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【独逸見聞録】砂糖の原材料と製造工程 ~砂糖(其の壱)~
2015年10月23日

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<【独逸見聞録】ってどんなコラム?>


製菓・製パン、調理は勿論、保存食を作ったり、温かい飲み物に入れたりと、砂糖(Zucker:ツッカー)は日常の様々な場面で活躍している。
砂糖の二大原料は「テンサイ(甜菜)」と「サトウキビ(砂糖黍)」である。
精製された高純度の砂糖では、その成分は殆ど同一であるが、それ程純度の高くない製品の場合には、非糖分物質に含まれている原材料の風味や特性が現れる。
今回は、砂糖や糖蜜(Melasse:メラッセ)、シロップ(Sirup:ズィールップ)などの甘味料の原材料、そして製造過程による製品の相違や特性について紹介する。

★砂糖の原材料
砂糖の成分は、植物の中にだけ貯えられている天然成分の「ショ糖(スクロース)」で、ドイツ語では、ザッハローゼ(Saccharose)という。
二大原料は「テンサイ」と「サトウキビ」であるが、精製された高純度の砂糖では、その成分はほぼ同一である。
ドイツで生産、消費されている砂糖は、テンサイを原料としている「リューベンツッカー:Rübenzucker」が、その大部分を占めている。そのため、紙袋や紙箱、ビニール袋などのパッケージ上に、特に但し書きのないものは大抵テンサイ糖である。
それ以外の場合は、その植物の写真やイラストと共に、材料名が掲げられている。
例えば、サトウキビに由来する砂糖には、「ローァツッカー:Rohrzucker」、または「ローァ:Rohr」の文字が表記されている。

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様々な原材料から作られた砂糖や糖蜜などの甘味料(Süßungsmittel:ジュースングスミッテル)。

☆テンサイ(Zuckerrüben:ツッカーリューベン)
テンサイは、温帯から寒帯で栽培されるアカザ科の二年生植物で、サトウダイコン(砂糖大根)やビートとも呼ばれる。

☆サトウキビ(Zuckerrohr:ツッカーローァ)
サトウキビは、亜熱帯から熱帯で栽培されるイネ科の多年草。

☆サトウカエデ(Zuckerahorn:ツッカーアーホァン)
サトウカエデは、カエデ科カエデ属の落葉高木。
その樹液を濃縮した甘味料がメープルシロップ(Ahornsirup:アーホァンズィールップ)で、カナダ産が有名である。また、常温で固体状になるまで濃縮されたものをメープルシュガー(Ahornzucker:アーホァンツッカー)と呼ぶ。

☆サトウヤシ(Zuckerpalmen:ツッカーパルメン)
サトウヤシは、ヤシ科アレンガ属に属する常緑高木。別名シュガーパーム。
パームシュガー(ヤシ糖)は、パルムツッカー(Palmzucker)、ココスツッカー(Kokoszucker)、ココスブリューテンツッカー(Kokosblütenzucker)などと呼ばれ、ココヤシ(Kokospalmen:ココスパルメン)、オウギヤシ(Palmyrapalmen:パルミラパルメン)、ニッパヤシ(Nipapalmen:ニパパルメン)など、ヤシ類の花序や幹の樹液から採取される。

☆リュウゼツラン(Agaven:アガーヴェン)
リュウゼツラン属は、リュウゼツラン科の単子葉植物の分類群。メキシコを中心に中南米の熱帯域に自生する。その樹液を濃縮した甘味料がアガベシロップ(Agavesirup:アガーヴェズィールップ)である。
因みに、アガベシロップの主成分は、果糖とブドウ糖である。

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サトウキビを原料とする砂糖類(左)と、サトウカエデやサココヤシ、アガベ由来の甘味料(右)。

★砂糖の製造工程
原材料の種類によって、製造工程は少しずつ異なる。
ドイツ国内でも栽培が盛んで、ヨーロッパで最も一般的なテンサイ糖の製造工程を紹介する。

■テンサイ糖の製造工程
収 穫
テンサイの収穫は、9月頃から開始される。

洗浄・裁断
土砂などの付着物の洗浄後、糖分を抽出し易くするため、裁断機で細長く切断する。
細切りにされたテンサイは、「リューベンシュニッツェル(Rübenschnitzel)」と呼ばれる。

浸 出
水に浸して温める(約70℃)と、糖分が溶け出してくる。
この浸出液のことを「ローザフト(Rohsaft)」と呼ぶ。

浄化・濾過
ローザフトを浄化し、濾過すると「デュンザフト(Dünnsaft)」が得られる。

濃 縮
デュンザフトを加熱し、水分を蒸発させる。濃縮された液体は「ディックザフト(Dicksaft)」と呼ばれる。

結晶化
真空状態でディックザフトを結晶化(煎糖)させる。褐色の「糖蜜(Melasse:メラッセ)」で覆われた砂糖の結晶が現れる。

分 蜜
遠心分離機に掛けて、結晶の表面から糖蜜を分離させる。
この精製作業は「アフィナティオン:Affination」と呼ばれる。こうしてできあがるのが「白砂糖(Weißzucker:ヴァイスツッカー)」である。

純化・精製
ヴァイスツッカーを溶解して、再び結晶化させる。最終の純化・精製作業は「ラフィナティオン(Raffination)」と呼ばれ、高純度・高品質の「Raffinade(ラフィナーデ)」ができあがる。

乾燥、冷却後、サイロに保管される。
80%は菓子や飲み物など工業製品に使用される。
残りの20%は、様々な種類の家庭用砂糖に再加工した後、包装される。

★精製の純度による砂糖の分類
☆フォルツッカー(Vollzucker)
フォルツッカーは、糖分を含む植物の汁を完全なまま、丁寧に煮詰めて、乾燥させたものである。
浄化・精製されないので、粗糖(Rohzucker:ローツッカー)よりもミネラル成分、微量元素や糖蜜(Melasse:メラッセ)を多く含み、独特の風味を持っている。

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フォルローァツッカー(Vollrohrzucker)は、純粋なサトウキビの搾り汁を、丁寧に煮詰めたキビ砂糖。

☆ローツッカー(Rohzucker)
ローツッカーは、糖分を含む植物の汁を丁寧に煮詰め、浄化した砂糖である。一般的な砂糖と比較すると、純度がそれ程高くないので「粗糖」と呼ばれる。
テンサイやサトウキビなどの原材料中に自然に含まれている糖蜜の層が、砂糖の結晶を覆っているため、黄褐色をしていて、穏やかな風味を持つ。精製された砂糖と比べると湿気があり、保存性が低い。

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ローローァツッカー(Rohrohrzucker)は、精製されていないサトウキビの粗糖である。

☆ファリン(Farin)
ファリンまたはファリンツッカー(Farinzucker)は、精製の過程で作られる、細かな粉状の砂糖で、黄色から褐色に色付いている。少量の転化糖(Invertzucker:インヴェァトツッカー)を含み、穏やかなモルトの風味を持っている。

☆ヴァイスツッカー(Weißzucker)
ヴァイスツッカーまたはアフィナーデ(Affinade)は、粗糖をアフィナティオン(Affination:精製・洗浄)することによって作られる白い砂糖である。
これを更に純化させると、ラフィナーデ(Raffinade)になる。

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ヴァイサー・ローァツッカー(Weißer Rohrzucker)は、サトウキビから作られる白い砂糖である。

☆ラフィナーデ(Raffinade)
クリスタルツッカー(Kristallzucker)とも呼ばれ、日本のグラニュー糖に相当する。
テンサイまたはサトウキビから精製される、高純度、高品質の砂糖で、粗いものや細かいものなど、様々な大きさの粒子に製造される。
ドイツで使われている砂糖には、大抵の場合このラフィナーデ、またはその加工品が用いられている。
飲み物の甘味料や、製菓・製パン、調理など、殆どの用途に適合する。

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ファインツッカー(Feinzucker)は一番需要の高い砂糖で、その粒子は細かい。

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ファインスター・ツッカー(Feinster Zucker)の粒子は、ファインツッカーよりも更に細かい。

☆カンディス(Kandis)
カンディスは、高濃度の純粋な糖液の中で、小さな砂糖の結晶核を、ゆっくりと時間を掛けて再結晶させた氷砂糖である。
同様に、カンディスツッカー(Kandiszucker)、カンデルツッカー(Kandelzucker)やツッカーカンデル(Zuckerkandel)とも呼ばれる。
透明感のある白色から、琥珀色、褐色まで、様々な大きさや形状の氷砂糖が製造されている。
黄褐色のゲルバー・カンディス(Gelber Kandis)は、着色するためにカラメル色素(Zuckercouleur:ツッカークゥレーァ)を使用している。それに対して、褐色のブラウナー・カンディス(Brauner Kandis)は、糖液を褐色になるまで加熱しているので、キャラメル風味を持つ。

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上段はキャラメル風味を持つ褐色の製品、下段は透明感のある白色の製品で、
様々な大きさ、形状の氷砂糖。

◆ヴァイサー・カンディス(Weißer Kandis)
ヴァイサー・カンディスは、純度の高い白い氷砂糖である。
高濃度の澄んだ糖液の中で、ゆっくりと時間を掛けて結晶化させる。
透明感を保つため、減圧して低温沸騰させ、濃縮時のカラメル化を防いでいる。
コーヒーや紅茶などの温かい飲み物や、自家製の果実酒(Aufgesetzter:アウフゲゼッツター)の製造などに用いられる。

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ヴァイサー・カンディスは、高純度の白い氷砂糖である。

◆ブラウナー・カンディス(Brauner Kandis)
ブラウナー・カンディスは、典型的なキャラメル風味を持つ褐色の氷砂糖である。
高濃度の糖液を褐色になるまで加熱した後、ゆっくりと時間を掛けて結晶化させる。
褐色のリキュール類や、グロック(Grog)やグリューヴァイン(Glühwein)、プンシュ(Punsch)などの、
アルコール入りの温かい飲み物に利用される。

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ブラウナー・カンディスは、キャラメル風味を持つ、褐色の氷砂糖である。

◆シュタンゲンカンディス(Stangenkandis)
シュタンゲンカンディスは、キャラメル風味を持つ、褐色の大きな氷砂糖である。
高濃度の糖液を褐色になるまで加熱した後、糖液を満たした容器中の棒(Stange:シュタンゲ)にくっ付く様に、ゆっくりと時間を掛けて大きな結晶を成長させる。
製造過程の最後に、棒から結晶を叩き落すことによって、大きめで不規則な破片になる。

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シュタンゲンカンディスは、キャラメル風味を持つ、大きめで不規則な形状の、褐色の氷砂糖。

◆クリューメルカンディス(Krümelkandis)
クリューメルカンディスは、細かく砕かれた氷砂糖で、グリュメルカンディス(Grümmelkandis)とも呼ばれる。上記のシュタンゲンカンディスと同様の製造工程を経た後、大きくて不規則な塊を細かく砕いてから篩に掛ける。
コーヒーや紅茶などの甘味料としては勿論、レープクーヘン(Lebkuchen)などの、香辛料の効いた焼き菓子にも好んで利用される。

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クリューメルカンディスには、キャラメル風味を持つ褐色の結晶の他、白い結晶の製品もある。

◆クルステンカンディス(Krustenkandis)
クルステンカンディスは、カンディスヴァネ(Kandiswanne)と呼ばれる、大きな専用容器の中で製造される。大きな結晶を成長させるには、時間と静けさが必要である。
成熟後、この結晶は砕かれ、挽かれて、包装前に好みの大きさに合わせて、篩に掛けられる。
ブラウナー・カンディスと同様に、温かい飲み物に利用される。

◆クルンティエ・カンディス(Kluntje Kandis)
クルンティエ・カンディスは、大きくて透明なクリスタルタイプの氷砂糖。
この氷砂糖の独特の名称は、ドイツ西北の沿岸部のオストフリースラント地方(Ostfriesland)に由来する。この地方で好んで飲まれている、オストフリーゼンテー(Ostfriesentee)と呼ばれる紅茶に、甘みを付けるのに使用される、専用の氷砂糖である。
先ず、紅茶のカップにクルンティエを1個入れ、その上から濃くて熱い紅茶を注ぐ。液状の生クリーム(Sahne:ザーネ)を専用のスプーンで静かに浮かべて、掻き混ぜずに楽しむのが、伝統的な飲み方である。

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クルンティエ・カンディスは、大きくて透明な氷砂糖で、主に紅茶に使用される。

◆カンディスファリン(Kandisfarin)
カンディスファリンは、氷砂糖を製造する際の褐色のシロップ(Kandissirup:カンディスズィールップ)から作られた、小さな結晶の砂糖である。
他の氷砂糖と比べると、粒子が細かくて溶け易いので、製菓材料として利用されている。

◆カンディススティック(Kandisstick)
カンディススティックは、氷砂糖の小さな結晶が、木製の細長い棒の先に纏まって付いている。
紅茶などの温かい飲み物に、甘みを付けるのに利用される。
柄の部分を持って掻き混ぜ、好みの甘さになるまでゆっくり時間を掛けて溶かす。

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カンディススティックには、白い結晶とキャラメル風味を持つ褐色の結晶の製品がある。

☆ブラウナー・ツッカー(Brauner Zucker)
ブラウナー・ツッカーはその名の通り、褐色の砂糖(ブラウン・シュガー)である。
原材料や作業工程など、大きく分けて3種類ある。
1.純粋なサトウキビのシロップから作られたもの。
2.テンサイとサトウキビを混合したシロップを結晶化したもの。
3.純粋なテンサイのシロップを結晶化させた白いグラニュー糖を、サトウキビのシロップで覆ったもの。

結晶同士がくっ付いて塊になり易い傾向があるが、軽くパッケージの上から押せば、崩れて元の状態に戻る。
ブラウナー・ツッカーの濃い色やキャラメル風味は、ナッツ類、チョコレートやドライフルーツ、香辛料などと組み合わせて、クリスマス時期の焼き菓子に利用されることが多い。

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ブラウナー・ツッカー(Brauner Zucker)は、テンサイとサトウキビ由来のブラウン・シュガー。

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ブラウナー・ローァツッカー(Brauner Rohrzucker)は、サトウキビ由来のブラウン・シュガー。

このコラムの担当者

Kimiko Kochs

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