第15回辻静雄食文化賞 贈賞式レポート
公益財団法人辻静雄食文化財団は、2024年8月19日(月)13:00より、辻調理師専門学校 東京にて、
第15回辻静雄食文化賞贈賞式を開催いたしました。
第15回辻静雄食文化賞の本賞には、食文化と農村風景を結びつけるという新しい視点から、そこに関わる私たちに環境の保全を追求した風景と食の美しさの可能性を示唆した、『風景をつくるごはん―都市と農村の真に幸せな関係とは』(真田純子・著、農山漁村文化協会・刊)が、そして専門技術者賞には、日本におけるフランス料理の継承者として、フランスで学んだ先行世代が持ち帰った伝統的技術を受け継ぎ、その卓越した技術力で現代に開花させることによって次世代に手渡そうとする強い意思が高く評価された、「Chez Inno(シェ・イノ)」料理長 手島純也氏が選定され、同財団より表彰を受けました。
(左から)辻芳樹、手島純也、真田純子、門上武司 ※敬称略
第15回 辻静雄食文化賞・専門技術者賞 受賞者コメント
<第15回 辻静雄食文化賞>
◆真田 純子氏/風景をつくるごはん―都市と農村の真に幸せな関係とは』著者
本日はこのような栄誉ある賞に選んでいただき誠にありがとうございます。私はもともと工学系の研究者で特に風景を対象にする研究をしてきました。この本は私のこれまでの研究者人生が詰まっているともいえる本で、それが工学系の枠の外である食の分野で評価していただけたことを本当に嬉しく思います。
私が「風景をつくるごはん」という言葉を使い始めた2012年頃から食に対する価値観が少しずつ変わり、食が農村の在り方に影響を及ぼすということも少しずつ知られるようになってきました。そのような時代の変革期にこの本を出せたことに意義を感じています。また食料・農業・農村基本法が改正され、農業政策が環境問題を取り込んだ今、もっと広く農村政策と農業政策を統合するような視点をこの本で広めていければよいと思っています。この本を機に農業の現場、地方行政、農業政策、地域研究、または食の現場でそれぞれの解が模索されることを期待しています。
<第15回 辻静雄食文化賞 専門技術者賞>
◆手島 純也氏/Chez Inno(シェ・イノ)料理長
このような賞をいただいたことを格別に嬉しく思います。辻静雄先生なくして今の日本のフランス料理界はないと思います。その先生の名を冠した賞をいただけるということは、しびれるほどに嬉しいです。僕は静雄先生の本から影響を受けてきました。修業時代、本の中にあるフランス料理やレストランに強い憧れを持ちました。その後、シェフになってからも多くの方が料理人としてのスタンス、考え方、料理との接し方を教えてくれました。そして今、素晴らしい環境で仕事をさせていただき、導いてくださった方々には本当に感謝しかありません。
かつてアラン・シャペルが初めて三ツ星を獲得した時に「まだ三ツ星に値しないが、生涯をかけて "三ツ星の仕事" をしていく」と言っていました。僕も全く同じ気持ちです。僕が日本人であるにも関わらずフランス料理人として生きるのは、先人のシェフたちが死に物狂いで日本にフランス料理の技術や文化を持って帰ってきてくれたおかげだと思っています。改めて日本人のフランス料理人として、生涯をかけて僕も継承していきたいです。
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辻静雄食文化賞とは
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