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世界が求める日本とは? ~『和食の知られざる世界』 トークイベント~
2014年03月31日

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昨年末に発行された「知られざる和食の世界」。

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1月15日、代官山蔦屋書店にて、コンテンツメディアプロデューサーの櫻井孝昌さんをお迎えして、著者である辻芳樹校長とともに、ファッションやアニメといった世界で注目される日本のコンテンツと見比べながら、和食について少し違った角度から考える機会を持つことができました。

出版社の編集者として料理本なども手掛けられたことのある櫻井さん。辻調の本を担当していただいたこともあります。『世界カワイイ革命』『アニメ文化外交』ほか、ポップカルチャーに関する著書は多数。外務省のアニメ文化外交の派遣講師も務められ、25カ国のべ126都市で文化外交活動中で、現在も世界中を回っていらっしゃいます。

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今回は、そんな櫻井さんからの質問に校長が答えるかたちでイベントが進められましたが、

まさに冒頭、直球な質問が、櫻井さんから投げかけられました。

●世界が求める日本っていったい何だろう?

櫻井さん自身、世界を回っていて非常に和食がブームになっていることをリアルに感じることが多く、ロシアのモスクワなどでは日本人が経営している店はまだ少ないけれど、日本食のお店が数千はある。そんな風に、世界の中で日本食がブームになっていることを、実はほとんどの日本人は知らない。

世界から日本が愛されていることに気づいていない。

日本は変な国だという櫻井さん。

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よい意味で、日本というのは、その閉鎖性をもって、ガラパゴス化したときに、一番強い力を発揮する。世界が日本に求めているものはさまざまですが、世界が新しいものを生み出していく過程で、行き詰ったときにふと気づくと、そこに日本があったような感じだと思います。それは、古くは印象派の絵画をはじめ、フランス料理では日本料理の存在によって新しいドアが開かれました。

日本が何を求められているかを考えた上でこそ、はじめて日本の文化を発信していけるのではないかと校長はいいます。しかし、それを海外に発信するときに大きな課題がある。それは、イノベーション。ファッション、アニメ、食文化と、あらゆる世界にほこる日本のソフトパワーをクールジャパンとして発信するときに、食文化以外は製品化されていますが、食文化だけが製品化されていない。同じくらいの文化が、サブカルなり、商品化された状態で海外に発信できるのに対して、こと食文化についてはパッケージ化、商品化されていないという、一番の欠点がある。もちろん、本質的に日本で作ってきたものについて、見失ってはいけません。しかし、世界に対して啓蒙してほしいといっているのに、これが日本料理ですよといって教えてあげられるツールや、実践する技術者がいないことが大きい。それは、言葉の問題よりも、海外で自分の力を試してみたいという料理人がまだまだいないということ、海外ではアニメで描かれたものをそっくりそのまま、ラーメンを、寿司を食べたいという視覚的なあこがれが先行していて、ちゃんと啓蒙してあげる人がいないこと。また視覚としてのあこがれが、実際に味覚として受け入れられるのかどうかという問題もそこにはあるようです。

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●IT時代が料理業界にもたらした変化

いい面と悪い面の両方があり、フランス料理でいえば世界中の料理人同士の情報共有によって、新しい支流が生まれるようにもなりました。一方でものまねも世界中に多くなる。世界中のどこにいっても、同じ料理が食べられる感じあるが、彼ら自身は彼らのフィルターを通した新しい料理だと自負しているはず。しかし、一人の料理人の表現力であるとはいっても、世界中の料理がどれもが似すぎている状況がおきています。

料理について、食べた人、作った人の情報があふれていて、おいしいとこどりのように表層的になってしまっている側面も否めません。しかし、一概に悪いわけではないのです。

ITを使って、自分の作った料理を送りあって真似しあい、その技術を取り込んで自分の料理を新たに作り出すこともできる。高い技術レベルに達した人たちが、そういった相互に技術を高めあうITを正しく使った例もあります。

日本国内でも、料理の継承というのは、塗り絵のような世界から入って、技術を継承していきます。IT化によって、それが世界版になってきたようなもので、才能ある料理人たちがこれだけのIT情報を駆使すれば、次の潮流が生まれてくるでしょう。

ただし、日本料理の技術を習得するには何十年もかかる、いくらかは期間を見直せたとしても、やはり時間がかかるもの。また、お客さんがいてはじめて、その文化が育つ。食べ手がいてこそ、進化してきたのです。本来の飲食業界では、技術者を伸ばす評論家と、その2つは不可欠であるべきなのですが、数年間では足りるものでもありません。

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●食べ手がネットにいろんなコメントを書くことはプラスか、マイナスか?

グルメサイトなどは、毎日のように見ます。一番いいのは、写真。ブログは絶対に読みません。味覚はそれぞれなので、人の味覚は信用できないというか、あやふやなものです。しかし、写真は信用できます。肉の火通し、野菜の扱い方、パスタの立ち方、器の使い方など、どんなに汚い写真でもその料理人の性格や人格がでますから。という校長です。

日本の消費者って、追い求めるものが大きい。望みが高い。海外の女の子が、日本の服にあこがれる理由。それは、消費者の希望が入って、これだけいろんなタイプの自分にあったファッション雑誌がそろっているのは世界中にないからです。同じように、お客さんがお店を育てるのが日本料理の強みだったのかもしれないですね。と、櫻井さんはいいます。

●「変換力」とは何か

今は、日本人が海外の食材を使って、海外の風土の中で、日本料理を作る舞台がある。そういう中で、そもそも変換しないと受け入れられないし、商売として成り立たない。その環境にあわせて、変換する必要がある。でも、今後は日本文化、本物の日本料理そのものを啓蒙していくことで、味覚も含めて本物の日本料理として広がって、ちゃんとたしなんでいけるレベルに必ずなると思います。

文学やアニメなどはすでにそうで、だから翻訳は、すごく大事な問題。特にアニメや漫画などは、中学生、高校生がモデルのことが多く、その背景となる学校生活の中には、日本にあってヨーロッパにない『先輩後輩』という概念が横たわります。これはアニメではとても大事。しかし、言葉のないものを翻訳するのはとても大変で、翻訳家の方たちがいっているのは、私たちは言葉を訳しているのではなく、文化を訳しているんだというのが印象的でした。と語る櫻井さん。さらに翻訳はすごく時間がかかるので、副次的な効果として、読む側、見る側が、翻訳がでる半年を待てなくて、結果的に日本語学習者が増えたというのもあります。

翻訳、つまりは日本料理でいう変換です。

辻調が共同経営するニューヨークにあるレストラン、『ブラッシュストローク』は、変換力が大きなテーマですよね?という、櫻井さんの質問に対して、10年間、試行錯誤している中でわかったのは、ブーレイさんが助言をする、僕が少し戻す、そしてそこにさまざまな料理を形にする山田勲というシェフがいるという関係がいい風にお店を守れているバランスな気がします。と答えた校長でした。

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●匠という言葉に象徴される日本のモノづくり。その特性とはなんでしょう?

技術を継承していくだけではなく昇華させる力、洗練させる力は世界でもナンバーワンだと思います。

櫻井さんの場合、2009年外務省が『かわいい大使』をつくって、世界を回った際に、見た瞬間、日本だとわかってくれるのがロリータしか思い浮かばなかった。マリーアントワネットに憧れて日本人が作ったファッションをフランス人が、日本、日本といってるのがおもしろいのだけれど、「日本は、なんでも日本のものにしちゃうんだなぁ」と思ったそうです。その通り、ラーメンも、もう日本食の代名詞、世界中の若者を含めて多くの日本食好きの一位です。

そして、アニメ・漫画の中に出てくる日本料理は、たぶんこれが、世界が日本を知る、一番最初のドア。これをみて、ファッション、音楽、日本食を食べてみたいという憧れのきっかけです。自分の好きなキャラクターが好きなものを食べてみたい。これ以上強いものはないでしょう。

憧れているうちに店が増えてくると、日本と同じになってきます。しかし、日本料理のための技術者がいない。それは、本来、外国人であるべきだと思います。そして、年々、日本料理を学びにくる外国人も増えています。

アニメ・漫画がきっかけで、食関連で今、日本語として世界に広まっている言葉があります。それは「お弁当」。お弁当の習慣は、日本以外はあまりみられない。サンドイッチ文化は近いものがあるが、きれいにならべて毎日違うもの作るというのは日本以外にはおそらくない。それに憧れている子供たちが多い。きれいに描かれているというのが、大事なポイントで、日本のアニメは手描きにこだわっている。一枚の絵としての美しい。ヨーロッパの人は、マネやフェルメールのように、アニメの画集を買うそうです。

日本の場合、漫画を通じて、日本の文化がすごく描かれている。海外の場合は、数ページで終わる場合が多いが、日本のアニメ・漫画の場合は、長編小説のように、人物像、哲学が描かれている。

日本料理のメニューにも、ストーリー性があり、アニメ・漫画でいわれる先の読めないところ、日本料理なら、次は筍がでてくるだろうなと思って、筍がでてくる安堵感や、期待と裏切りの駆け引き、会話をせずに、料理人と会話ができるところにも喜びがある。食べ手も、勉強したり質問したりすることが大事だと校長はいいます。

料理人にとって、引き出しはイノベーションではない、もっている引き出しをどう使い分けて、どう表現しなおすかということです。新しい料理とはそう簡単に生まれない。それを新しいものにしようということが、職人が一番間違える大きな間違いであって、引き出しをどう使い分けるかが重要。引き出しをもつところにたどり着くまでにでさえ、何十年とかかります。

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●どんな日本料理人を育成していこうと思っていますか?

基礎を教えるのはもちろんですが、料理を理解する力を育てること。ただ、もっているからといって、最高のレシピで教えているだけでは、学校に未来はありません。文化的な面、技術の由来など、間違えることも含めて、理解する方法を、我々は先頭にたってこの国で教えていかなければならない。料理のフレームワークを理解させ、そのきっかけをわれわれの学校を通じて、少しでも垣間見て、勉強の仕方を身につけて巣立っていくような学校づくりをしていきたい。

●日本料理の料理人に一番必要なものってなんでしょうか?

自分の言っていることを否定するようですが、最初はやはり、型から入るよりほかないと思います。3年目になったときに、その型から自分をいかにはずすことができるか。ようやく、味覚と手、今まで理解してきたものが三角関係で同時に進行できるようになるのは、5,6年くらいはかかるでしょう。僕は、それを分解して、頭と味覚だけを先に進める、腕は何年たっても学べるわけですから。一番重要なのは、その三角関係を理解して、今自分がどこにいるのか、客観的に自分を日本料理をみることができる能力を育むとが重要なのではないかと思っています。料理の技術を習得することについて、今までは一から順に覚えるものだと思われていましたが、僕はいったりきたりした方がいいんじゃないかなと思います。これだけ、情報が行き交い、ほかの店の料理も食べ歩きもできる時代になって、この味で10年、20年だった昔のように、一つの徒弟制度の中で育つ時代ではなくなりました。今の学生は学習の機会は広がっているはずです。そして、その勉強の仕方を教えるのが僕らの役目です。だからこそ、とても責任を感じています。

最後に、参加者の方から質問があったのは、多くのみなさんがおそらく考えていらっしゃるように、和食、日本料理とは何かということを端的に表す、あるいはカテゴライズするような基準はないか、あるいは海外で海外の人が和食を作る場合に、和食としての呈をなすために、はずしてはいけないもの、あるいは必ずいれなければいけないものは何かあれば、教えてほしいというような内容でした。

校長の回答は、「海外の人が和食だと考える和食は和食である」。と、さらに自身も日本的曖昧な答えだとしながらも、結局のところ「日本人一人ひとりが、日本のものを大切にして、和食を一番勉強していかないと、和食のフレームワークはまもれないのではないか」としました。そして櫻井さんも、「海外に出ると、日本のことが知りたくなるよ。と言われていましたが、身をもって感じるようになりました」と、締めくくりました。

和食とは何かを考える、万能な一つの答えに辿り着くことは、とても難しいことに思われますが、だからこそ、考えることが無限ともいえる可能性をも秘めている。そんなことも感じました。ぜひ、まだお読みでない方は、ご一読いただければ、幸いです。

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書 名:『和食の知られざる世界』 (辻芳樹 著)
定 価:720円(本体価格・税別)
ページ数:224ページ
発行:新潮社
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