフのスープ」などがそうですが、パイに包まれた状態で提供されるので、中にどんなものがあるのかが一目では見えず、お客様の期待を高めます。そしてナイフを入れた瞬間に中の料理の凝縮された香りが立ち昇り、お客様の歓声とともに、初めて料理が完成する、という訳です。
あとは、こちらも先ほど紹介した、「ルー・アン・クルート」などの料理はサーヴィスの人がお客の目の前でデクパージュして盛り付けてくれるので、これも演出としてかなりの効果があります。注4
美味しさはもちろん、驚きと楽しさを提供してくれるパイ包み料理は、普段とはちょっと違ったハレの日の食卓にぴったりだと思いました。

今回みなさんに紹介する「パイ包み料理」は、夏が終わり今から段々と旬を迎えるキノコと合鴨を使って作ったミートパイを紹介したいと思います。
小さなパーティーやお祝い事のときなどにこれを作れば、あなたが会の主役になることは間違いありません!!

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注1 レストラン ポール・ボキューズ
フランス南東部リヨン郊外のレストラン。現代フランス料理界の重鎮、ポール・ボキューズがオーナーを務め、
1965年以来、ミシュランの三ツ星を45年以上維持している。

オーナーのポール・ボキューズ氏


レストランの敷地内の壁画には、ボキューズ氏と交流の深かった先代の辻静雄校長先生の姿も見える

注2 スープ・オ・トリュフ・ノワール ヴェ・ジェ・ウ
1975年のレジオン・ドヌール勲章受勲に際してのエリゼ宮における午餐会で、ボキューズ氏が当時の大統領
ヴァレリー・ジスカール・デスタンValéry René Marie Georges Giscard d'Estaing氏に捧げたスープ。
料理名の「V.G.E.」は大統領の名前の頭文字から。

注3 ソース・ショロン
卵黄と澄ましバターで作った泡状のソースに、香草やトマトで風味付けしたもの。
19世紀パリのレストラン、ヴォワザンVoisinのシェフ、アレキサンドル・エティエンヌ・ショロンAlexandre Étienne Choronから名前がつけられた。

注4 デクパージュ
フランス語で「切り分けること」を意味し、レストランなどではお客の目の前で料理や菓子を切り分け、皿に盛り付けてサーヴィスすることを指す。

担当者情報

このコラムの担当者
三浦 拓真
このコラムのレシピ
合鴨の温かいパテ、りんごのソース