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調理師免許を取得する意味とは?

調理師養成施設で取得するメリット

「調理師」は、国家資格である調理師免許を取得した人だけが名乗れる職業です。調理師免許を持っていなくても調理の仕事に携わることはできる中で、取得する意味とはどんなところにあるのでしょうか。また、調理師養成施設に通って調理師免許の取得を目指すメリットとはなんでしょうか。

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「調理師」は、国家資格である調理師免許を取得した人だけが名乗れる職業です。調理師免許を持っていなくても調理の仕事に携わることはできる中で、取得する意味とはどんなところにあるのでしょうか。また、調理師養成施設に通って調理師免許の取得を目指すメリットとはなんでしょうか。

調理師免許とは

調理師免許は、食に関する専門知識や調理技術を持つことを証明する調理師法に基づいた国家資格です。
レストランやホテルなどで料理を作って提供する人を、「調理師」「料理人」と呼んだりしますが、両者には明確な違いがあります。
「調理師」は、調理に携わる人の中でも調理師免許を持つ人のことを言います。料理人の中でも、調理師免許を持つ人が、「調理師」を名乗ることができます。
調理師になる方法は2つあります。2年以上の調理実務経験を経てから調理師試験に合格するか、調理師養成施設を卒業するかです。

調理師免許を取得する意味

調理師の資格は調理の仕事に従事する人の資質を高めるために設けられたもので、調理師免許を持っていなくても飲食業界で働くことは可能です。では、調理師免許をあえて取得する意味とはどんなところにあるのでしょうか。

調理師法で「飲食店や給食施設に調理師をおくことが望ましい」とされている

調理師法では“一般の飲食店や給食施設などでは調理師をおくことが望ましい”とされ、病院や福祉施設などの調理部門では、調理師免許の保有を応募条件としていることが多いようです。

企業や個店、レストランやホテルの求人でも、調理免許を持っていることが応募条件になっていることがあります。 このように、調理師免許を持っていることで、自分で就職や転職活動をする際にスタートラインに立ちやすくなります。

何よりも「安全性」を重視する飲食業界

調理師免許は「安全で美味しい料理を提供できる知識と技術を保有」していることを証明する国家資格。調理師免許を持っているということは、安全な料理を提供するための知識や調理技術が身についていることの証になります。

調理師免許を取得するためには、料理を作る技術のみならず、公衆衛生や食品衛生といった衛生に関する多くの専門知識が必要です。レストランやホテル、学校給食など調理の現場は、食中毒や感染症のリスクと隣り合わせです。衛生の知識を持った調理師を置くことは、お客様に安全な料理を提供するために大切なことなのです。

お客様に楽しい時間を過ごしていただくためには、安全・安心な料理を提供することが大前提です。さまざまな食材を扱う現場で常に安全・安心を提供するためには、プロフェッショナルな技術と知識が求められます。そうしたプロの技術と知識を証明するのが、調理師免許なのです。

調理師の免許を取得する手段は2つ

調理師免許を取得するには、2つの手段があります。

  1. 1.調理師養成施設を卒業する
  2. 2.2年以上の実務経験を積み調理師試験に合格する

1.調理師養成施設を卒業し無試験で調理師免許を取得する

調理師としての資格に必要な知識や技術を習得するための教育機関である調理師養成施設に通う場合、職歴条件は不要で、卒業と同時に無試験で調理師免許を取得することができます。


調理師養成施設に通うメリット

調理師養成施設に通うメリットはどんなところにあるのでしょうか。辻󠄀󠄀󠄀調理師専門学校の岡本健二先生は次のように話します。

岡本 「ここ数年、辻󠄀󠄀󠄀調理師専門学校に入学する学生は、調理師免許を取得したいという思いが強いように感じます。もちろん、調理師免許を持つメリットはたくさんありますが、どんな状況で学んでその資格を取るかが大切です。 厚労省の教育目標を土台として作られた調理師養成施設のカリキュラムは、料理の本質となる理論や実践を学ぶことができます。

例えば、衛生管理について。学生は、調理師といえば料理を作るというイメージを強く持っていますが、それ以外にも衛生管理についての知識は調理師にとって重要です。食中毒を含め衛生面については非常にシビアな業界ですので、学校のカリキュラムなど体系立てられたきちんとした環境で身につけたい分野ですね。 調理師養成施設に通わなくても、実務経験を積んで取得することもできますが、あえて学校に通う意味とはこういったところにあります。

さらに、学校は個々の可能性が広がる場だと思っています。進学するみなさんの中には、もうすでに『学校を卒業したらあのお店で働きたい』と気持ちが固まっている人もいれば、『料理に関わる仕事がしたい』『こんなお店で働いてみたい』とぼんやり考えている段階の人もいるでしょう。 気持ちが固まっている人にもそうでない人にも、ちょっと立ち止まって可能性の範囲を広げてもらうことが、学校で学ぶ1つの理由なのではないかと思います。 幅広い技術を教えて学生の可能性を広げたり、今考えている分野とは違う分野を提示したりして、さまざまな選択肢のうちどれにマッチするかを考えてもらうこと。それが学校の果たす大きな役割の1つだと思います。

学校に進学してくる学生は、食べることが好きだったり、料理をすることが好きだったりといったところは、みなさん共通して持っています。もう一歩踏み込んで『どんな料理が好きなのか』『その料理のどんなところが好きなのか』と聞くと、はっきりと答えられない人がほとんどです。 たとえば、『日本料理が好きだ』と答えられても、日本料理のどんなところが好きなのか聞かれると、なかなか答えられない。 そんなふうに、ぼんやりと『料理が好きだ』『料理の道に進みたい』と考えている学生が大半なので、そこから自分が本当にやりたいことは何なのか、知識と技術の学びを通じて可能性を広げてあげるのが私たちの仕事です」

調理師養成施設での学びについては、こちらで解説しています。

辻󠄀󠄀󠄀調グループで調理師免許を取得する

辻󠄀󠄀󠄀調グループでは、辻󠄀󠄀󠄀調理師専門学校の以下の学科を卒業することで、調理師免許の取得が可能です。

辻󠄀󠄀󠄀調理師専門学校 調理師本科(1年制)
調理技術マネジメント学科(2年制)
高度調理技術マネジメント学科(3年制)

2.独学で調理師試験を受験して調理師免許を取得する

調理師養成施設へ通うには、時間や費用がかかります。「1日も早く料理の現場に出たい」という場合、実務経験を積みながら独学で勉強し、調理師試験を受験し合格することで調理師免許を取得できます。調理師試験は筆記のみで、各都道府県により年1〜2回行われます。

調理師試験の受験資格

調理師試験を受験するには、「学歴」「職歴」などの条件を満たす必要があります。

受験資格
学歴
※いずれかに該当する者
● 中学校卒業以上の者
● 旧制国民学校高等科の修了者、旧制中学校2年の課程の修了者又は調理師法施行規則(昭和33年厚生省令第46号)附則第3項の規定によりこれらの者と同等の学力があると認められる者
職歴
※調理師法施行規則第4条に定める施設で2年以上調理業務に従事した者
● 飲食店営業
※旅館・簡易宿泊所を含む
※喫茶店営業を除く。
● 魚介類販売業
※販売のみは除く
● そうざい製造業
● 複合型そうざい製造業
● 寄宿舎、学校、病院等の給食施設
※継続して1回20食以上又は1日50食以上調理している施設

情報引用元:公益社団法人調理技術技能センター

「調理師法施行規則に定められた施設」では通算して2年以上働くことが条件となっています。受験を希望する場合は、働きながら、参考書や通信教育で学びます。

試験の内容

調理師試験の試験科目は6つ。公衆衛生学、食品学、栄養学、食品衛生学、調理理論、食文化概論から出題されます。

調理師試験を受ける場合、受験料は都道府県によっても異なります。例えば東京都の場合、2021年度の受験料は6,400円となっています。

試験概要
試験科目 公衆衛生学、食品学、栄養学、食品衛生学、調理理論、食文化概論
出題数・出題形式 全60問、マークシートによる四肢択一方式
合否判定基準 ・原則として全科目の合計得点が満点の6割以上であるものを合格とする。
・ただし、1科目でも得点が当該科目の平均点を著しく下回る場合は不合格。

情報引用元:公益社団法人調理技術技能センター

難易度と合格率

厚生労働省の統計にもとづいて、合格率を年別で見てみましょう。

・全国平均(2018年度〜2020年度)

過去の合格率を見ると、61〜70%のあいだで推移していることが分かります。

年度 合格率(%)
2018年度 61.0
2019年度 66.4
2020年度 70.2

情報引用元:厚生労働省

合計点が満点の6割以上あれば合格とされていますが、そのうち1科目でも平均点を著しく下回る科目があると不合格になってしまいます。苦手科目を作らないようにすることが合格のポイントといえそうです。

たくさんの方が安心して料理を口に運べるよう安全面に配慮することは、プロの料理人として当然の姿勢といえます。そのための技術や知識を身につけて、現場で常に実践できるようにしなければなりません。調理師免許を持っているということは、食の安心・安全についての知識や技術が身についている証になります。

調理師養成施設に通って、理論と実践の両面から調理師としての知識や技術を学ぶ。料理の現場に就職し、経験を積んだうえで試験を受ける。調理師免許を取得するこれらの手段には、それぞれメリット・デメリットがあります。両者を比較して、自分にはどちらの方法が向いているか考えてみましょう。

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